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公開日:2018年3月28日

認知症と音楽療法~施設が行えるリハビリ~

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蒼井 桜子(内科医、医療ライター)

超高齢化社会に突入した日本。今や4人に1人が65歳以上の高齢者です。高齢者は身体的にも精神的にも加齢による変化で様々な変調をきたしやすいものですが、その中でも特に記憶障害や人格変化、異常行動などの症状を引き起こす認知症は深刻な問題となります。認知症が進行すると、その人らしさが失われ、がんなどの大きな病気がないとしても健康寿命を大きく損なうことになります。

加齢による認知機能の低下は誰にも避けることができないものです。しかし、認知症への進行や認知症発症後の悪化を防ぐために多くのリハビリが提唱されています。今回は、最近注目を浴びている音楽療法について、認知症予防・悪化に対する効果と施設で行える取り組みについてご紹介します。

1. 音楽療法とは?

音楽療法とは、音楽を聴いたり、歌を歌ったりすることで心の安らぎを得たり、自発的な活動性を持つことが期待される治療法のことです。音楽療法には、音楽を聴くことを主とする鑑賞療法と、自らが歌を歌ったり演奏したりする演奏療法の二通りの方法があります。

その歴史は長く、原始時代にも存在していたといわれています。日本では1955年頃から音楽療法の効果が注目され始め、1997年に認定音楽療法士という資格が誕生しました。

音楽療法は多くの疾患に適応されますが、心身症や不眠症、更年期障害などの患者の心に安らぎを与えること治療の補助的な役割を期待するものと、不定愁訴の多い精神疾患患者や認知症などの疾患のリハビリを目的に行うものがあります。

2. 認知症と音楽療法

音楽療法の歴史は長いですが、近年、音楽療法が認知症のリハビリに有効であることが注目されています。そこで、音楽療法が認知症に与える効果について詳しくみてみましょう。

2.1 脳の活性化

鑑賞療法と演奏療法の双方で音楽は脳への血流を増やすことが分かっています。歌ったり、楽器を演奏するときには様々な手順を思い出してその行為を実行するため、当然ながら脳を働かせることになりますが、音楽を受動的に聞くだけでも脳は多くの働きをするのです。音楽が耳に入ると、人は記憶の中の出来事とその音楽を結び付けようとして脳にインプットされている多くの情報を引き出します。これは、日常生活の中で物事を考えたり思いでしたりすることが少ない高齢者にとって非常に有用な脳のトレーニングとなります。

このように音楽療法は記憶や順序立て、実行力を司る脳の多くの部分のリハビリになり、脳を活性化することにつながるのです。

2.2 心の安らぎ

音楽は古来から人に感動を与え、心に安らぎをもたらす娯楽として栄えてきました。このような音楽の効能は高齢者であっても変わることはありません。好きな音楽を聴くことで心に安らぎが与えられ、気持ちが落ち着くのです。

高齢者は自分の体力や能力の衰えに対して焦りや苛立ちを持ちやすいものであり、周囲の人の励ましや助けはプライドを傷つけ、更なる焦りや苛立ちを生じてしまうことがあります。ですから、音楽は人の助けを得ずに心に安らぎを与えることができる効果的なリハビリツールなのです。

3. 施設での音楽療法

音楽療法は認知症の予防やリハビリに大きな効果を持つことがわかりました。音楽療法は特別な医療器具を必要とせず、認定音楽療法士がいなくても施設のスタッフが気軽に行えるものの一つです。では、施設ではどのように音楽療法を取り組めばよいのでしょうか。おススメ方法を2つご紹介します。

3.1 毎日決まった時間に音楽を流す

夕方や就寝時には認知症の人は精神状態が不安定になり、落ち着かなくなる人が多いものです。ですから、このような時間に毎日決まった音楽を流すことで、認知症の人たちの気持ちを落ち着かせる効果が期待できます。また、認知症でない人たちにも、一つでも多くのルーティーンを作ることは、生活にメリハリをもたらし、時間の認識などで脳を活性化することにもつながります。音楽は毎日同じものではなく、入所者の好みに合いそうな音楽をローテーションで使用するとよい刺激になるでしょう。

3.2 レクとしての合唱

食事後などで入所者の多くが一つの場所に集まる時間を利用して、簡単な歌を全員で歌うレクもおススメです。歌うことで脳が活性化され、また他者との交流が増えて日常での楽しみの一つとなるでしょう。他者との交流自体も脳を活性化することに加え、抑うつな気分を改善することにもつながります。

歌は時節に合ったものを選んで、季節や時間の認識を促すとよいです。また、演歌などの特定の分野に限らず、すべての入所者が興味を持って取り組めるような選曲を工夫して下さい。

4. まとめ

認知症は高齢者施設にとって避けることのできない問題です。認知症を予防する治療は確立されておらず、今後ますます患者数は増えていくことが予想されています。ですが、認知症の発症を遅らせたり、進行を予防するためのリハビリは行うことができます。特に音楽療法は特別なことは必要とせず、施設で気軽に挑戦できるリハビリの一つです。その施設の実態に合った音楽療法を取り入れ、施設独自の認知症対策を進めていきましょう。

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