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公開日:2017年7月11日

受験者激減!介護福祉士の地位向上は介護現場から!

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吉田 匡和(介護ライター)

2017年に実施された「介護福祉士の国家試験」は、前年度の16万919人の半分以下となる7万9113人まで落ち込みました。厚生労働省は「実務経験ルート」の条件に、最大で450時間の「実務者研修」の修了が加わったことが要因とみています。また、大学や専門学校などの、介護福祉士養成校も軒並み定員割れとなり、存続が危ぶまれたり廃校となる学校も増えています。なり手の少ない「介護福祉士」に未来はあるのか。検証してみました。

介護福祉士国家資格の成り立ち

介護福祉士の資格は、社会福祉士と共に1987年(昭和62年)の社会福祉士及び介護福祉士法により誕生しました。それまでも医療機関や老人ホームにおいて介護を生業とする人たちはいたものの、当時はまだ在宅介護が中心であったことから「介護は素人でもできる」というイメージが強くありました。プロの介護士として、スキルが担保されていることを明らかにするため、職能団体が中心となって、介護福祉士の資格が誕生したといわれています。

介護福祉士の受験者数の推移

回数 16回 17回 18回 19回 20回 21回 22回
西暦 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010
受験者数 81,008 90,602 130,034 145,946 142,765 130,830 153,811
回数 23回 24回 25回 26回 27回 28回 29回
西暦 2011 2012 2013 2014 2015 2016 2017
受験者数 154,223 137,961 136,375 154,390 153,803 152,573 76,323

2010年から15万人以上で推移していたのは、今回の実務経験ルート要件改正のための駆け込み受験といわれていますが、それ以前のレベルまで落ちていることを考えれば、「特需がなくなった」以外の理由を探るべきです。

介護福祉士養成校入学者数の推移

公益社団法人「日本介護福祉士養成施設協会」が毎年度行っている調査によると、2016年度の定員枠が約1万6700人(377校)だったのに対し、入学者数は半分以下の約7,700人でした。2006年度は定員が約2万6800人(409校)、入学者数が約1万9200人であることと比較すると大いに減少していることが分かります。

これまで入学者が少なかったのは、「コムスンショック」と呼ばれた大手介護事業者の不祥事が発覚した2008年で、入学者数約9,000人近くまで落ち込みましたが、2016年度はそれを大きく下回ったことになります。

介護職員の離職率

平成26年に厚生労働省が発表した資料によると、介護職員の離職率は、訪問系(常勤):17.5%、訪問系(非常勤):12.6%、施設系(常勤):16.7%、施設系(非常勤):21.3%となっています。よく「飲食業などに比べて著しく離職率が高いとはいえない」といわれますが、特別な調理などをしない限り飲食店に、あまり国家資格は必要ありませんので、比較の対象にはならないでしょう。

国の施策

現在、厚生労働省が用意している施策は2つあります。ひとつは現在「介護士」として勤務しながら、資格を目指す人に対する支援です。実務者研修に通う負担を軽減するため、20万円を上限として受講費を貸し出しや、継続して2年間にわたり介護職員として勤め続けた人には、返済をすべて免除しています。もうひとつは事業者への支援です。実務者研修に参加することにより勤務できない場合、代わりの職員を一時的に雇うための人件費を支給しています。

介護福祉士の資格はステータスも費用対効果も低い

介護福祉士の受験者数の減少や、介護福祉士養成校入学者数が減少している背景には、資格にステータスがないことが挙げられます。介護福祉士を取得するための実務者研修は約10万円かかるといわれています。事業所が費用を負担してくれればよいですが、自分で払わなくてはならない場合は、大きな負担になります。

また介護福祉士養成校は、最低2年間在学しなくてはなりません。卒業までにかかる学費は、私立で約200万円にもなります。時間とお金と労力をかけて取得した介護福祉士ですが、費用対効果がとても低いのです。事業所によって異なりますが、介護福祉士の資格手当は0~1万円と幅があります。

手当がまったくなければ無資格者との差別化図れず、モチベーションは上がりません。例え1万円の手当をもらったとしても、介護福祉士養成校卒業者の場合、16年6か月以上勤めなくては資格手当で学費分を埋めることはできず、ステータスも費用対効果も低いといえます。受験者が減少するのは当然といえるでしょう。

まとめ

介護福祉士という資格が創設されて長く経過しているにも関わらず、専門職として認めてもらえない、社会的評価が低いというのが現状です。介護福祉士が「介護のプロ」として認められにくくしているのは、資格手当を低く抑えている「国」や「介護事業所」に問題があるのではないでしょうか。

プロとして報酬に反映されない資格やボランティア精神など必要ありません。質の向上を求めるのであれば、まずは相応の報酬ありき。介護福祉士を本当に「プロの介護」と考えているのなら、現場での地位向上が何よりも必要であることを理解してください。

■著者■ 
吉田 匡和
介護ライター
福祉業界では20年のキャリアを誇り、福祉系専門学校教職員、老人保健施設相談支援員、特別養護老人ホーム・デイサービスセンター生活相談員、特別養護老人ホーム事務長として勤務。退職後はフリーライターとなり、WEBを中心に活動している。社会福祉士、介護支援専門員、福祉住環境コーディネーターの資格を保有。
HP:https://buleorca.webnode.jp/

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