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公開日:2018年9月18日

北海道胆振東部地震でブラックアウト そのとき介護施設は!!

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吉田 匡和(介護ライター)

2018年9月6日午前3時8分、北海道胆振地方中東部を震源とするM6.7の地震が発生し、厚真町で震度7、安平町で震度6強を観測しました。震源近くにある北海道電力苫東厚真火力発電所が運転を停止し、稼働中だった他の発電所も連鎖的に停止。地震から約10分後には北海道全域が停電する「ブラックアウト」を引き起こしました。

震源地に近い厚真町の障害者支援施設や特別養護老人ホームでは、未明から職員が総動員で利用者の安全確保が行われ、避難所から白老町や伊達市、新得町など、近隣だけでなく遠方の受け入れ可能な施設への搬送が行われました。

厚真町から約60㎞離れた街でも停電や断水に見舞われました。日常生活を送ることが困難な中で、介護施設はどのように対応したのか。江別市の特別養護老人ホームの相談員に話を伺いました。



停電と断水の中で物資を確保


取材を行った特別養護老人ホームは、4階建ての建物に入所者150人が暮らす大規模施設です。昭和56年8月の集中豪雨で近くを流れる川が氾濫して水害を経験しています。平成11年9月より川から離れた現在の場所に移転。これまで災害は経験していません。

地震の直後、近くに住む施設長などがすぐに駆け付け、被害状況を確認。震源地から離れていることもあり、大きな被害はなかったものの、水道と電気が止まった状態でした。この状況が長らく続くと判断し、給水が始まると職員総出で水を運び、施設内の売店を委託している商店に出向いてパンや野菜、魚などの食糧が調達されました。



電気の復旧まで人海戦術


食料が不足することから、当面は10時と16時の一日2回の食事に制限。通常は地下の厨房で作られた食事をエレベーターで各階に配膳していましたが、送電がストップしているため、営業を中止しているデイサービスや居宅介護支援事業所の職員も手伝い、階段を使って人海戦術の配膳となりました。

相談員は、「事業所の規模が大きく、休みの職員も心配してきてくれたので、いつも以上に人が多く、配膳が大変だったと言う印象はなかった」と言います。午前の食事は豚汁を、午後は、ソーセージやベーコン、魚など常温で長期保存ができない食品でバーベキューを行い、担当を決めて各フロアに配膳しました。



暗く不安な夜


同ホームは従来型の施設で、通常は各フロア8人の夜勤体制でしたが、停電中は12人を配置。自家発電により非常灯が付くはずだったものの、断線していたため懐中電灯のほか、近くの葬祭場からキャンドルタイプのロウソクを購入しました。また、ナースコールやマットコールなども使えないため、転倒の危険のある方のベッドを食堂に集めて見守るなど、緊急的な措置により夜を過ごしました。

利用者の健康状態にも注意していましたが、前日の環境の変化の影響からか、7日の午前中に酸素濃度が低くなって2人が救急搬送されてしまいます。その後も体調を崩す方が現れるのではないかと懸念しましたが、変わりなく過ごしてもらうことができました。

その日の21時ごろに電気と水道が復旧。翌日8日の朝に確認したところ、2基あるボイラーの一つが影響を受け、お湯がぬるいため入浴が難しいことが判明。停電と断水が思ったより短く、備蓄の食糧で賄われ品薄な状況には陥りませんでした。電気や水道が回復してからは、食事なども通常通りに戻りました。



もし真夏や真冬に地震が起きたら…


今回の地震では、中継地の停電により、携帯電話のみならず緊急用の電話がつながらず、職員間や家族への連絡が困難であったと言います。また、被災地をクローズアップして報道されることにより、電話が復旧した後に本州に住む家族から安否を心配する電話が多く寄せられたと言います。

江別市の震度は5弱であり、地震による影響をあまり受けなかったことや、比較的早く停電や断水が復旧したこと、何よりもマンパワーがあり、職員一丸となって迅速な対応が行われたことが、被害を最小限にとどめたと言えるでしょう。しかし停電が真夏や真冬であったのなら、状況が変わっていたと思われます。暑くもなく、寒くもない秋の初頭であったことは幸運でした。

台風、地震など、いま日本のどこで災害が起こるかわかりません。北海道の介護施設の多くに被害が少なかったのは、ラッキーに過ぎません。避難経路、人や物資の確保、そして携帯電話などの通信機器の使用が困難になったときの連絡方法や、施設にダメージを受けたときに利用者を他の施設に搬送するための協定を結ぶなど、平常時より有事に備えた対策をおこなってください。



過去の災害を教訓に!


一般家庭を見ると、車で避難するためにガソリンスタンドに行列を作っている姿を見受けました。また信号機が消えているため追突事故も多く、緊急車両がひっきりなしに走っている状況がありました。「災害時の車での避難は渋滞を誘発し、緊急車両の走行の妨げになったり、地割れの危険があるため控えなくてはならない」と言う、これまでの震災の教訓が生かされていないと実感します。

阪神淡路大震災、新潟県中越地震、東日本大震災、熊本地震など、近年でも多数の地震が発生しています。防災はもちろんのこと、過去の教訓を生かしたモラルのある行動を心がけたいものです。



本記事は9月11日に取材しています。



■著者■ 
吉田 匡和
介護ライター
福祉業界では20年のキャリアを誇り、福祉系専門学校教職員、老人保健施設相談支援員、特別養護老人ホーム・デイサービスセンター生活相談員、特別養護老人ホーム事務長として勤務。退職後はフリーライターとなり、WEBを中心に活動している。社会福祉士、介護支援専門員、福祉住環境コーディネーターの資格を保有。
HP:https://buleorca.webnode.jp/

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