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公開日:2019年1月9日

緊急事態 「社会福祉法人が破綻する時代の到来?!」

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吉田 匡和(介護ライター)

東京商工リサーチの調査によると、2018年上半期(1~9月)の「老人福祉・介護事業」倒産は56件となり、2017年度の記録を更新する可能性が高まっています。業種別では小規模や新規参入による「訪問介護」と「デイサービス」の倒産が多いものの、安定した経営のために税制が優遇されている社会福祉法人の倒産も見られるようになりました。社会福祉法人は今後どうなるのか。破綻した二つの法人から課題を探りました。



社会福祉法人とは


社会福祉法人は、社会福祉事業を行うことを目的として、社会福祉法の定めるところにより設立された公益法人をいいます。利用者保護の必要性が高い事業を行うため、安定した経営の配慮として法人所得税・法人地方住民税・事業税・消費税・固定資産税が原則非課税となっています。

利用者への影響が大きい「第一種福祉事業」と、比較的緩やかな「第二種福祉事業」があり、介護保険法施行後は民間企業でもデイサービスや、訪問介護などの第二種福祉事業を行うことができるようになりました。しかし特別養護老人ホームなどの第一種福祉事業を行うためには、社会福祉法人として認可されなければなりません。



破綻する社会福祉法人


社会福祉法人は厳しい条件のもとに認可を受け、税制優遇による安定した経営が行われる組織体ですが、近年では倒産や一部を閉鎖する法人が現れています。



■ 社会福祉法人「大磯恒道会」


神奈川県大磯、二宮両町で高齢者介護施設などを運営する社会福祉法人「大磯恒道会」(大磯町)は、2018年12月に東京地裁に破産を申し立てました。同法人は昭和48年12月に開設。特別養護老人ホームとデイサービス、グループホームを各2施設、サテライト型特別養護老人ホーム・小規模多機能型居住介護、介護支援センターを各1施設の計8施設を運営していましたが、6億4千400万円の負債をかかえて倒産しました。別法人が事業を継承することが決まっていますが、グループホーム「かわわの家」など2事業所は休止する方針で、利用者は移転を余儀なく強いられているとのことです。

倒産の理由は公表されていませんが、2013年に人事や給与の遅延を巡って職員の離職が相次ぐなどサービスの悪化が表面化。元特養施設長らが「出勤停止は無効」と訴える裁判に発展するほか、法人内に労働組合が組織されました。両町の議会でも問題とされ14、17年に同法人の運営が適正に行われるよう、県に指導を求めて意見書が提出されています。

15年には家族会が「優秀なベテラン職員が大量に退職」「不健全な経営体制」「致命的な経営状況」を問題視し、法人に改善を求める活動が行われていました。県は17年以降も14回にわたり監査を実施。経営改善計画を提出するよう18年3月から計5回、改善命令を行ったものの、利用者数の減少などから年間約7千万円の事業損失を計上するなど経営状態が改善されず、破産申し立ての運びとなりました。



■ 社会福祉法人「友愛会」


福岡県行橋市でも問題が起っています。18年12月6日、特別養護老人ホーム「今川河童苑」と特定施設「いまがわ秋桜ガーデン」を運営する社会福祉法人「友愛会」は、経営難を理由に市に入所者の移送の協力を要請しました。2つの施設には合わせて28名の入所者がいましたが、12月13日までに全員を別の施設に移送しています。

同法人は特養待機者の解消を目的に、市の公募で選定され14年9月に社会福祉法人として認可されました。15年7月に運営を開始したものの、河童苑は開所7カ月で定員29人に対し入所5人と入居者が伸び悩み、市議会などで経営上の問題が指摘されていました。

最近では給料の遅延により職員が大量に退職。11月末に行われた特別監査では「いまがわ秋桜ガーデン」において、常勤の介護支援専門員を配置していないにもかかわらず、雇用しているとした書類を市に提出していたことや、勤務表やタイムカードを偽造していたことが発覚し、改善命令を受けていました。水道代も2か月分滞納されて供給が一時停止するほか、電気代やガス代の支払いも滞っていたといいます。



破綻を招いた3つの理由


両法人に共通しているのは「資金難」と「人手不足」です。社会福祉法人「大磯恒道会」は、これに「労使の対立」が、社会福祉法人「友愛会」は「行政の目先の甘さ」が加わります。大磯恒道会においては「人」が問題です。人事を巡って裁判に発展したり労働組合が組織されるような法人では、退職者が増加するのは当然のこと。家族会までもが経営改善を求めるのは異常事態であり、募集をかけても働きたいと思う人など現れるはずがありません。

友愛会においては「ニーズ」が問題です。人口7万3千人の行橋市に有料老人ホームが20施設、特養が4施設、そのほかに老人保健施設やサービス付き高齢者住宅などもあり、周囲の市町村も合わせると介護サービスが無数に存在しています。需要があるのか疑わしい上に、友愛会の施設は地域密着型のため、他の市町村から利用者を呼び込むことができないなど、計画性のなさが浮き彫りになっています。



社会福祉法人の意義が失われている


有料老人ホームやグループホーム、サービス付き高齢者住宅など、これだけ介護関連サービスが増えると、社会福祉法人や特別養護老人ホームの存在意義が薄れてきます。特に現在主流であるユニット型は、従来型よりも料金が高くなるため、その他の入所型介護サービスと料金差が少なくなります。アクセスの悪い場所に建つユニット型特養よりも、都市部のサービス付き高齢者住宅などに利用者が流れていくことが予想されるでしょう。

すでに全国の特養の約3割が赤字経営だと報告されています。黒字にするためには「定員規模が大きい」「入所利用率が高い」「短期入所利用率がとても高い」の3つの要素が必要だと言われていますが、これらを達成するためには、優秀な人材を集め、良好な職場環境の中で働いてもらうことが重要になります。

社会福祉法人に求められているのは継続性です。倒産が続き、アイデンティティーとしてきた「終の棲み家」としての機能を失ったとき、特養離れが加速するとともに社会福祉法人の役割も終わることでしょう。


■著者■ 
吉田 匡和
介護ライター
福祉業界では20年のキャリアを誇り、福祉系専門学校教職員、老人保健施設相談支援員、特別養護老人ホーム・デイサービスセンター生活相談員、特別養護老人ホーム事務長として勤務。退職後はフリーライターとなり、WEBを中心に活動している。社会福祉士、介護支援専門員、福祉住環境コーディネーターの資格を保有。
HP:https://buleorca.webnode.jp/

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