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公開日:2018年10月10日

福祉避難所の現状と福祉施設の役割 後編

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吉田 匡和(介護ライター)

地震や台風などによる災害は、もはや日本中で起こることが想定されており、高齢者や障害者が安心して暮らすためには、福祉避難所が担う役割が大きくなります。しかし日本で初めてブラックアウトを引き起こした胆振東部地震で、札幌市が福祉避難所を開設しながら公表しなかったことが問題となりました。なぜ福祉避難所はスムーズに機能しないのか。その理由を探るとともに、課題を整理しました。(後編)



福祉避難所の運営状況


内閣府が2015年に実施した「福祉避難所の運営等に関する実態調査 (福祉施設等の管理者アンケート調査)」によると、『災害時に予定している避難者の受入れ規模(現在の入所者を含めた人数)』の質問で最も多かった回答は、「1~40人」、2番目に多かったのは「81~160人」でした。

受け入れ規模数には現在の入所者を含めた人数が反映されており、外部の避難者をどれくらい受け入れられるかわかりませんが、入所定員100人の施設が「160人受け入れられる」と回答している場合、その施設に60人もの人が避難することになります。

福祉避難所として利用するスペースで最も多かったのが「共有スペース」であり、679 施設でした。次いで「会議室(401施設)」、「食堂(324施設)」の順になりますが、それらのスペースに、どれだけの人が受け入れられるのか疑問です。

また、『要配慮者に対して情報を提供する際の伝達手段』を問う質問では、2000施設中、223施設が「いずれの伝達手段も用意していない」と回答。『災害時の施設利用に関して、自治体との協定で締結している内容』の質問については、『特に締結していない』と回答する施設が292施設もあるなど、指定は受けているものの、あまり本気で取り組んでいない施設が存在していることが判明しました。

出典: 内閣府 福祉避難所の運営等に関する実態調査


http://www.bousai.go.jp/taisaku/hinanjo/pdf/fukushi_kekkahoukoku_150331.pdf


福祉避難所を開設した際の対応

岩手県立大学地域政策研究センターは、平成24年度地域協働研究(地域提案型)「東日本大震災津波における福祉避難所の状況と課題についての調査研究報告書」において、福祉避難所を開設した際の対応を公表しています。「物資の確保」、「ライフラインの途絶」、「人的体制」の3点をまとめました。



1 物資の確保


東日本大震災においては、食料だけでなく燃料や医薬品、介護用品、寝具等の確保が重要かつ困難な問題となりました。地域の商店や農家だけでなく、被害の少なかった内陸部まで出かけて最低限の物資を調達したり、市町村からの配給までは、近隣の住民や避難者家族、職員からの供出もあったそうです。



2 ライフラインの途絶


電気、水、通信手段が途絶したため、暖房、トイレ等に問題が出ました。東日本大震災はまだ寒い3月11日に発生したため、暖房は電池式の反射式ストーブを調達したと報告されています。胆振東部地震があった北海道では、冬に電気の供給量が上昇することから再び停電が懸念され、反射式ストーブが飛ぶように売れています。



3 人的体制


入所施設においては本来業務の利用者の介護に加え避難者の介助等が 24 時間体制で行われました。そのため職員の勤務は過重となり、外部の支援を得る必要があったといいます。利用者の健康管理も大きな問題となり、介護や医療・保健の専門職のほかボランティアの支援が必要となりました。



福祉避難所運営に関する課題


実際に福祉避難所を開設した施設から下記のような要望が出されています。



1 物資の備蓄とその仕組み


食料や燃料、医薬品等について備蓄が必要。個々の施設等が行うにはスペースを含め限界があるため、市町村が中心となり地域的な体制を作る必要がある。



2 避難者の属性ごとの課題


認知症高齢者への対応、精神障害者の医療等の確保、難病患者についてのケア方法等の習得や器具等の確保、乳幼児について離乳食やミルク等の調達、重い障害者等への食事提供における配慮など。



3 支援人材を確保する仕組み


災害の規模が大きい場合、市町村や広域圏を超えた全県、県外からの人材確保が必要。県が中心となり仕組みを検討すべき。



4 事前指定を受ける場合必要なこと


物資の備蓄等は地域における仕組み、建物については避難場所となるスペース(交流室等)や備蓄倉庫、発電機の整備に対する支援、人的支援の体制構築、行政との連絡体制の確保(行政職の常駐等)、費用面では職員の超過勤務等への確実な補填など。



※岩手県立大学地域政策研究センター平成 24 年度地域協働研究(地域提案型)「東日本大震災津波における福祉避難所の状況と課題についての調査研究報告書」から引用


http://www.pref.iwate.jp/dbps_data/_material_/_files/000/000/012/354/gaiyo.pdf



福祉施設には公共機関としての役割がある


熊本地震や今年7月の西日本豪雨でも、指定事業者に福祉避難所の認識が薄いため、福祉避難所が設置されなかったことや、利用者が福祉避難所の存在を知らずに一般の避難所で不便を強いられたことが問題となりました。

福祉避難所に指定されている社会福祉法人などは、税制優遇を受けた公共機関です。災害は突発的に起るものであり、協定を結んだだけで実際にそのとおりに動けるかどうかの検証が終わっていなければ意味がありません。過去の事例を教訓とし、地域に住む高齢者や障害者の安全を確保するなど、地域福祉の一端を担ってください。

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■著者■ 
吉田 匡和
介護ライター
福祉業界では20年のキャリアを誇り、福祉系専門学校教職員、老人保健施設相談支援員、特別養護老人ホーム・デイサービスセンター生活相談員、特別養護老人ホーム事務長として勤務。退職後はフリーライターとなり、WEBを中心に活動している。社会福祉士、介護支援専門員、福祉住環境コーディネーターの資格を保有。
HP:https://buleorca.webnode.jp/

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