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公開日:2018年10月16日

介護保険外サービスにも対応「美容の力で心を満たすビューティーセラピー」

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吉田 匡和(介護ライター)

介護の世界では、よくQOLと言う言葉が使われます。Quality of lifeの略語で、「生活の質の向上」などと訳されています。介護施設では、食事・入浴・排せつなどの身体介護だけでなく、その人らしい生き方を尊重することも求められます。

「高齢者の方や介護が必要な方に、一日でも長く笑顔でいてほしい」と、美容療法を行う団体があります。「一般社団法人 日本介護美容セラピスト協会」に話を伺いました。



一般社団法人 日本介護美容セラピスト協会とは


1995年に同協会の前身団体が化粧品会社を母体に「化粧療法」を開始。ボランティアとして高齢者施設などを訪問し、メーキャップやマッサージなどを実施していました。高齢者施設は外出の機会が少なくオシャレをする機会に恵まれませんが、久しぶりのメイクに女性利用者が大変喜ばれ、普段ふさぎ込みがちな方も他の利用者と化粧を褒め合うなど、職員が驚くほど活発にコミュニケーションを取っていたといいます。




のちに大学などの研究機関との協力のもと、単にきれいになるだけではなく、美容療法を行うことで対象者の心身の変化について、エビデンスをとることに発展。1997年には、「老齢夫人に対する化粧療法の免疫機能の影響」を日本免疫協会に発表し、2013年に要支援・要介護者の生活・美容意識調査を実施するなどの実績を積みます。九州地方の教育機関との協力が多かったことから、九州の経済産業局の助言があり、2014年に日本介護美容セラピスト協会を設立。ボランティア団体から正式な事業に変更されました。



医療・介護従事者が大きな関心を寄せている


おもな事業内容は、ビューティータッチセラピストの育成です。講座を受講し、高齢者の皮膚や身体の知識、福祉用具や介護の知識など、高齢者に関する美容知識と技術、接遇を学び、同協会が実施する検定試験に合格することで、資格が得られます。美容関係だけでなく、社会福祉協議会や看護師、介護職員など、医療・福祉職も多く資格を取得していると言います。

その理由について同協会の野村佳一郎氏は、「社会福祉協議会の職員の方は、地域のイベントで高齢者に喜んでいただくために、セラピー活動を活性化していきたい」と希望され、高齢者施設に勤められている方は、「他にはないサービスであり、施設の特色にしたい」または、「高齢者に関わる仕事をするうえで、一つのスキルとして習得したい」などの理由から資格を取得されているといいます。

セラピストに目覚めた介護職員が、「セラピストに集中したいので施設を退職したい」と申し出たところ、「退職せずに、施設専属のセラピストになってほしい」と慰留されたケースもあるそうです。

同協会では『触れるケアは、自然体のリハビリ』と考え、スキンケアやメーキャップを通して肌に触ることで、要介護・要支援の高齢者はもちろん、元気な高齢者の「心」「脳」「体」「肌」に働きかける美容療法と説明しています。ハンドセラピーやフットセラピーを受けることで血流やリンパの流れを促し、むくみが改善。皮膚の温度が上昇し、筋肉の緊張が緩和されることで、質の良い睡眠が得られます。



美容療法の効果


セラピーはセラピストとマンツーマンで行われるため、言葉を交わす機会も増えます。自然にリラックスしていくことで不安や恐怖が少しずつ緩和され、抑うつ感情が軽減していきます。筆者も実際にハンドセラピーを行ってもらいましたが、普段から酷使している右手をいたわってもらっているようで、とても心地よく感じました。

一番効果が分かりやすいのが、メーキャップセラピーです。内閣府が平成26年に発表した「高齢者の日常生活に関する意識調査」によると、おしゃれについての関心を問う質問で、1994年には「積極的におしゃれをしたい(8.0%)」「ある程度おしゃれがしたい(40.6%)」と回答していたのに対し、2014年では「積極的におしゃれをしたい(8.0%)」「ある程度おしゃれがしたい(61.1%)」となり、おしゃれに対する関心が年々上昇していることが分かりました。

野村氏はメーキャップセラピーの様子をこう語ってくれました。「施設でメイクを終えた方が、自分の部屋と反対方向に向かわれたので、介護士の方が『お部屋は逆ですよ』と呼び掛けたところ、『きれいになったから、リハビリスタッフにも見てもらうんだ』と嬉しそうに笑っていた」と言います。普段あまりコミュニケーションを取らない利用者同士が、お互いの化粧を褒め合う場面も見られたと言います。

ご婦人が集まれば、服やバッグ、髪形などを褒め合うのはよく見る光景です。残念ながら施設ではオシャレをしても出かけることもできず、褒めてくれる人もいないため、無頓着にならざるを得ないと言うのが実情でしょう。入所施設に必要なのは、体操や輪投げなどのレクリェーションでも、毎日の豪華な食事でもなく、「これまでどおりの日常」なのです。



厚生労働省が公的保険外サービス事例として紹介


本事業は、厚生労働省が公表している「公的保険外サービス参考事例集」に紹介されています。施設の職員などが有資格者でなくても、有料でセラピストを派遣しています。デイサービスにおいては、きれいな姿で帰宅する喜びや、入所施設においては外出行事や、家族と出かける前にメイクを施すことで、利用者の気持ちが高まることでしょう。

同協会では現在1400人が資格を取得し、いずれは3000人規模に拡大したい考えです。2018年10月現在、山形県、群馬県、栃木県以外の都道府県にセラピストがいるそうなので、関心がある方は、日本介護美容セラピスト協会にお問い合わせください。

● 公的保険外サービス参考事例集(厚生労働省)
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-12300000-Roukenkyoku/guidebook-zentai.pdf



■著者■ 
吉田 匡和
介護ライター
福祉業界では20年のキャリアを誇り、福祉系専門学校教職員、老人保健施設相談支援員、特別養護老人ホーム・デイサービスセンター生活相談員、特別養護老人ホーム事務長として勤務。退職後はフリーライターとなり、WEBを中心に活動している。社会福祉士、介護支援専門員、福祉住環境コーディネーターの資格を保有。
HP:https://buleorca.webnode.jp/

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