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公開日:2018年2月28日

認知症予防のための脳トレ~施設が行うべき脳トレの取り組みは?~

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蒼井 桜子(内科医、医療ライター)

超高齢化社会に突入した日本。今や、高齢者の4人に1人は認知機能に何らかの問題を抱えているといわれています。
認知機能の低下には様々な原因がありますが、老化は大きな原因の一つであり、誰にも避けることができないものです。しかし、認知症の発症や悪化の防止を行うことは誰にでもできます。特に発症をできるだけ遅らせることは、健康寿命の延伸にもつながりますから非常に重要な課題です。

認知症の予防にはこれまで多くのものが推奨されてきました。その中でも、近年注目されている脳トレは中高年対象のクイズと思われがちですが、実は認知症予防にも高い効果が期待されることが分かってきました。
ここでは、脳トレと認知症の関係と施設で行うべき脳トレの取り組みを詳しく解説します。

1. 脳トレと認知症の関係は?

脳トレとは、脳力トレーニングの略で、記憶力や創造性、学習能力や空間認識能力などの脳機能を訓練することです。紙上で行うこともできますが、近年ではコンピューターやDS、携帯アプリなどの電子媒体で行う場合も多いでしょう。
脳トレには多くの種類がありますが、どのようなものが認知症予防に効果があるのでしょうか。詳しくみてみましょう。

1.1 人の認知機能について

私たちの脳は言葉を認識して話したり、過去のことを記憶したり、計算したり、機能は無限大で、そのすべての機能がバランスよく働くことで日常生活を円滑に送ることができます。

脳にはそれぞれの部位に特有の機能が備わっており、例えば前頭葉は感情を制御したり、言葉を生み出したりする役割があり、後頭葉は視覚を司っています。

これらの機能はそれぞれの神経細胞がお互いに伝達しあうことで働きますが、老化による認知機能の悪化は、この神経伝達が正常に働かなくなったことで生じるのです。

1.2 脳トレが認知機能に及ぼす効果

脳トレには、パズルや計算、記憶問題、速読術など多くの種類があります。脳トレは一種類のみを行ってもあまり効果はないと言われており、脳の様々な機能を鍛えることでバランスの良い脳機能を得ようとするものです。脳トレでは、その訓練によって能力を得ようと期待することはできません。例えば、簡単な計算を繰り返し行うことで脳トレの効果は得られますが、暗算が非常に得意になったなどという効果は期待できないのです。

しかし、繰り返し脳トレを行うと、脳の神経細胞同士の伝達が活性化され、機能の衰えを予防する効果が期待されます。認知症予防には、この神経細胞の活性化が非常に重要であり、脳トレは正に理想的な認知症予防のためのトレーニングなのです。

物事を考えたりして脳を使うときには、脳への栄養源としてたくさんの酸素とエネルギーが必要になります。このような時には、脳の血流量が増える現象が生じます。当然ながら、脳トレにも脳血流を増やす効果があります。最近の研究で、脳血流の低下は認知症の発症や悪化の危険因子であることが分かっています。ですから、脳トレによって脳血流を増やすことも、認知症予防につながるのです。

2. 施設で行うべき脳トレの取り組み

このように、脳トレは認知症予防のために効果的なトレーニングです。座ったままでもベッド上でも行うことができるので、高齢者にも適した訓練だといえます。
では、施設ではどのような脳トレを取り組めばよいのでしょうか?

2.1 思い出しゲーム

物の名前を五つほど答えさせるゲームです。とても簡単なクイズですが、経験に則した記憶力や発語力を鍛える効果があります。特に高齢者では、頭で理解はしているものの、言葉が中々出てこないという人がたくさんいます。このような状態を改善する効果が期待できるでしょう。

2.2 計算ゲーム

100-7はいくつ?そこから更に7を引くと?というように最初の数字から次々に数を引いていく計算ゲームです。計算力を鍛えるだけでなく、記憶力も必要になります。日常生活に必要な簡単な計算に対する苦手意識克服につながるでしょう。

2.3 瞬間記憶力ゲーム

一枚の紙の上にいくつかの数字や絵がバラバラに描かれたものを数秒間見せて、何が書いてあったかを答えるクイズです。瞬間視力と瞬間記憶力が鍛えられます。高齢者は瞬間視力が衰えていることが多く、これは注意障害につながり、思わぬ転倒やけがをすることがあります。このトレーニングによって注意力が改善することが期待できるでしょう。

3. 施設で行う脳トレ。その注意点は?

施設で行うべき脳トレは上記以外にも多くのものが考えられますが、施設で脳トレを行うときに注意すべきことはどんなことでしょうか?

3.1 楽しんで取り組む

どんなトレーニングでも共通ですが、楽しく行うことで脳トレが単なる認知症予防のトレーニングを超えた入所者の娯楽の一つとなります。グループごとのレクリエーションとして行えば、他者とのコミュニケーションの機会も増え、これ自体も認知症予防となります。

3.2 正解にこだわらない

脳トレの目的はあくまで、脳を使って神経細胞を活性化させることです。ですから、脳トレに正解したかどうかは重要ではありません。特に高齢者は劣等感を抱きやすい人も多く、グループで行う脳トレには注意が必要です。

3.3 多くの分野の脳トレを行う

脳トレには様々な能力を鍛える目的を持つものがあります。認知症予防のための脳トレでは、なるべく万遍ない分野の脳トレを繰り返し行うことが重要です。認知症予防のためには脳の機能のバランスを保つことが必要です。ですから、偏った内容のトレーニングよりも万遍ないトレーニングの方が有効なのです。

そして繰り返し行うことが何よりも重要です。そのためには、特別な時間内で行うだけではなく、入浴の順番待ちの時とかバスの待ち時間とか、ほんの数分のスキマ時間にちょっとした脳トレを職員が提供してはどうでしょうか。

4. 脳トレには認知症予防効果がある!

脳トレには認知症予防効果があります。特別な設備を必要としないトレーニングですから、施設内でスキマ時間に取り組むことができます。そのためには、施設職員が脳トレについて理解し、いつでも脳トレを口頭で行えるようにしておくことが必要です。



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