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お客と共にある店|笹井清範の「本日開店」

2017年8月3日


制作:月刊「商業界」編集長 笹井清範

「お客様と何度も何度も試食をして、とっても美味しい茎みょうがのピクルスができました」
早稲田大学に隣接した商店街にあり、産地直送の生鮮品から調味料などを扱う食料品店「こだわり商店」の店頭には、いくつかの「お客様と~」で始まるPOPがあります。
それは、お客さんと一緒に商品を開発していることの証なのです。

その一つが冒頭のみょうがの茎のピクルスです。
きっかけは店主の安井浩和さんが高知県を訪れた折、道の駅でみょうがの茎が山積みで売っているのを見つけたことでした。
東京では見慣れない食材に、どう食べればいいのかを尋ねたところ甘酢漬けにするとのこと。
しかし、各家庭で漬けるのが一般的で、甘酢漬けとして商品の販売はされていませんでした。

そこで安井さんは地域で一番腕の立つつくり手に商品化を依頼しました。
後日、届けられた試作品をさっそくお客さん30人ほどに試食してもらいました。
すると予想に反して「甘すぎる」と大不評となってしまったのです。
高知県では求められる味が東京では通用しないことに、安井さんが驚きと面白さを感じた瞬間でした。

そこで今度は、お客に試食してもらうたびに「どう改善したら、あなたが買いたい商品になるか」を徹底的に聞き込みました。
味だけでなく、価格、商品パッケージの形状、消費期限まで幅広く意見を求めたのです。

さらに、そうしたお客さんからの情報を包み隠すことなく生産者にフィードバックしました。
すると、大不評だったことには悔しがりこそしたが、消費者の正直な意見を聞きながら商品化に向けて試作を繰り返してくれたのです。

安井さんは、さらに幅広い意見を聞こうと、青果店を経営する4人の仲間で100人ほどお客さんの声を集約。
度重なる試作と試食を繰り返すこと約4カ月、とうとう納得のいくみょうがの茎ピクルスが完成しました。
このように、商品ができ上がる過程を一緒に体験したお客さんが、完成品に強い愛着を持つことは必然です。
結果、クチコミによる広がりも著しく、他にはないオリジナル商品として年間販売数は1000袋となりました。

ヒット商品の芽は
お客との会話にあり

もっとも、お客と一緒にオリジナル商品を開発したとはいえ、すべてが簡単に売れるわけではありません。
「失敗は山ほどあります。でも、売れる努力は必死でします。クオリティの高いオリジナル商品をつくってもらったのに、『売れなかった』のひと言で一度きりで終わらせるのは失礼です。生産者のプライドを傷つけないためにも売れる商品に育てていきます」

15坪ほどの小さな店ゆえ、販売数はそれほど多くはありません。
それでも生産者側はこだわり商店への協力を惜しみません。
それは、同店と一緒に商品開発をすると「お客の顔が見える商品」ができ上がるからにほかなりません。
それゆえ、同店で提案し開発した商品は、生産地の道の駅などでも大きな需要が生まれ、売上げを伸ばしている実績があるからです。

このように、安井さんは今までお客になんでも相談してきました。
2007年の開店当初、店の目指す方向性に迷いが出たときもどうすればいいか聞いたそうです。
そのとき、「私、この商品が好き」という声を集めることで、他に代えがたいオリジナリティあふれる店へと成長してきたのです。

「店とはお客さまの希望を叶える場所。お客さまと共に成長する店でありたいですね」
そう語る安井さんは、お客一人ひとりと会話を交わすことにより、今日もヒット商品の芽を見つけているのです。

詳細は明日8月1日発売の商業界9月号
東京・谷中、一日千杯ものかき氷を販売する「みひつ堂」の人気商品、いちごみるくが表紙です。

※転載元 笹井清範の商人応援ブログ「本日開店」
http://ameblo.jp/19660726/entry-12297422055.html