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公開日:2018年12月19日

「離職者の52%が条件次第で復帰を希望」大手シンクタンクが調査結果を公表

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吉田 匡和(介護ライター)

2018年12月6日に「ベネッセ シニア・介護研究所」と「株式会社パーソル総合研究所」は、介護人材の定着・離職の実態調査の結果を公表しました。調査から介護職の31%が入社1年未満に離職していることや、離職者の 55%が業界外に流出していること、離職者の半数以上が条件次第で復帰を希望していることなどが分かりました。現在の政策と照らし合わせて、離職の課題を整理しました。


給与の安さと将来への不安が退職理由


ベネッセ シニア・介護研究所とパーソル総合研究所は、介護業界の現場職を過去10年以内に離職した1,600人(20~65歳) を対象に離職理由を調査しました。アンケート結果をもとに、介護人材の成長とキャリアの観点から定着・離職のポイントを分析しています。対象者は「新卒(10%)」「他業種から中途入社(59%)」「他の介護業種から中途入社(31%)」です。

「介護職の全体流出像」を見ると、離職者の31%が入社1年以内に退職していることが分かりました。離職者の45%が同業他社に転職しているものの、他業種に転職した人は35%を占め、「無職」も合わせると55%の割合が介護の仕事に見切りをつけています。離職の理由は「給与が低い」は全体平均値21.3%(1年未満19.2%、1~5年未満23.4%、5年以上19.3%)ともっとも高く、「キャリアの見通しのなさ」が17.3%(1年未満13.7%、1~5年未満19.4%、5年以上17.7%)と続いています。

厚生労働省は社会保障審議会で、勤続年数10年以上の介護福祉士などに月額8万円を支給する処遇改善案を示していますが、同じ施設に10年も勤務している人は稀であり、対象者は少数に過ぎません。また改善の目的を「介護職の年収を全産業平均の440万円以上とする」と発表したことから、現場では「10年働いてやっと人並みの所得」という落胆の声も上がっています。



職場内でのコミュニケーションが離職を防ぐ鍵となる


調査では職場内の人間関係にも焦点が当てられています。相談相手がいない場合の退職率は相談相手がいる場合と比較して、給与の不満を理由に退職した場合で1.7倍、キャリアの見通しのなさによる理由で退職した場合で1.9倍高くなっているなど、相談相手がいない場合に離職者の割合が上昇することもわかりました。

チームケアが重視される介護の仕事は、孤立した状況では心身の負担が大きくなります。励まし合える仲間や、親身に悩みを聞いてくれる上司の存在は不可欠です。そうした配慮が微力ながら退職を引き留める要因になっていることが、調査結果に表れています。



離職者の52%が条件次第で「介護職復帰可能」と回答しているが・・・


介護業界で働いていない元介護職のうち、52%の人が「条件によってはまた介護業界で働きたい」と回答しています。介護職に戻る条件として、「給与・報酬の改善(51.2%)」が半数以上を占め、「時間に合わせて柔軟に働けたら(32.2%)」「自宅の近くに職場があるなら(30.4%)」「身体的に楽な仕事だったら(27.6%)」「職場の人間関係がよくなったら(26.9%)」と続きます。

介護分野の人手不足解消のため、国は2017年4月に介護福祉士の復職支援策として、仕事を辞めた介護福祉士の登録度を導入しました。離職した介護福祉士は、連絡先や希望する勤務条件を各地の社会福祉協議会が運営する「福祉人材センター」に届け出ることが努力義務とされています。
登録者には求人情報のほか、介護に関する研修など、再就職に向けた情報がメールなどで提供される仕組みですが、2018年3月現在の登録者数は全国で5,700人ほど。離職者のわずか1割と低迷しています。「条件によっては介護職として働きたい」と思っている人が半数以上もいる一方で、希望とマッチしない条件が復職を遠ざけているようです。



退職率の高い事業所の共通点


離職率が高い事業所は、求職者にマイナスのイメージしか植え付けません。また求人サイトやハローワークに常に求人を出すことで「定着率の悪い事業所」と判断されてしまい、「求人を出すことで余計に人を遠ざける」という負のスパイラルに陥ります。人材が定着しない事業所は、次のような共通点が見られます。

  • ●給与が著しく低い
  • ●昇給の見込みがほぼない
  • ●残業手当など法定の賃金が支払われていない
  • ●長時間の残業が常態化している
  • ●人間関係が非常に悪い
  • ●極端なワンマン経営
  • ●会社が脱法行為をしている



人が離れていく理由と向き合う


長年「介護は心で行う」というボランティア精神が押し付けられていました。完全たるビジネスに転換された現在でも、「奉仕の心」が都合のいいように使われ、結果として介護職の離職を招いています。人が離れていくには、何か理由があるはずです。その理由を本人だけのせいにせず、しっかりと精査し、改善していくことが必要です。介護の人手不足は今後も深刻になります。せっかく集まった人材を流失させないよう対策を立ててください。



出典:ベネッセケアスタイル ニュースリリース


https://www.benesse-style-care.co.jp/lab/news/docs/20181206_release.pdf



■著者■ 
吉田 匡和
介護ライター
福祉業界では20年のキャリアを誇り、福祉系専門学校教職員、老人保健施設相談支援員、特別養護老人ホーム・デイサービスセンター生活相談員、特別養護老人ホーム事務長として勤務。退職後はフリーライターとなり、WEBを中心に活動している。社会福祉士、介護支援専門員、福祉住環境コーディネーターの資格を保有。
HP:https://buleorca.webnode.jp/

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