介護経営ロゴ

機能分化と地域連携で超高齢社会を支える
介護サービス事業者向け情報サイト

公開日:2017年5月26日

定年延長のメリット・デメリットは?

2,933 views

福田 秀樹氏 (特定社会保険労務士/株式会社福田式経営研究所 代表取締役)

これではダメだ!という例

当社は社員100名の製造業です。60歳以上の社員も活躍しています。

60歳定年時に給与を下げる人もいれば、そのまま継続する人もいてマチマチです。数年前、コンサルティング会社から助成金のDMをもらい定年延長の助成金を紹介されました。

そのコンサルティング会社が連れてきた社労士さんからは「貴社ではほとんど65歳までは雇用しているのだから、定年を65歳にして助成金をもらわないと損だ!」というアドバイスをもらいました。そこで、早速、就業規則を変えて助成金を100万円受給することにしました。

3年後、事件が起こりました。会社の方針に反抗的なので、可能なら60歳で辞めて戴きたい社員Aが現れたのです。就業規則に「(定年は65歳だが)60歳で賃金を見直すことがある」と規定していたので、それを根拠に以下のような条件提示を行いました。

<59歳まで>      <60歳以降の条件提示>

基本給30万円       基本給16万円

皆勤手当1万円

家族手当1万円

交通費 1万円       交通費 1万円

合計 33万円       合計 17万円

この条件提示に、社員Aはカンカンになって怒りました。

「仕事の内容も変わらないのに給与が半額になるなんて思わなかった。退職金も定年が延長されたので60歳でもらえなくなったではないか。”いま、相談しているところ”によると、定年が65歳になったのだから、賃金を下げるのは違法だといっている!」

そうこうしているうちに、●●ユニオンから団体交渉の申入書がとどきました。

目先に助成金にとらわれるべきではなかった!

「人手不足」や「定年延長の助成金」などの理由で、「定年を延長するのはどうか?」というご相談を戴くことが近頃しばしばあります。

定年延長のメリットは、50代以上の社員のモチベーション向上は見込める可能性があります。また、社員にとっては定年時に賃金を引き下げられることなく勤務をすることができますので、60歳以降のモチベーション維持に有効でしょう。

一方、定年延長のデメリットは、延長した定年(たとえば65歳)まで賃金等の労働条件を引き下げることができなくなることです。

定年を60歳と定めていれば、60歳定年で再雇用の場合に限り、賃金等の労働条件を大幅引き下げすることができるのです。これは大阪高裁判決でも判示されています。

しかし、上記の失敗事例のように、定年延長(たとえば65歳定年)を行い、60歳で従前の定年再雇用のように賃金引下げを行っている会社があります。これはマズイ対応です。賃金は高度の合理性と必要性なくして下げることはできません。定年を65歳にしておきながら、60歳定年時の賃金ダウンは、個別労使紛争におけるリスクが大きいです。

年齢や勤続を重ねても安心して働ける職場環境をつくることは、生産性向上にも資するものと考えます。しかし、すべての社員が65歳まで給与が高いまま雇用を継続するとなれば、「安心」が「慢心」になってしまいます。

定年は60歳までとし、定年再雇用後の賃金水準について貢献度が高い社員に対してのみ、労働条件を据え置きにする勤務延長をするなど措置はありえます。勤務延長とは定年で退職させることなく、そのまま在籍させる政策のことです。

定年・再雇用時はその社員の能力に応じた労働条件に変更する、千載一遇の機会なのです。労働法の世界ではここしかないといえます。中小企業にとって定年延長は例外であり、目先の助成金などに惑わされるべきではありません。

*福田氏が顧問を務める「労務顧問サービス」の資料ダウンロードはこちら*

労務顧問サービス資料ダウンロード

[PR]中小企業のメンタル問題を見抜く不適性検査スカウター
1名500円~ 今なら3,000円分のお試しクーポンプレゼント
不適性検査スカウターを使ってみる(無料)

介護経営 メールニュースでは、介護施設経営者が知りたい集客ノウハウや注目のサービスなど、最新のニュースを配信しています。ぜひご購読ください。

メールニュース登録

新着記事

  • M&A 売り手・買い手の集め方

    M&Aを成功に導くポイントは、良い仲介会社と付き合うことです。 では良い仲介会社とは、どのような会社でしょう?  もちろん色々な要素はありますが、あえて1番のポイントを…

  • M&A、会社売却のタイミングとは

    自社を売却するタイミングについて、一般的には業績下降時は、企業価値が過小評価されやすく、買い手を見つけるのが難しいです。 逆に業績が上向いている時は、企業価値が高く評…

  • M&A、会社を売却する4つの理由

    中小企業のオーナー経営者が事業を売却しようと考える理由は、主に4つに分かれます。 それぞれについてみてまいります。 後継者不在 社内に社長の子供など親族の…

  • M&A、売り手の意思決定に影響すること

    売り手が売却に進んだ時、買い手企業との条件交渉において、売り手の意思決定に影響を与える事柄について整理してみます。 M&Aは、売り手企業と買い手企業との条件交渉。何を重視…

  • M&A、売り手と買い手のマインドは

    売り手と買い手が仲介会社のサポートで出会い、トップ面談により意気投合し、基本合意契約を締結したとしても、最後までどうなるか分からないのがM&Aの世界です。 売り手企業…