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公開日:2018年10月16日

健康な体作りは健康な歯から「口腔ケアの重要性を広める歯科衛生士の活動」

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吉田 匡和(介護ライター)

元気な体を作るためには食事が大切。おいしく食事をいただくためには、歯が健康でなくてはなりません。口腔ケアをすることで、口の中を清潔にするだけでなく、歯や口の疾患を予防し、口腔の機能を維持することで老化や認知症の防止など、全身的な健康維持に役立ちます。「最期まで口から『食べる』を支えたい」と、全国でも珍しいフリーの歯科衛生士として活動する女性がいます。活動内容と介護現場における口腔ケアの重要性を伺いました。





フリーとして適切な口腔ケア普及を目指す


札幌市を拠点として、高齢者における口腔ケアの重要性を伝えているのは、高齢者の口腔ケア専門歯科衛生士の村尾瞳さん。全国でも珍しい歯科医院に所属しないフリーの歯科衛生士として活動しています。「もっと多くの人に口腔ケアを普及させ、誤嚥性肺炎の発症数を減らしたい」との思いが、独立開業を後押ししました。フリーにとして活動している理由を、こう説明してくれました。

私は訪問歯科医の歯科衛生士として約10年介護施設、病院、在宅などで口腔ケアの仕事に携わってきました。施設で生活している高齢者の多くは、ご自身で口腔管理が行えないので、介護者による援助が必要になります。近年では、口腔ケアの重要性が認識されるようになり、誤嚥性肺炎の予防だけでなく、全身疾患の改善や健康増進のための一環として考えられるようになってきました。しかし何度も誤嚥性肺炎で入退院を繰り返す高齢者は後を絶ちません。それだけに他人の口の中を清潔にするのは難しいと思いました。

日本の口腔ケアの第一人者である米山武義先生の検証によると、週一回衛生士が口腔ケアを実施した人と、何もしない人を比較すると、誤嚥性肺炎の発症率が40%減少したと発表しています。最初は「40%も!」と思いましたが、介護職員が基本的な知識・技術を身に付けることにより、高齢者の負担が少なく、短時間で効率的な口腔ケアができ、誤嚥性肺炎などで苦しむ高齢者が減少すると考え、フリーとして口腔ケアの普及活動に取り組むようになりました。



口腔ケアの意義


生き物は、何かを食べることで生命を維持しています。そのためには「噛む」ことが必要であり、噛むためには健康な歯を維持しなくてはなりません。咀嚼には、口に入れた食物を切断、破砕し、唾液と混ぜ合わせる消化作用があるほか、食物として異物であると感じた場合には反射的にそれを吐き出す防御反応にもなり、誤嚥を防ぐことにも繋がります。

噛む力が低下すると、顎が小さくなったり、歯並びが悪くなるため、清掃が難しくなり、虫歯を誘発する原因になります。また、噛む行為によって脳や身体に刺激を与え、脳の発育を促進させたり、脳の老化を防いだりするため、歯がなくなると咀嚼能力の低下や発音障害を生じるだけでなく、食欲が低下し、それによって脳に対する刺激が減り、結果として認知症へと繋がります。

口腔内細菌と内科疾患との関連、咀嚼機能と老化・認知症の関連など、口腔環境が高齢者の全身の健康と密接に関連しています。口の中の細菌が関与すると考えられる代表的な全身疾患は下記のとおりです。

1.誤嚥性肺炎
2.感染性心内膜炎、敗血症
3.虚血性心疾患
4.糖尿病

適切に口腔ケアをすることで、むし歯や歯周病などの歯科疾患やカンジダ性口内炎などの口腔感染症を予防できます。また、咀嚼機能の改善や、摂食・嚥下障害の改善、口腔機能の低下や廃用症候群の予防になるほか、経口摂食を促し、低栄養や脱水を防ぐことで、体力回復や意欲向上、全身状態の改善も期待できます。さらに構音機能の維持・回復によりコミュニケーションを円滑にできるなど、生活の質の向上も図れます。

全身状態の改善は、トータルに介護量を削減。施設の生産性を向上させ、予防効果による医療費の削減につながるなど、社会的経済効果も生み出します。



口腔ケアの効果


現在、村尾さんは、介護施設などで誤嚥性肺炎の予防を目的とした研修会の開催や、誰が行っても適切な手順で口腔ケアができるように、介護職員などへの助言やアドバイスを行っています。すでに歯科医院と業務提携していることから、有料講習に難色を示す施設は少なくないものの、「歯科外来や訪問診療では時間的な制限があり、歯科医師や歯科衛生士に指導を受けにくい」と、自らのスキルアップのために個別指導を希望する介護職員が、村尾さんのもとを訪れています。

「寝たきりで唾液分泌が少なくなり、いつも口が乾燥している高齢者に対して正しい口腔ケアを行うことで、口の中の雑菌が減少し、口臭が気にならなくなった方や、歯磨きの度に歯茎から出血が見られた方に、適切な磨き方を伝えることで出血が止まったなど、実感できる効果が出ている」と言います。

現在、札幌近郊を中心として活動していますが、地方によっては歯科衛生士がいず、歯科医師が忙しくすべての治療をこなしていることも少なくないといいます。「今後は、そうした地域においても、口腔ケアの重要性を広めていきたい」と展望を述べてくれました。



■著者■ 
吉田 匡和
介護ライター
福祉業界では20年のキャリアを誇り、福祉系専門学校教職員、老人保健施設相談支援員、特別養護老人ホーム・デイサービスセンター生活相談員、特別養護老人ホーム事務長として勤務。退職後はフリーライターとなり、WEBを中心に活動している。社会福祉士、介護支援専門員、福祉住環境コーディネーターの資格を保有。
HP:https://buleorca.webnode.jp/

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