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公開日:2018年1月2日

「介護離職ゼロ」に向けて増設が進められる特養、有料老人ホーム、サービス付き高齢者向け住宅。その現状と問題点を読み解く

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与野謙二郎(介護ライター)

介護保険制度が施行された2000年以降、介護・看護を理由とした離職者数は毎年5万人前後の水準で推移してきましたが、2010年以降に急速に増加し、2013年には過去最高となる9万3,400人に達しました。2011年9月から2012年10月という期間で調査された総務省の「就業構造基本調査(平成24年)」では、1年間の離職者数は10万人を突破しています。

こうした状況を受け、政府は「介護離職ゼロ」を目標に掲げ、介護休業制度の改正をはじめ様々な高齢者福祉政策を打ち出していますが、特別養護老人ホーム(特養)やサービス付き高齢者向け住宅(サ高住)などの高齢者向け施設の増設もその一つ。

今回は、介護離職ゼロに向けて整備が進められる特養、有料老人ホーム、サ高住の拡充状況について取り上げ、その現状、問題点をみていきます。

待機者が多い中、施設数が伸びない特養

厚労省の調査によると、2016年時点の特養の入居者定員数は53万280人で、入居待ちをする待機者数が全国で約36万6,000人います。2015年の介護保険制度改正により入居条件原則「要介護3」以上とされたことにより、2012年頃には約52万人いた待機者数は2016年までに16万人近く減りました。しかしながら東京都心部をはじめ、もともとベッド数が不足する地域ではなお待機者が列をなしている状況は続いています。

2016年までの3年間の特養の増設状況をみると、2013年時点では合計6,754施設、48万8,659戸だったのに対し、2016年では合計7,705施設、53万280戸となり、3年間のうちに施設数で約1.14倍、戸数で1.09倍増加しているという状況です。施設数、戸数とも増えてはいるものの、待機者の多さを考えると、やはり伸びが足りないと言えるでしょう。

特養よりも急速に数を増やす有料老人ホームとサ高住

サ高住は、2011年10月に施行された高齢者住まい法に基づき急ピッチで整備が進められ、一般社団法人「高齢者住宅推進機構」によれば、2011年12月時点では全国で112施設、計3,448戸に過ぎませんでしたが、2013年12月末には4,205施設、計13万5,352戸まで数を伸ばしました。2016年12月時点では施設数が6,463、戸数は21万0,859戸となり、2016年までの3年間では、施設数で1.54倍、戸数で1.56倍増えています。

また有料老人ホームは、2013年時点では施設数が8,502、戸数が計35万990戸でしたが、2016年では施設数が1万2,570、戸数は計48万2,792戸まで増加。2016年までの3年間で施設数は1.48倍、戸数は1.36倍まで増えているのです。サ高住、有料老人ホームともに、施設数、戸数の増設は特養よりも大きく進んでいます。

介護を受けたい場所、最期を迎えたい場所は?

一方で有料老人ホームとサ高住は、「介護を受けたい場所」としての評価はそれほど高くないという実態があります。『平成29年版高齢社会白書』によれば、「介護を受けたい場所はどこか」というアンケート調査を全国の55歳以上の男女に行ったところ、「介護老人福祉施設(特養)に入所したい」と答えた人は男性が18.3%、女性が19.1%でした。

ところが「民間有料老人ホーム等を利用したい」と答えた人は男性が2.3%、女性が3.0%にとどまっています。また「最期を迎えたい場所」というアンケートに対しては、「特養などの福祉施設」と答えた人が60~74歳で5.3%、75歳以上で3.7%だったのに対し、「高齢者向けのケア付き住宅」と答えた人は60~74歳で4.7%、75歳以上では2.8%となり、いずれも「特別養護老人ホームなどの福祉施設」と答えた人を下回っているのです。

有料老人ホームやサ高住は高くて入れない?

有料老人ホームやサ高住が特養ほどに人気がないことの理由として、よく言われるのが「費用が高い」ということ。確かに有料老人ホームは入居時に多額の一時金を収めなければならないことも多く、サ高住も月額費用は決して安くはありません。
しかし『平成29年版高齢社会白書』によると、世帯主が60歳以上の世帯における平均貯蓄高は全世帯の中央値の約1.5倍で、貯蓄を4,000万円以上保有する60歳以上の世帯は、全世帯平均よりも6.2ポイント高い18.2%となっています。経済的に余裕のある高齢者世帯は意外に多く、有料老人ホーム、サービス付き高齢者向け住宅に入居できるだけの資力のある高齢者は少なくないのです。

サ高住、有料老人ホームは顧客訴求力を高める努力が必要

介護離職を防ぐ有力な手段として期待される高齢者施設ですが、特養は、ここ数年では思うように施設数、戸数は増えていません。
一方、特養に比べて急速に施設数、戸数を増やしつつあるサ高住や有料老人ホームは、「介護を受けたい場所」、「最期を迎えたい場所」としてはいまいち評価が上がっていないというのが現状です。

資金的に余裕のある高齢者も多いことを考えると、顧客訴求力を高めるなどの入居者を呼び込むためのより多くの努力が、今後サ高住、有料老人ホームの経営にあたって必要なのかもしれません。

参考URL

平成29年版高齢社会白書
http://www8.cao.go.jp/kourei/whitepaper/w-2017/zenbun/pdf/1s2s_03.pdf

厚労省「特別養護老人ホームの入所申込者の状況」
http://www.mhlw.go.jp/file/04-Houdouhappyou-12304250-Roukenkyoku-Koureishashienka/0000157883.pdf

厚労省「平成28年社会福祉施設等調査」
http://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/fukushi/16/dl/kekka-kihonhyou01.pdf

厚労省「平成26年介護サービス施設・事業所調査」
http://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/kaigo/service14/dl/kekka-gaiyou.pdf

厚労省「平成28年介護サービス施設・事業所調査」
http://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/kaigo/service16/dl/kekka-gaiyou.pdf

高齢者住宅推進機構「サービス付き高齢者向け住宅の登録状況」
https://www.satsuki-jutaku.jp/doc/system_registration_01.pdf

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