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公開日:2018年3月15日

認知症のリハビリ~その種類と効果~施設での注意点

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蒼井 桜子(内科医、医療ライター)

日本は超高齢化社会であり、高齢者の四人に一人は認知機能に問題を抱えていると言われています。認知症は日本人の国民病となりつつありますが、未だに認知症を著明に改善し、発症を予防できる薬は開発されていません。認知症の治療は症状の進行を遅らせる薬と様々な種類のリハビリによって行われます。特にリハビリは、認知症を予防する効果も期待でき、施設でも取り入れることができるものです。
ここでは、施設でも実施可能な認知症のリハビリとその注意点についてご紹介します。

1. 認知症のリハビリにはどんなものがあるの?

認知症のリハビリの最大の目的は、脳に刺激を与えて、認知症の発症や進行を防ぐことです。私たちの脳は各部位によって様々な働きを持ち、一つ一つの神経細胞がお互いに連絡し合うことで機能します。認知症の人は、この神経細胞の連絡がうまくできなくなるために物忘れが激しくなったり、日常の動作ができなくなったりするのです。ですから、リハビリでは様々な脳の部位を活性化するために、五感を満遍なく使うようなトレーニングが望ましいのです。

1.1 回想法

認知症の人は、最近の出来事よりも昔の出来事を覚えているという特徴があります。認知症の人に昔の写真を見せると、その当時のことを思い出し、色々なエピソードが聞けるでしょう。このトレーニングは、記憶を司る脳の部分を活性化させるだけでなく、思い出したことを言葉に出すという言語中枢を鍛えるのにも効果的です。

1.2 音楽療法

音楽療法には気持ちを落ち着かせるために好みの音楽を聴くものと、自分自身で歌を歌ったり楽器を演奏したりするものがあります。どちらも、「聴く」ことを鍛えますが、特に自分で歌ったり演奏したりするトレーニングは、物事を考えてそれを行動にうつす能力の向上につながります。また、細かい指先の動きが必要な演奏では、それ自体が脳を活性化させる効果があります。

1.3 作業療法

簡単な掃除や料理、買い物などの日常の動作を行うトレーニングです。作業療法では、日常の動作を維持する能力を身につけることができます。また、適度な動作は筋力の低下を防ぐ効果もあり、特に運動ができない高齢者には積極的に取り入れるべきリハビリです。

1.4 有酸素運動

適度な有酸素運動は、ダイエット効果があるだけでなく、脳の血流を増加させて脳を活性化する効果が期待できます。特別な訓練設備は必要なく、施設の高齢者では施設内を見守りしながら散歩を促すだけで有酸素運動となるでしょう。また、一人で行うよりもスタッフや他の入居者と触れ合いながら行った方がより効果的です。もちろん、廃用症候群の予防にもなります。

1.5 美術療法

折り紙や手芸、絵画などの美術作品を作るトレーニングです。美術作品の作成には、視覚や触覚など様々な感覚を必要とし、順序立てやそれを忠実に実行するための能力も鍛えられます。また、作品の中に時節に合わせたものを取り入れると、時間や季節の感覚も養われるでしょう。

2. リハビリの注意点

上のようなリハビリをいくつか行うことで、認知症の発症や進行は予防することも可能です。また、入所者にとってリハビリは苦しい訓練ではなく、楽しんで行うことができる、いわば生活の張りになるような取り組みとなるはずです。

しかし、リハビリにはいくつか気をつけなければならないこともあります。間違ったリハビリ方法は逆に入所者に不安を与え、逆効果になることもあるので注意が必要です。

2.1 無理強いをしない

認知症の人は、とても頑固なことがあります。特に、以前はできていたことができなくなってしまった現実を受け入れられないと、時に怒りっぽく暴言や暴力行為につながることもあります。リハビリも進んで楽しんで行う人もいれば、嫌がる人もいるでしょう。

嫌がる人に無理やりリハビリを強いても、十分な効果は得られない上に本人もスタッフも危険なことが生じることもあります。嫌がる人には無理強いはせず、根気強く誘い掛けをするとよいでしょう。

2.2 安全に気を付ける

リハビリは体を動かしたり、包丁やハサミなど怪我をする可能性のある道具を使用することがあります。特に運動時の転倒は要注意です。リハビリの怪我によって寝たきりになっては意味がありませんから、リハビリを行う場合には必ずスタッフが見守りを行うようにしましょう。

2.3 プライドを傷つけない

認知症の人は些細なことでプライドが傷つき、抑うつ状態になることがあります。リハビリでは、思うような成果を得られないことも多いですが、入所者のプライドを傷つけるような発言は禁物です。「できなかった」ことを強調するのではなく、少しでも「できた」ことを褒めるようにしましょう。また、他の入居者と比較して優劣をつけるような発言は控えた方がよいです。

3. まとめ

今や国民病となりつつある認知症ですが、その発症や悪化の予防方法は確立されていません。ですから、日々の施設生活の中でもできるリハビリを行って発症・悪化予防をしていくことが大切です。

施設でもできるリハビリはたくさんあります。きちんと注意点を守って正しいリハビリを続けていきましょう。

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