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公開日:2018年12月20日

「窒息死の53%は高齢者」1月に急増する喉つまりに注意喚起

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吉田 匡和(介護ライター)

厚生労働省発表の「不慮の事故による死亡の年次推移」によると、これまで死因として最も多かった交通事故が減少し、2006年に窒息死が死因のトップになりました。死亡年齢は65歳以上から急激に上昇するなど高齢者の窒息事故が著しいく、特に年末・年始は餅を喉に詰まらせるなど、多くの死亡事故が発生しています。窒息の理由と予防方法をまとめました。



窒息死の53%が高齢者


厚生労働省が2015年に発表した人口動態調査の「不慮事故種類別」によると、志望者総数38,306人のうち窒息死は9,356人であり、死亡理由全体の24%を占めています。年齢別でみると80歳以上が5,951人、65歳以上80歳未満が2,324人であり、全体の53%が高齢者であることが明らかになっています。

種類別でみると、食べ物をのどに詰まらせる「気道閉塞を生じた食物誤嚥(4,686人)」が一番多く、胃に入った食べ物が逆流して気道を塞ぐ「胃内容物誤嚥(1,533人)」、食べ物以外をのどに詰まらせる「気道閉塞を生じたその他の物体誤嚥(739人)」、「詳細不明窒息(2,166人)」となっています。「食事」という日常的な行為が「死」に繋がるため、いつ、どこで、誰が亡くなっても不思議ではないのです。



嚥下のメカニズム


食物を飲み込む働きを「嚥下機能」と言います。食物は口腔から咽頭に入り食道を経て胃に至ります。この際に食道へ入るべきものが誤って気管に入ることを、「誤嚥」と言います。さらに誤嚥したものが肺に入ることで引き起こされる炎症を「誤嚥性肺炎」と呼びます。誤嚥性肺炎の原因には、飲食物の誤嚥以外にも、細菌を含む分泌物の誤嚥や睡眠中などに胃食道逆流による内容物の誤嚥で起こることもあります。



窒息事故例の主な原因食品


高齢者の窒息死は、ほとんどが食べ物によって引き起こされます。2007年度に厚生労働科学特別研究事業が、消防本部及び救命救急センターを対象に「食品による窒息の現状把握と原因分析」調査を実施。窒息の原因となった食べ物が次のように報告されています。


主な原因食品の例

消防調査

(432例)

救命救急センター調査(371例)

77例

91例

米飯(おにぎり含む)

61例

28例

パン

47例

43例

11例

11例

団子

8例

15例

あめ

22例

6例

カップ入りゼリー

8例

3例


出典:「食品による窒息の現状把握と原因分析」調査について
https://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/iyaku/syoku-anzen/chissoku/jimu080508a.html

喉を詰まらせる食品の一位は、「餅」がトップです。食事の西洋化が進んでいる中でも、正月料理は日本の文化として継承され、在宅はもちろん介護施設でも、団子や雑煮などがふるまわれています。しかし東京消防局によると、2017年までの過去5年間で餅などを喉に詰まらせて救急搬送された人は毎年100人前後おり、その多くが65歳以上の高齢者だと報告しています。2017年度に搬送された人は、「重篤(39.4%)」、「軽傷(32.9%)」、「死亡(12.8%)」、「重症(8.5%)」、「中等症(6.4%)」となり、深刻な状況に陥る人が多いことが分かります。



餅が喉に詰まりやすい理由


高齢になると歯が抜けたり、入れ歯になるなど、噛む能力が低下していきます。また唾液の分泌量が減ることで、食べ物がうまく飲み込めずに気道を塞いだり、肺に入り込んだりします。噛むことと飲み込む能力の低下によって喉つまりを起こすことが、窒息に繋がると考えられます。

餅は口に入れることで急激に冷め始めて硬くなり、口の中で喉の粘膜などにくっつきやすくなります。気道の入り口に餅が付着しても、嚥下能力の低下により自力で飲み込むのが困難なため、気道がふさがれて窒息に至ります。



窒息死を防ぐには周りの気配りが重要

事故は「自分は大丈夫」という思い込みから発生します。喉つまりによる窒息死を防ぐためには、本人の自覚のみならず、身近な人のサポートが必要です。消費者庁では次のように呼びかけています。



  • ●冬の寒い朝の一口目には十分注意が必要です! 朝起きてすぐには口の動きもスムーズではありません。また寒い時期は温かい餅でも食べている間に硬くなりやすくな っています。餅をしっかりかんで食べられるように、食事の前に会話をすることなど口の準備運動をしたり、スープ等の滑らかなもので喉を潤してから食べましょう。
  • ●餅を小さくするだけでなく、さらに口の中でよくかんで食べてください!せっかく小さく切った餅もそのまま飲み込んでしまっては、餅が喉の中で再びくっついてしまうこともあり、小さくした効果が 十分生かせません。少な目の量を口に入れ、餅に唾液を十分含ませられるよう、しっかりと噛んで食べましょう。
  • ●口の中の分が飲み込めてから次の一口を!しっかりかんだ後、口に入っている分が飲み込めてから次の餅や他の食べ物を口の中に入れましょう。よくかまないうちにお茶等で流し込んではいけません。

引用:消費者庁「高齢者の餅による窒息事故に気を付けて!」


http://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_safety/release/pdf/131218kouhyou_1.pdf



喉を詰まらせた場合の対応


食事中にぐったりしていたり、寝ている状態で吐いていたら、喉を詰まらせていることが考えられます。対応として「大声で応援を呼ぶ」「救急用の器材を用意する」「遺物を除去する」の3つが原則になります。反応がある場合は、遺物の除去を行います。救急隊の到着まで次のような応急処置を行います。



■背部叩打法


喉に詰まったものを、背中を叩いて吐き出させる方法です。


①座っている場合は、後ろ側から左手で対象者の胸または下顎を支え、前かがみにします。
②倒れている場合には側臥位で寝かせて自分の足で支えます。
③対象者を支えている手とは逆の手の付け根(手根部)で、対象者の肩甲骨と肩甲骨の間を強く何度も叩きます。



■ハイムリック法


上腹部を圧迫して詰まったものを吐き出させる方法です。
①患者の後ろに回り、ウエスト付近に手を回します。
②一方の手でヘソの位置を確認します。
③もう一方の手で握りこぶしを作って、親指側を、相手のヘソの上方で、みぞおちより下方に当てます。
④ヘソを確認した手でこぶしを握り、すばやく手前上方に向かって圧迫するように突き上げます。

腹部突き上げ法を実施した場合は、腹部の内臓を傷める可能性があるため、救急隊にその旨を伝えるか、すみやかに医師の診察を受けさせてください。



■心肺蘇生


反応がないときはAEDなどを使って心肺蘇生を行います。心肺蘇生中に異物が見えた場合は、それを取り除きますが、そうでない場合は口の中に指を入れたりしないよう注意してください。

出典:日本医師会 救急蘇生法
https://www.med.or.jp/99/kido.html



年末年始は十分な注意を


餅や普段と違う食事を食べる機会の多い年始は一年の中でも窒息死が一番多くなります。提供する食事や、喉つまりについて今一度対策を見直してください。



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■著者■ 
吉田 匡和
介護ライター
福祉業界では20年のキャリアを誇り、福祉系専門学校教職員、老人保健施設相談支援員、特別養護老人ホーム・デイサービスセンター生活相談員、特別養護老人ホーム事務長として勤務。退職後はフリーライターとなり、WEBを中心に活動している。社会福祉士、介護支援専門員、福祉住環境コーディネーターの資格を保有。
HP:https://buleorca.webnode.jp/

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