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公開日:2018年7月17日

倒産が続く「小規模デイサービス」の現状と課題

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吉田 匡和(介護ライター)

東京商工リサーチは、2018年上半期(1~6月)「老人福祉・介護事業」の倒産件数を発表しました。調査によると、最悪の倒産件数と言われた2017年度の40件を上回る、45件が倒産。職種別で倒産が多かったのは「訪問介護事業」と、デイサービスなどの「通所・短期入所介護事業」が共18件で、特に小規模で設立間もない事業所の倒産が目立ちます。なぜ小規模事業所の倒産は続くのか。小規模デイサービスに焦点を当てて現状と今後を検証しました。

小規模デイサービスとは

ひと月の利用者が300人以下の事業が「小規模デイサービス」の対象となります。利用者数は通常規模のデイサービスが301~750人、大規模デイサービス1が751~900人、大規模デイサービス2が901人以上であることを考えると、そのコンパクトさが際立ちます。 生活圏域に密着したサービスであることを踏まえ、平成28年4月1日から人員基準が18人以下の事業所は、都道府県の指定から市区町村が管轄する「地域密着型通所介護」に移行されました。

新規開業が続き飽和状態に

事業を展開するためには「カネ」、「ヒト」、「モノ」の三つが揃っていなければなりません。小規模デイサービスは、一日に利用できる人数が少ないことから、職員の配置も少数に抑えられています。また、広いスペースは必要なく、浴室やトイレなどの設備基準等を満たしていれば開業できることから、民家や空き店舗を利用することも可能です。

開業資金が低く抑えられることから、介護事業所から独立開業する人や、新規参入する業者が増加。2014年にはデイサービス全体の半数以上を占め、2015年度の利用者数は192万人、全国の施設数は約4万3,000人にも上りました。6.3%と利益率が高いことから、「未経験でも儲かる」などフランチャイズを後押しする企業も出現。参入がヒートアップしました。

増え続ける小規模デイサービスに厚労省がブレーキ

厚生労働省は、2016年に増加し続ける小規模デイサービスの抑制を行います。それまで過去5年間に犯罪歴があるなどの欠格事由にあたらない限り、市町村は新設に欠かせない介護保険事業者の指定を拒否できない規則を、介護事業者が新設を検討する市町村に競合する他のサービスがあり、デイサービス施設も計画を超えている場合は市町村が設置を拒否できるように改めました。

東京商工リサーチの調査によると、2016年度の「通所・短期入所介護事業」の倒産件数は、38件(前年比31.0%増、前年29件)、倒産理由として、「本業不振のため異業種からの参入失敗(6件)、過小資本でのFC加盟(4件)など、事前準備や事業計画が甘い小規模業者が思惑通りに業績を上げられず経営に行き詰ったケースが多く見られた」と報告しています。

2017年度は、44件(前年39件)と、さらに増加。倒産理由を、「安易な起業や本業不振のため異業種からの参入など、事前準備や事業計画が甘い小・零細規模の業者が思惑通りに業績を上げられず経営に行き詰まったケースが多いとみられる」と分析するなど、ビジョンのない経営に警鐘を鳴らしていました。

2018年度上半期の倒産理由のトップは、販売不振(業績不振)26件(前年同期比52.9%増、前年同期17件)が突出。次いで、「事業上の失敗」が8件(同27.2%減、同11件)、「他社倒産の余波」と「既往のシワ寄せ」(赤字累積)が各3件と続きます。これらの結果は、それぞれ独立しているのではなく、「事業上の失敗」による「業績不振」が、「他社倒産の余波」や「既往のシワ寄せ」などの結果を招いたと考えられます。

大規模型との収益比較

2017年11月8日に厚生労働省が開催した、「第150回社保審-介護給付費分科会」の資料の、「基本報酬の見直しについて」から、小規模デイサービスの今後を読み取ることができます。本会議では、デイサービスの規模が大きくなるほど収支差率が大きくなることや、管理的経費などのコストも低く抑えられていることに着目。規模ごとにメリハリをつけた報酬の見直しが検討されていました。収支差率の状況等を踏まえ、スケールメリットを考慮しつつ、全体として事業所の規模の拡大による経営の効率化に向けた努力を損なうことがないように設定された報酬が下記の表になります。

区分
報酬
地域密着型
通所介護費
通常規模型
通所介護費
大規模型(Ⅰ)
通所介護費
大規模型(Ⅱ)
通所介護費
利用定員 18人以下 18人以上
前年度平均延べ利用者数 月301人以上
750人以内
月751人以上
900人以内
月901人以上
介護度1
介護度2
介護度3
介護度4
介護度5
641 単位
757 単位
874 単位
990 単位
1,107 単位
572 単位
676 単位
780 単位
884 単位
988 単位
562 単位
665 単位
767 単位
869 単位
971 単位
547 単位
647 単位
746 単位
846 単位
946 単位
対通常規 模型比 約+12% 約▲2% 約▲4%

※単位は所要時間5時間以上7時間未満



表からもわかる通り、大規模型通所介護費を減らし、地域密着型通所介護費に充てています。介護度1を例にすると、地域密着型通所介護費と大規模型(Ⅱ)通所介護費の差94単位、介護度5に至っては161単位の差があることから、地域密着型通所介護に配慮したように見えますが、地域密着型通所介護利用者の介護度は、それほど高くないため、思ったほどの収益にはつながりません。利用者が増えることで管理的経費も減少できることから、地域密着型通所介護よりも大規模型(Ⅱ)通所介護費収支差率が低いなど、大規模型通所介護の優位性を強調するものとなりました。

小規模デイサービス経営のビジョン

小規模の経営的メリットは少なく、今後も厳しい経営を強いられることが予想されます。しかし「利用者個々の特性やニーズを把握し、地域性を生かしたきめ細やかなケアを行う」という本来の目的としては、小規模デイサービスは理想といえるでしょう。 小売業界や飲食では、昔ながらの商店が姿を消し、大型スーパーやコンビニエンスストア、チェーン店が街を埋め尽くしています。そのような状況でも、常連さんが絶えない店があるように、きらりと光る個性があれば、集客につながるかも知れません。同業者だけでなく、他業種にも目を向けることで、ヒントが隠されているかも知れませんよ。

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■著者■ 
吉田 匡和
介護ライター
福祉業界では20年のキャリアを誇り、福祉系専門学校教職員、老人保健施設相談支援員、特別養護老人ホーム・デイサービスセンター生活相談員、特別養護老人ホーム事務長として勤務。退職後はフリーライターとなり、WEBを中心に活動している。社会福祉士、介護支援専門員、福祉住環境コーディネーターの資格を保有。
HP:https://buleorca.webnode.jp/

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