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公開日:2018年9月27日

高齢者がキレる3つの理由と解決方法

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吉田 匡和(介護ライター)

「キレる」と言えば、素行の悪い若者に使われる言葉でしたが、近年は高齢者に用いられることが多くなりました。それを裏付けるように65歳以上の高齢者犯罪の検挙数は、ここ10年で傷害は9倍、暴行は48倍にも増加しているといいます。なぜ高齢者は荒ぶるのか。事例をもとに高齢者がキレる要因と対策を検討しました。



高齢者によるトラブルが増加


年を取るとともに性格が穏やかになるのは昔のこと。電車で席を譲られたことに「年寄扱いするな」と怒鳴ったかと思えば、誰の場所とも決まっていない席に座っている者に「俺の席だから立て」と強要。はたまた優先席があるにも関わらず一般の席を乗車予定の友人の分まで席を確保するなど、高齢者の常識を逸脱した行動がSNSなどで話題となりました。

乗り換え案内サービス「駅すぱあと」を提供するヴァル研究が2016年に行った調査によると、トラブルを避けるために席を譲るのをやめた人が前年に比べて17%も減少したと言います。日本民営鉄道協会のまとめによると、2016年度に発生した駅員などに対する暴力行為の2割が60代以上となっています。

兵庫県加古川市では、たばこのポイ捨てを注意されたことに逆上した75才の無職男性が、小学1年生の男児の首を絞めて逮捕される事件が発生するなど、一部の高齢者の行動が社会問題になっています。



高齢者がキレる3つの理由


高齢者がキレる理由はいくつかあります。第一に脳機能の障害です。意欲や感情は、脳の中心部にある大脳辺縁系で作られていると言われています。高齢になると、それをコントロールする前頭葉の機能が衰えるため、感情の高ぶりを抑えられなくなります。本人は脳の衰えを自覚していないため、「なぜ俺の言っていることが分からない」と、さらに暴走します。

第二に、介護は必ずしも自分が思ったような対応を行ってもらえるとは限りません。シーツにしわが残っていたり、靴下のかかとの位置がずれているなど、小さなことが不快な思いに繋がります。そうしたことが積み重なるとイライラが増し、認知症の方の中には声を荒げたり殴ったり杖でたたいたりと、暴力行動に出ることもあります。

第三に、プライドの問題が挙げられます。現役時代に要職についていた人でも、会社の看板が外れた今は普通の高齢者です。その事実を受け入れられず、現役当時と同じく威厳を保ち続けようとしますが、周囲はただの年寄としてしか扱わず、そのギャップに怒りがこみ上げるようです。



キレる高齢者の実際


筆者が過去に勤務していた特別養護老人ホームでも「キレる」利用者がいました。仮にS氏と呼びます。地元の要職に就かれていた方で、職場でも家庭でも絶対服従を貫き、気に入らないことがあると妻を怒鳴り散らし、殴りかかるなどのDVも日常茶飯事だったようです。介護が必要になってから思うように体が動かないことにイライラを募らせ、妻への風当たりが更に強くなり、見かねたケアマネジャーが施設入所を勧めたと言ういきさつがありました。

S氏の要求は予想通り大変なもので、「足を冷やせ」「熱い」「ぬるい」「俺が呼んだらすぐに来い」「俺はもう直ぐ死ぬから早く家に連絡しろ」と、日常的に横暴な態度が見られました。いつも怒鳴り散らされる介護職員もたまったものではありませんが、家で生活しているときは毎日妻がその役を担っていたので、施設で暮らしてもらうほかありません。

行動が段々とエスカレートし、介護職員に対していきなり殴りかかる、杖を振り回す、女性と見れば職員だろうが、高齢者だろうが卑猥な言葉を浴びせ、「子供を作ろう」と言って自分の部屋に引っ張り込もうとしたり、股間を触らせたり、下着を換えているときに頭を抑えつけるなど、やりたい放題の行動が見られるようになってきました。

行動の理由を聞いても「俺の意思に従うべきだ」「俺に逆らって生きていけると思うなよ」と怒鳴るだけ。挙句の果てには「世間は少子化傾向にあるので、俺が子供を作ってやる。邪魔するな」と理解できないことを言います。

S氏の成育歴や症状は、前述した「高齢者がキレる3つの理由」に当てはまっていました。
結論として家族と相談のもと精神科を受診。しばらく入院した後、薬を調整してもらい落ち着くようになりました。



介護と医療の連携を!


「怒鳴る」と言う行為は、自分が偉い、自分が正しいと思っていなければできない行為です。しかも高齢者がキレる理由は複合的なため、どこでスイッチが入るかわからず対応が難しいものです。

精神科と言う言葉に過敏に反応する家族や介護スタッフもいますが、ケアの力だけでは解決できないことがあるのは事実です。「キレる」と言う行為は、周囲に迷惑をかけるだけでなく、本人の孤立を招きます。本人に自覚がない以上、それに気づいた者が対応する必要があります。抽象的なイメージにとらわれず、明らかに精神障害がある場合は、専門医を受診して適切な治療を受けさせてあげてください。



■著者■ 
吉田 匡和
介護ライター
福祉業界では20年のキャリアを誇り、福祉系専門学校教職員、老人保健施設相談支援員、特別養護老人ホーム・デイサービスセンター生活相談員、特別養護老人ホーム事務長として勤務。退職後はフリーライターとなり、WEBを中心に活動している。社会福祉士、介護支援専門員、福祉住環境コーディネーターの資格を保有。
HP:https://buleorca.webnode.jp/

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