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公開日:2018年5月7日

介護の担い手のすそ野を広げる「介護職員入門研修」

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吉田 匡和(介護ライター)

さまざまな情報が混在する厚生労働省発表の中から、社会福祉士である筆者がトピックスを紹介します。今回の話題は「生活援助従事者研修」です。厚生労働省の試算によると、2025年時点の介護人材の需要見込みは253.0万人、それに対し供給見込は215.2万人と、37.7万人もの人材不足が指摘されています。

対策のひとつとして、2018年度から介護未経験者でも受験しやすい入門的な研修制度「介護職員入門研修」の導入を発表しました。中高年や主婦を対象に、全21時間の講座で介護業務に携わるための基礎知識と技術を学びます。介護人材不足が深刻な中、促進・定着に繋げたい考えです。

研修開始は18年度以降とされており、研修実施費用は地域医療・介護総合確保基金のメニューとして概算要求に予算計上されています。厚生労働省は介護分野参入のための必須研修とはせず、任意研修として位置付ける考えです。

研修制度のプロセス

本研修は、社会保障審議会福祉部会福祉人材確保委員会が17年10月に取りまとめた報告書「介護人材に求められる機能の明確化とキャリアパスに向けて」における提言を踏まえ、厚生労働省が研修内容、時間、基本的事項を定めて通知しました。

実施主体

実施主体は都道府県と市区町村で、地域医療介護総合確保基金を活用し、積極的に実施するよう呼び掛けています。また、研修を適切に実施できる講師を確保できる民間団体への委託も可能です。

対象者

企業の定年退職予定者、中高年者、子育てがひと段落した主婦などを対象者に想定。地域住民や学生にも幅を広げ、介護人材のすそ野を広げていく考えです。

カリキュラム

介護保険制度の概要や安全・安楽な体の動かし方、手軽に取り込める体操などを学ぶ基礎講座(3時間)と、移動、移乗、食事、入浴、清潔保持、排せつなど介護の基本的な技術をはじめ、認知症や障害、安全対策、事故等の対応の理解を深める入門講座(18時間)の2段階を学びます。企業等に勤務する受講者が対象の場合、基礎講座のみとするなど、柔軟な開催も認めています。

メリット

研修修了者に修了証明書が発行されるほか、就労希望者には事業者団体や都道府県福祉人材センター等と連携し、介護施設や事業所とのマッチング支援実施なども求めています。
また、介護職員初任者研修課程、生活援助従事者研修課程と科目読み替えが可能。介護職員初任者研修課程は130時間から109時間、18年度から導入される生活援助従事者課程は59時間から43時間に短縮するなど、キャリアアップの後押しや参入促進及び定着を図りたい考えです。

研修内容及び研修時間数

研修項目 研修時間数 研修内容
基礎講座 介護に関する基礎知識 1.5時間 ○ 介護に関する相談先(市区町村の窓口、地域包括支援センター、居宅介護支援事業所)
○ 介護保険制度の概要(サービスの種類、利用手続き、利用者負担など)
○ 介護休業制度などの仕事と介護の両立支援制度の概要(介護休業や介護休暇などの内容や利用手続きなど)
介護の基本 1.5時間 ○ 介護における安全・安楽な体の動かし方(ボディメカニクスの活用)
○ 介護予防・認知症予防に使える体操(介護予防の理解、手軽に取り組める指先や手などを使った体操の紹介)
入門講座 基本的な介護の方法 10時間 ○ 介護職の役割や介護の専門性
○ 生活支援技術の基本(移動・移乗、食事、 入浴・清潔保持、排泄、着脱、整容、口腔清潔、家事援助等に係る介護や支援の基本的な方法)
○ 老化の理解(老化に伴う心身機能の変化と 日常生活への影響など)
認知症の理解 4時間 ○ 認知症を取り巻く状況(認知症高齢者の今後の動向や認知症に関する施策など)
○ 認知症の中核症状とBPSD、それに伴う日常生活への影響や認知症の進行による変化
○ 認知症の種類とその原因疾患、症状、生活上の障害などの基本的な知識
○ 認知症の人及びその家族に対する支援や関わり方
障害の理解 2時間 ○ 障害の概念や障害者福祉の理念(ノーマライゼーションやICF の考え方)
○ 障害特性(身体、知的、精神、発達、難病等)に応じた生活上の障害や心理・行動の特徴などの基本的な知識
○ 障害児者及びその家族に対する支援や関わり方
介護における安全確保 2時間 ○ 介護の現場における典型的な事故や感染など、リスクに対する予防や安全対策、起こってしまった場合の対応等に係る知識
○ 介護職自身の健康管理、腰痛予防、手洗い・うがい、感染症対策等に係る知識
合計時間数 21時間

まとめ

介護福祉士、介護職員初任者研修に介護職員入門研修と生活援助従事者研修が追加され、介護関連の資格が多様化してきました。厚生労働省は、誰もが取得しやすい資格を創設することで、介護職のキャリアパス形成を図ろうとしています。しかし資格創設だけでは介護の呼び水とならないことは想像に難くありません。

介護者が不足している背景には、労働環境や賃金などさまざまな要因があります。介護職員入門研修を契機に介護への関心が高まったとしても、それらがクリアされていなければ、さらに業界の評価を落とす要因になりかねません。長らく社会経験を積んできた、退職者や中高年者がターゲットなだけに、関りには注意が必要と思われます。

■著者■ 
吉田 匡和
介護ライター
福祉業界では20年のキャリアを誇り、福祉系専門学校教職員、老人保健施設相談支援員、特別養護老人ホーム・デイサービスセンター生活相談員、特別養護老人ホーム事務長として勤務。退職後はフリーライターとなり、WEBを中心に活動している。社会福祉士、介護支援専門員、福祉住環境コーディネーターの資格を保有。
HP:https://buleorca.webnode.jp/

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