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公開日:2018年11月29日

「来年度実施? 外国人新在留資格のポイント」

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吉田 匡和(介護ライター)

慢性的な介護士が不足する中、国は2019年4月に新たな在留資格「特定技能」の導入を予定しています。対象14業種のうち、外国人受け入れ見込み数が最も多いのが介護で、2019年度に5千人、同年度から5年間に5万~6万人の受け入れを予定。深刻な人手不足の改善につながると期待されています。



慢性的な介護人材不足


厚生労働省の推計によると、25年度には介護人材が約34万人不足することが予測されています。労働条件に賃金が見合わないことや、複雑な人間関係が敬遠され、介護福祉士を養成する専門学校や大学などの「介護福祉士養成校」は、軒並み入学者数を減らしています。2017年12月の調査では、全産業の有効求人倍率1.52倍に対し、介護分野の求人倍率は4.22倍もの高倍率。東京都に至っては有効求人倍率7.18倍となるなど、早急な人材確保が求められています。

国は日本人で補うことができない介護労働を「外国人」に求め、2017年11月に「外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律」を施行し、技能実習生の受け入れを開始しました。同省は「約16%の施設が外国人材活用を希望している」との調査結果に基づき、外国人労働者の受け入れ対象施設が約11万3千カ所になると想定。2019年4月に新たな在留資格「特定技能」を導入し、同年度から5年間に5万~6万人を受け入れる予定です。新たな在留資格の創設について、各団体は「深刻な人手不足の改善につながる」と期待しています。



新在留資格の一番のポイント


新しく創設される在留資格のポイントとして、「特定技能」で事実上永住が可能になったことが挙げられます。これまで行われていたEPA (経済連携協定)は、「日本の技術を学び、祖国で生かす」という目的があったため、労働力として期待することができませんでしたが、新在留資格は、「介護分野において就労目的での入国が可能」、「介護分野での就労を続けることにより事実上永住が可能」など、長期就労が可能になりました。



■ これまでの外国人介護労働者の受け入れ方法


技能実習制度 在留資格(介護) 経済連携協定(EPA)
制度の開始 平成29年11月 平成29年9月 平成20年7月
内容   発展途上国への介護技術移転 介護専門技術人材の受け入れ 経済活動の連携  
人材要件 自国で介護または類似業種の経験がある18歳以上 留学生として介護福祉士養成校に通い、資格を得た者 インドネシア、フィリピン、ベトナムの看護学校卒業生等
在留期間 最長5年(更新不可) 最長5年(更新可) 4年中に資格を得れば最長5年(更新可)
職場制限 訪問系は不可。有料老人ホームは部分可。 原則制限なし 訪問系は資格取得者の身


新在留資格の創設で何が変わるのか


これまでと比較すると、現状の技能実習制度や在留資格で曖昧だった外国人の扱いを「労働者」としている点が異なります。かつては労働法が適用されず、劣悪な労働環境が社会問題になりましたが、今後は法律が厳しく適応されます。

在留資格は日本国内の介護福祉士養成校への留学が前提となります。渡航費や学費、家賃や生活費など留学のためには莫大な負担を生じますが、留学生に対し奨学金制度を創設する市町村も現れ、介護福祉士を養成する専門学校や大学に2018年4月に入学した外国人留学生は1142人と前年から倍増。入学者の6人に1人を外国人が占めています。



■ 新在留資格「特定技能」の検討案


  特定技能1号 特定技能2号
分野 農業、介護、飲食料品製造業、建設、造船船用工業、宿泊、外食、漁業、ビル清掃、素形材産業、産業機械製造、電子・電気機器、自動車整備、航空(14分野)
条件 相当程度の知識・経験 熟練技能
日本語 生活に支障ないレベル 高度なレベル
在留期間 最長5年 事実上永住可能
家族の帯同 不可


技能実習生は3年の経験により無試験で特定技能1号の資格を得ることができます。技能実習5年+特定技能5年、合計10年間日本で介護就労することが可能です。この間に特定技能2号の認定を得ることで事実上永住することができます。



新在留資格の課題


新たな労働力として期待される外国人労働者ですが、以下のような問題が山積しています。代表的な例をピックアップしました。



■ 効果測定が十分に行われていない!


介護の在留資格や技能実習を開始してから新資格創設まで1年しか経過しておらず、その影響や効果が十分に検証されていません。外国人介護職が配置されている施設が少ないことから、業務の遂行や日本人職員との関係がスムーズに行くのか、不安の払しょくに至っていません。



■ 介護職の賃金アップに結び付かない?


日本人介護士の中から「十分な賃金が保障されていない中で外国人労働者を大量に受け入れると、報酬の引き上げが鈍化する」という声が上がっています。また在留期間が5年に限られていることから、外国人の報酬についても「一時的な安い労働力と位置づけられるのではないか」という懸念も持たれています。これに対し国は「もともと人手不足の業界であり、外国人を受け入れても労働力過多になることはなく、報酬が据え置かれることはない」というニュアンスのコメントを述べています。



■ 言葉の壁が克服できない!


EPAの介護福祉士候補者に求める日本語能力は、日常的な場面で使われる日本語の理解に加え、より幅広い場面で使われる日本語を理解することができる「N2」以上であったのに対し、新資格には政権内や介護付きホーム協会などから、「多くの外国人に来てもらうため、求める日本語能力の水準は低く設定するべき」との意見が出されています。介護にはコミュニケーションが大切です。ハードルを低くすることで一時的な人材確保ができたとしても業務を継続することは難しく、結果として施設側・外国人側のメリットにならないことが十分に予想できます。



採用にはマッチングが大切


新たな在留資格の創設は人材確保が目的ですが、たくさん人数を集めれば、よい介護ができるわけではありません。また、よい人材であっても適切なコミュニケーションが取れなければ十分に力を発揮することができないでしょう。日本で働く多くの外国人は大きな決心のもと、祖国を離れています。単なる労働力として採用するのではなく、そうしたバックボーンに配慮したうえで「志を共にする仲間」として迎えてください。


■著者■ 
吉田 匡和
介護ライター
福祉業界では20年のキャリアを誇り、福祉系専門学校教職員、老人保健施設相談支援員、特別養護老人ホーム・デイサービスセンター生活相談員、特別養護老人ホーム事務長として勤務。退職後はフリーライターとなり、WEBを中心に活動している。社会福祉士、介護支援専門員、福祉住環境コーディネーターの資格を保有。
HP:https://buleorca.webnode.jp/

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