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公開日:2018年12月20日

喉を詰まらせて親が施設で亡くなった!「施設の対応が家族の感情を左右する」

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吉田 匡和(介護ライター)

厚生労働省の発表によると、喉を詰まらせて死亡する人の53%が高齢者であると報告しています。咀嚼嚥下機能が低下し、噛む力も飲み込む力も低下している高齢者は、少し目を離している間に窒息する恐れがあります。筆者の経験をもとに、施設における窒息死について家族の視点で記しました。



認知症の親が特養に入所


私の母は、父が他界してから10年近く一人暮らしをしていましたが、数年前より物忘れや思い込みが激しくなりました。悪化しないように精神科の受診を勧めるもののプライドが高く断固拒否。自分が認知症であることを認めずに過ごしていました。しかし冬に外で転んで腰を怪我したことから整形外科に入院したことで精神状態が悪化。要支援2から介護度5まで一気に低下。身の回りのことができず、意思疎通も図ることができないため、市内の特別養護老人ホームに入所しました。

入所した施設は市内で最も歴史があり、介護職員も多めに配属されていました。集団介護が基本で、ワンフロアに50人ほどの利用者が生活し、一日は食堂を兼ねたデイルームを過ごす、ひと昔前のスタイルが取られていました。食事は大きな食堂で一斉に行われ、利用者5、6人が一つのテーブルに着き、必要に応じて介護職員1、2人が介助にあたっています。

母は時々食事の手が止まるため、見守りや声掛けが必要でしたが、それほど食事介助のウエイトは高くないように感じました。重度な認知症の母には、ユニットケアよりも、常に多くの人がそばにいる「集団ケア」が向いていたように思えます。



窒息死は突然訪れる


施設入所から丸2年が過ぎた8月31日の夕刻、自宅で仕事をしている私のもとに、特養の生活相談員から「夕食を喉に詰まらせて緊急搬送された」と電話がありました。「食事中に意識を失っていることに職員が気付き、蘇生を行ったものの息を吹き返すことがなかった」と報告を受けます。呼吸停止が発見された時間をから搬送までに要した時間を考えると、蘇生は困難なことが読み取れました。

病院に向かうため車に乗り込むと、線香と生臭さの混じった匂いを感じました。娘も同じ匂いをかぎ取ったことから、血を継ぐ者だけが分かる死臭を感じたのかも知れません。その時に母が亡くなったことを確信しました。

救急搬送されてから40分以上が経過し、すでに息を吹き返す見込みがない状態でした。医師によると、喉の奥深くまで食べ物が詰まっていたとのこと。苦しんだりもがいたりしなかったことから、自分で口の中に大量に食べ物を詰め込み、一瞬で窒息したようです。それ以上の医療行為を断り、穏やかに眠るような顔を見つめながら、砂時計の砂が落ちるのを待つように心臓の波形を映し出すモニターがフラットになるのを見届けました。



「しっかり心肺蘇生できていれば」涙してくれた若い職員


「縁もゆかりもない会館や祭儀場より、2年間暮らした『家』で看取ってほしい」との思いから、特養に無理な願いを承知してもらい、葬儀を広々とした施設内の仏間で行いました。通夜や告別式、葬儀の用意をしている最中にもたくさんの職員が弔問に訪れ、母の死に涙を流してくれました。近年、ユニットケアがもてはやされていますが、集団ケアであったことが、たくさんの職員と母を結び付けてくれていたのだと感じます。最後の蘇生をしてくれた若い男性職員が私のもとを訪れ、「もっとしっかり心肺蘇生ができていれば、助けられたかもしれない」と自分を責め、涙を流してくれたことに心が痛みました。

親戚の中には「面会に来てもフロアに人がいないことが多かった」「食事介助が必要な人だけに目が配られていた」という人もいました。事故による死亡は、施設側の管理責任が問われ、場合によっては訴訟に発展することもあります。しかし、私は元同業者としても、家族としても施設の方々を責める気持ちはありません。むしろ家族ができない介護を若い人たちに任せたうえに、悲しみを与えてしまったことが申し訳なくて仕方ありませんでした。



施設の対応が家族の感情を左右する


過去に私が勤務していた特養で、言語療法士(ST)が食事介助をしていた利用者が、喉を詰まらせて死亡する事故がありました。STが自責の念を感じている一方で、法人幹部は、「家族からクレームがなく運がよかった」と喜んでいました。私も含めて家族が肉親の死に納得できたのは、家族が高齢者の嚥下障害を理解していたり、日ごろの職員との関係によるものです。もしトラブルに発展することがあるのなら、そうした思いや関係性に目を向けず、ひたすら管理責任を弁明する施設責任者に対する怒りが原因でしょう。

高齢者の嚥下機能が低下している以上、いつ高齢者が喉を詰まらせて亡くなっても不思議ではありません。事故死は家族のみならず、関わっていた職員の心にも大きな影を落とします。事故の発生を未然に防ぐとともに、事故があった場合は職員のメンタルケアも行える体制を築いてください。



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■著者■ 
吉田 匡和
介護ライター
福祉業界では20年のキャリアを誇り、福祉系専門学校教職員、老人保健施設相談支援員、特別養護老人ホーム・デイサービスセンター生活相談員、特別養護老人ホーム事務長として勤務。退職後はフリーライターとなり、WEBを中心に活動している。社会福祉士、介護支援専門員、福祉住環境コーディネーターの資格を保有。
HP:https://buleorca.webnode.jp/

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