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公開日:2017年2月2日

楽天と丸紅新電力が連携を強化 そのねらいは?


制作:廣瀬 鉄之介(エネルギー・環境ジャーナリスト)

楽天と丸紅新電力が連携を強化 そのねらいは?

幅広いインターネットサービスを展開する楽天と、新電力第3位の丸紅新電力がこのほど連携を強化することで合意しました。連携強化は、直接的には低圧需要家向けの電力サービスの拡充ですが、そのねらいとしては、4月からのガス全面自由化をにらんだ、総合的なエネルギー事業戦略が垣間見えるようです。両社の総合エネルギー事業にかける戦略を追ってみました。

今年1月に包括連携で合意


楽天と丸紅新電力は1月19日、低圧需要家向け電力と、スマホなど他商材の購入及び利用促進に関する包括連携に合意したと発表しました。両社は2015年9月に電力小売り事業において業務提携をスタートしています。業務提携は、楽天市場の出店事業者や楽天コミュニケーションズと契約している法人などの低圧需要家に対して、取次契約による電力供給サービスを行うものです。需要家に対して楽天は、丸紅新電力から調達した電力を供給します。一般家庭などの低圧需要家向けにはクレジットカードによる電気料金支払いを開始し、「楽天カード」の利用者への特別キャンペーンを丸紅新電力と共同で行います。電力小売り事業においても「楽天経済圏」と同様、共通の会員プログラムを通じて切れ目のないサービス(シームレスサービス)モデルが有効であることを確認するねらいです。

需要家向けサービスを大幅に拡充・強化


そうした従来の両社の提携関係を踏まえ、今回、包括連携に進んだもので、包括連携では、楽天の保有する会員基盤やインターネットサービスと、丸紅新電力の電力事業に関するノウハウ・技術を融合し、需要家向けサービスを大幅に拡充・強化する内容です。

当面、2~5月にかけて電力販売や「楽天モバイル」(格安スマホ)の新規契約拡大のためのキャンペーンを実施します。具体的には、楽天の低圧電力供給サービスをキャンペーン期間中に契約し、さらに、「楽天モバイル」を新規契約・契約中の顧客には、「楽天スーパーポイント」を3000ポイントプレゼントします。また、2~3月に電力購入を契約した顧客に最大2000ポイントをプレゼントします。

法人に有利な「まちでんき」


楽天が販売する電力は、「まちでんき」の名称で供給します。「まちでんき」は、一般住宅や事業所、商店、コンビニ、スーパーなどの小売り・流通事業者などを主な対象としています。ただ、一般家庭などの個人の顧客より、小売り・流通事業者などの法人の顧客の方に、より料金削減効果が大きいといわれます。例えば、電気使用量が1ヵ月600kWhの一般家庭では、東京電力の従量電灯C料金に比べると年間約1万円の削減になるのに対し、1ヵ月800kWhのオフィス、事業所では年間約1万8000円削減されます。さらに1ヵ月1000kWhの飲食店、レストランなど小売り・流通、美容室などの場合は年間約2万5000円の削減幅となります。

電気使用量に応じてポイント付加


「まちでんき」の特徴の一つとして、電気使用量に応じてポイントが付加される仕組みがあります。「楽天スーパーポイント」の名称で、法人の場合、10kWh使用ごとに2ポイント付加されます。個人の場合は1ポイントなので、法人契約では2倍のメリットです。さらに楽天カードで支払いをすると、料金100円ごとに1ポイント付与されます。楽天のポイント制は、楽天経済圏における、一種の「通行手形」のような役割を持ち、電気料金についてもポイント制が適用されというわけです。

楽天、丸紅新電力の今回の連携強化は、直接的には楽天経済圏のビジネス拡充と電力販売のシェア拡大をめざす点に目的があるといえます。楽天経済圏は、楽天グループが提供するさまざまなサービスにより形成されており、顧客の流入拡大や経済圏内でのサービス利用に使われるのが、「楽天スーパーポイント」です。スーパーポイントの対象拡大は、経済圏の拡大をより促進することを意図しているといえます。

電力販売シェア拡大目指す丸紅新電力


丸紅新電力は、楽天との連携強化によって、電力販売シェアの拡大を目指します。丸紅新電力を含めた新電力の電力販売シェアは、従来の大手地域電力会社に比べると11~12%ときわめて低い水準にとどまっています。2016年4月の電力小売りの全面自由化によって、様々な企業が新電力として参入しましたが、販売シェアはそれほど伸びていません。2017年1月17日現在、小売り電気事業者として登録された企業数は374社にのぼりますが、大手地域電力会社に比べると、いずれも企業規模が小さく、大手のシェアを切り崩せないのが現状です。

大手地域電力会社を除く新電力の販売シェアを見ると、2016年9月末の実績では、トップがエネットでシェアは19.2%、F-パワーが11.9%、次いで丸紅新電力の6.1%となっています。丸紅新電力は、電力小売り事業を展開するために、丸紅が2015年11月に、100%出資の子会社として設立した会社です。丸紅グループとしての電力事業は、総合商社の組織力を生かし、1990年代から取組が始まっています。海外での発電所の建設はもちろん、国内でも自前で発電所建設に取り組み、電力会社に電力を販売する独立系発電事業者(IPP)としての事業を展開してきました。

丸紅グループは、これまでに国内を含め、世界23ヵ国において長期にわたり安定的な電力供給体制を構築する一方、発電所の運営などでは、各国でプロジェクトリーダーとして、建設から運転までを一貫して行っています。さらに、風力や太陽光、バイオマスなどの再生可能エネルギー発電事業にも取り組んでいます。同社の発電規模は1000万kW超(2015年12月)と、新電力では国内最大級、総合商社ではトップの地歩を固めています。

豊富な電源生かし主導的地歩固める


電力自由化における新電力の弱点は、自前の発電設備を保有する会社が少ない点です。発電電源を、他の電力会社の電源に依存するところが多いことが、販売市場でシェアを増やせない要因の一つとなっています。その点で、丸紅新電力は、新電力会社の中でも比較的優位にあるといえます。同社は、新電力会社の中で、販売シェアは第3位ですが、電源の豊富さというメリットを生かして、シェアをさらに伸ばし、新電力会社の中で、主導的地歩を固める方針です。電力供給では、常に需給のバランスを維持することが必要で、それには、電源の備えの多い電力会社が有利となります。丸紅新電力としては、販売シェアを拡充することで、新電力間における支配力を強めたい考えです。楽天との連携強化は、販売シェアを伸ばす大きな機会といえます。

4月からのガス全面自由化見越す


楽天、丸紅新電力による連携強化は、電力だけでなく、今年4月からのガスの全面自由化を見越した動きと見ることができます。丸紅新電力は、自前の天然ガス火力発電所を保有しており、ガスの調達力は十分にあります。また、楽天は、楽天経済圏に参加している、多くの出店事業者に「まちでんき」だけでなく、ガスの供給も視野に入れているようです。とくに出店事業者には、飲食店、レストラン、ホテル、旅館など、電気・ガスの使用量の多い事業者が多く、将来的に電気・ガスの大きな需要が見込まれています。

楽天はそうした楽天経済圏の将来像を見据え、2016年5月に、中小LPガス(プロパンガス)事業者で構成される「エネルギー需要開発協同組合」と業務提携する方針を明らかにしています。同協同組合は、電気・ガスの小売り販売体制づくりが主な業務目的です。すなわち、LPガス事業者はガスだけでなく、電気販売を手掛けることで、需要家との間でより緊密な関係を構築するねらいです。楽天は、そうした中小LPガス事業者と提携することによって、楽天経済圏におけるエネルギー供給で大きな役割を果たす戦略を描いています。ガス全面自由化を見越した布石の一つといえるでしょう。

まとめ


楽天と丸紅新電力との連携強化は、電気・ガスのエネルギー供給によって楽天経済圏の拡充強化を図る一方、丸紅新電力にとっては、電力販売でのシェアの拡大と、それによる新電力間での市場支配力強化という、それぞれの戦略が底流にあるようです。

■著者■ 
廣瀬 鉄之介
エネルギー・環境ジャーナリスト
産経新聞社経済記者、編集委員として、経済・産業・エネルギー政策等の記事執筆を担当。退社後、経済産業省所管団体「原子力発電技術機構」及び「社会経済生産性本部」で原子力、その他エネルギー関係の広報、出版物の編集に携わる。原子力発電、電力自由化、再生可能エネルギー等に精通。

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