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公開日:2018年6月6日

家族が認知症になったら

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太田文弘(医療ソーシャルワーカー)

現在日本には約250万人認知症の方々がいます。 団塊の世代が高齢化に進めば約700万になると想定されています。 これは1つの社会問題であり、他人事ではないのです。 自分の身内に認知症状がいつ起きても全く不思議ではないのです。 ではそのような時に、どう対応すればよいか?その点を中心に認知症の理解や対応を含め理解していただくためにこれから説明していきたいと思います。 特に初期段階の診断を受けるための受診を拒否する場合どうすればよいか、なども述べていきます。

認知症の初期症状とは?

1)そもそも認知症とは?

認知症には様々な形態があります。 認知症とは脳の器質異常によって現れます。そして認知症になれば必ず出現するのが、中核症状と言われるものです。 中核症状としては、必ずしも同じ経過をたどるわけではないのですが、以下のような認知症の症状が現れます。

2)認知症の症状

認知症には様々な症状が出現しますが、どの種類の認知症にも必ず出現する症状があります。 これを周辺・中核症状と呼びます。 その症状には行動・心理症状(BPSD)が併せて出現し、これは脳の障害部位で個人差があります。これが介護の困難さを左右します。

必ず起こる中核症状

中核症状とは脳細胞がダメージを受け、脳本来の働きが低下するために出現します。主に次のようなものがあります。

●記憶障害 … 今、言ったことをすぐに忘れてしまうなどの物忘れ。
●失語 … 話す・読む書くことができなくなる。
●失行 … 体は動くのに着替えや、歯磨きなどの行い方がわからなくなる
●失認 … 目や耳からインプットされた情報が正しく理解できない。考えるスピードが遅くなったり、難しい話が理解しづらくなったりする。
●遂行機能障害 … 料理など、目的のある作業を成し遂げることができない。
●見当識障害 … 季節や今の日時、今いる場所がわからない、目の前にいる人がわからない。(時→場所→人の順番で忘れることが圧倒的に多い)

周辺症状とは

行動・心理症状(BPSD)とも呼ばれます。 これは中核症状による不自由さ性格、環境などが複雑に絡み合って起こる症状です。

精神的・身体的に様々な症状があり、多弁・多動・暴言・暴行・不安・焦燥・幻覚・妄想・せん妄・徘徊・介護拒否・尿や便の失禁(便をいじって壁などに擦り付けたりする不潔行為)・抑うつ・睡眠・覚醒障害・昼夜逆転などがあります。

認知症状の種類

1)アルツハイマー型認知症 

(原因)


アミロイドβというたんぱく質が、脳に溜まり神経細胞が破壊され脳が委縮します。脳全体が委縮するのです。

(進行の特徴)


脳全体の委縮がみられます。 特徴としてはゆるやかに坂を下るように症状は進みます。 発病してから末期に至るまでの目安としては10年程度ですが、最近は抗認知症薬などの効果で、延びる傾向にあるのですが、認知症の症状は不可逆的であり(元に戻ることは今の医学ではできないこと)、後ほど述べる治る認知症もあり(可逆性…根治できる)、これは単に寿命が延びるということだけではなく、家族の介護も延びることを意味するので、すべてを歓迎できないと介護者の立場からいうと思えるのではないでしょうか。 認知症のおおよそ60%がアルツハイマー型認知症です。

(症状の特徴)

まず、記憶を司る海馬(かいば)が障害を受けるケースが多く、記憶障害から始まり、その後大脳全体に広がっていきます。

2)脳血管性認知症

(原因)

脳梗塞や脳出血などにより脳の血管が異常をきたし、脳の神経細胞が破壊されることで起こります。脳の損傷です。

(進行の特徴)

脳梗塞、脳出血、くも膜下出血、いわゆる脳卒中が原因で血管が詰まったり、出血したりすることにより、脳に血流が流れなくなります。 その脳の部分が後遺症として残り認知症に至ります。これも、根治はできない不可逆的です。 後遺症とは、脳のどの部分が詰まったり、出血したりするかで様々です。左麻痺の方が認知症の後遺症が残ることが多いです。20%が脳血管認知症です。

(症状の特徴)

障害を受けた部位がどこかによって、表れる症状が異なるのが特徴です。

3)レビー小体型認知症

(原因)

レビー小体という異常なたんぱく質が脳に溜まり、神経細胞が破壊され、脳が委縮します。

(進行の特徴)

比較的にゆっくりと進行しますが、アルツハイマー型認知症よりは進行のスピードは速いこともあります。 レビー小体型認知症は通常の中核症状とさらに、パーキンソン症状(動作緩慢、すり足歩行など)と幻視が出現します。 そのためパーキンソン病の中にはレビー小体型認知症の人がいるのではないかと言われています。 15%がレビー小体型認知症です。 ただパーキンソン病の中にレビー小体型認知症の方がいると仮定すればもっと対象者は増えると思います。

(症状の特徴)

運動機能の異常や、見えないものが見える幻視などから症状がでるケースが多く、記憶障害は目立たないこともあります。

4)前頭葉側頭葉型認知症

(原因)

前頭葉と側頭葉が委縮し、ピック球と呼ばれる異常な構造物が蓄積し、発症します。

(進行の特徴)

文字通り脳の前方と両側の部分が脳委縮します。比較的速く進行します。 前頭葉は知的部分を司っているので、その部分が委縮するため性格変容が顕著です。

(症状の特徴)

人格や性格が変化し、反社会的な行動を取ることが多くあります。

以上が認知症の不可逆的な種類です。

しかし、治る(根治できる)認知症もあります。 甲状腺異常、ビタミンB欠乏、慢性硬膜下出血、正常圧水頭症などは適切な治療・手術を受ければ根治します。

以上述べたように認知症の種類や症状を記載しましたが、実は認知症には前段階があります。

MCI(軽度認知障害)

アルツハイマー型認知症もレビー小体型認知症もある日突然、病気になるわけではないのです。 先ほど述べたようにアミロイドβなどが脳に蓄積され神経が破壊され発病するので、その手前の段階なのです。 このアミロイドβは長年かけて蓄積され、おおよそ20年かけて脳を委縮させます。 例えば現在70歳の方だと50歳ころから蓄積され、少しずつ脳の萎縮が始まっているわけです。 そしてある時に記憶がスポンと抜け落ちた段階があり、その症状が起こり始めます。これがMCIなのです。

認知症は「日常生活や社会生活に支障をきたす状態」と定義されています。 そこまで至らないのがMCIです。 記憶障害だけに限らず、そのほかの認知症状の障害もあるものの、生活は自立した状態です。必ずしもではないが、MCIから認知症に移行するケースはMCIと診断された人の14~44%は認知機能が正常に戻ったとの報告もあります。

しかし、認知症に移行したケースもあり、1年で12%、4年で50%と時間がたつほど移行する確率が上がります。 そのため早期発見・早期治療が必要になってくるのです。 いわばMCIは正常な老化現象と呼べるでしょう。

家族が認知症状を疑い、受診する時のための知識

1)受診拒否

これが一番大変ではないかと思います。認知症の自覚がなく「わしは呆けとらん」「病院に行く必要はない」「年寄扱いするな」など、一苦労です。 しかし、無理やり連れて行っても逆効果なので、まずは地元の保健師さんなどに相談することも1つの方法です。

他には「健康診断に行かない?」とか「健診が無料で受けることのできるチケットが当たった。一緒に行こう。」など。それでも強く拒否する場合は本人を無理強いしても更に自分の殻に入ってしまうので、家族だけで受診することも可能です。

もしくは内科などかかりつけの医師がいればそこにまずは受診することも一つの方法でしょう。 いきなり精神科や脳外科と言えば「呆け扱いするな」と言われるのも立場が逆であれば同じ対応をとるのではないかと思います。 「呆け扱いするな」と言えることはまだすべての認知機能を失っていない証拠でもあるのでそこは強みしてもいいのではないかと思います。 介護する方にとっては大変だと思われますが…

どうしても介護者として受診させたい場合の対処法を以下に記載しますが、必ずしも当てはまるのもではないので参考程度と思っていただければ幸いです

「私はまだ呆けていない」 → 「そうですよね」と一度は受け止めて、「ただ、お父さんのことが心配なの」と下手にでると「しょうがないな」となるケースが多いので参考にしてもらいたい。

「呆け老人扱いするな」 → 「それはごめんなさい」と1度は引いてみて、「最近血圧の薬もらってないからいつもの先生にかかりに行きましょう」と普段の馴染みの医師に受診するのも1つの方法かと思います。その際は家族だけまずは診察室に入り状況説明する方法もありますが「わしがいないところで何をコソコソ話してきたんだ」と疑わられる場合もあるのであらかじめ症状を書いた手紙を医師に渡す方法もあります。そして、その医師から「私の専門外だから、詳しく診てくれる先生を紹介しますね」と本人に話してもらい「そうか。行ってみるか」となれば理想的ですね。それでも「行かない」となれば、内科でも抗認知症薬は処方できるので処方してもらいましょう。

鬱症状かと思われたとき     → きちんと専門の医師に診てもらう必要があるので多少強引でも連れていきましょう。本人の言うことを絶対に否定してはいけません。否定することにより、自分自身が否定されたかのように感じ、「火に油を注ぐ」だけになってしまいます。ただ身内だけに怒りのはけ口が見つからない場合が介護者にも負担がかかってくるでしょう。そのために以下のまとめを参考にして日常生活を送ってもらえたら幸いです。

まとめ

認知症状は様々です。 病院に連れていくのも一苦労でしょう。 更に認知症と診断されても薬では治らないので路頭に迷うこともあるでしょう。(内服では落ち着かないことが実は圧倒的に多く、逆に認知症状がひどくなることも多いのでお薬のことは今回説明しませんでした。今はかろうじて進行を遅らせるのが限界で数値化も難しいためです。)

そのため家族だけで抱えず、家族会など同じ共有の人たちと交流を持ち、愚痴や成功例などを聞きながら対応しましょう。

後は介護サービスなどの利用です。 現在は認知症を対象にした特化型デイサービスも増えてきています。 さらに泊りのサービス(宅老所)もあり、環境の変化を最小限に抑えることができます。

そこは認知症介護の「プロ」がいる場所です。 本人だけを預けるだけでは非常にもったいなく、職員と話が出来る環境作りをしましょう。 自宅での生活とデイサービスでの生活がどのようになっているのか、把握するだけで対処方法も身に着くことでしょう。 認知症にとって環境変化は避けたいですが、家族の環境の変化は大切だと思います。

認知症の初期症状は見過ごされ、気づいた時には進行が進んでいるケースが多いです。 例えばアルツハイマー型認知症の場合、初期症状として物忘れが一番目立ちます。 行ったこと、したことを忘れることが多くなります。 記憶障害にとどまらず、総合的に判断をしたり、旅行の計画をたてたり、会議の準備などの通常なんでもないことが行えなくなるのです。 この段階で治療につながっていれば進行は遅らせることもできるのです。

MCIを疑えばすぐに医療機関に受診することが重要です。 ただの老化現象として止まるのか、認知症に移行してしまうのかの大切な時期です。 以前、認知症は医学の中での問題として扱われたのですが、治療だけでは対応ができなくなりました。 脳の器質異常には間違いないですが、今は認知症の方に寄り添う介護「生活モデル」が主流になってきています。 しかし症状は改善することなく悪化することのほうが多いので、介護者にも寄り添うことが大切になってきています。 これからは認知症社会になることが予測され、1人でも多く認知症の理解をしてもらうことが大切になってくるのです。


認知症の本もたくさん出版され、認知症の専門家の講演も増えてきています。 すべてを鵜のみにする必要はありませんが、生活に役立つヒントがそこには隠れているかもしれませんよ。 特に認知症の方を看取った体験談の本がお勧めです。 介護者は医師ではないので、本人の症状に関連する本を参考にするだけで充分なのです。

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