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省エネ徹底にサードパーティを活用


制作:廣瀬 鉄之介(エネルギー・環境ジャーナリスト)

省エネ徹底にサードパーティを活用

地球温暖化対策の新しい国際枠組みである「パリ協定」が発効し、CO2削減と成長の両立が求められています。省エネ政策の重要性が一段と高まっていますが、経済産業省は先ごろ、「省エネポテンシャルの開拓に向けて」と題する中間とりまとめ案(骨子)をまとめました。その中で、今後の省エネ政策の重点分野は、中小企業や商業・流通・サービスなど政府の直接規制や支援の及びにくい業務部門であるとしています。業務部門への政府の省エネ施策の中では、「サードパーティーの活用」という新しい取組が注目を集めています。そこで、サードパーティーの活用について、その内容や仕組み、意義などを探っていきます。

業務、家庭部門の省エネが遅れる


国内のエネルギー効率の改善は、1970年代のオイルショック後、大幅に改善し、世界でもトップレベルの水準を維持してきました。しかし、2000年代以降、改善のペースは鈍り、省エネを軸とした一層の改善努力が求められています。産業部門とくに製造業のエネルギー効率は改善したものの、業務、家庭部門での改善が遅れています。

エネルギー白書2016によると、1973年度を100とした製造業の生産指数は2014年度で161.2と、生産が6割増えたのに対し、エネルギー消費指数は90.4と、エネルギー消費量は逆に減っています。それに対し、業務部門、具体的には、スーパー、コンビニ、飲食店、福祉施設、サービス業、ホテル、ビル、デパートなどのエネルギー消費指数は236と、2.3倍の伸びとなっています。この間の業務部門の延床面積は2.7倍の増加です。

政府は昨年7月、2030年を見据えた長期エネルギー需給見通しを作成しましたが、その中でエネルギー生産性を高めるための省エネ目標を定めています。エネルギー生産性というのは、より少ないエネルギーで高い生産量を実現する指標です。具体的には、今後年率1.7%の経済成長を維持しながら、エネルギー消費量を抑えるためには、2030年までに徹底した省エネにより、全体で約5030万kl (2013年度比13%マイナス)の省エネが必要と試算しています。

省エネ量を部門別にブレークダウンすると、工場などの産業部門では、約1042万kl、業務部門は約1226万kl、運輸部門では、自動車燃費及び輸送事業者の合計で約1607万kl、家庭部門では、家電製品及び住宅の合計で約1160万klとなっています。運輸、業務、家庭部門で、これまで以上に省エネに取り組まなければなりません。

大企業は省エネ法で取組をチェック


省エネ政策は現在、省エネ法(エネルギーの使用の合理化に関する法律)に基づいて行われています。この法律は、年間エネルギー使用量(原油換算)が合計1500kl以上の事業者を対象にしており、対象事業者は、毎年定期報告書の提出を義務づけられ、報告書の内容に基づき、経産省が省エネ状況をチェックします。取組に問題のある事業者には、指導・勧告・罰則などの措置がとられます。そのため、省エネ状況を把握できるのは、エネルギー使用量の多い、比較的企業規模の大きい事業者となっています。これらの事業者は、主に、製造業の事業者が中心です。製造業でも中小企業や、小売り・サービス・飲食店などの業務部門における小規模事業者は、省エネ法による規制対象から除かれています。

しかし、近年、エネルギー消費量は、製造業などの産業部門に比べて、業務・運輸・家庭部門での消費の伸びが著しいことから、省エネ法を実態に合わせた形で、これまでカバーできなかった事業分野も省エネ法の対象にするなど、法改正を行ってきました。その一つが、2016年度から実施した省エネベンチマーク制度の対象拡大です。ベンチマーク制度は、省エネ状況を絶対値で評価する指標(ベンチマーク)を定め、ベンチマークの改善度合いで省エネの取組をチェックする内容です。従来、対象は製造業でしたが、2016年4月からコンビニ業種を対象に加えました。今後、業務部門での対象をさらに広げる方針です。

直接規制の及ばない中小企業や小規模事業者を対象


今回、新たな取組として実施されることになったサードパーティーの活用は、省エネ法による直接的な規制の及びにくい中小企業や小規模事業者、家庭などに対し、サードパーティーと呼ばれる当事者以外の第三者を介して省エネの働きかけをしたり、中小企業や小規模事業者への省エネ支援制度の充実を図る施策です。

具体的にはZEHビルダー、エネマネ事業者など


経産省によると、サードパーティーは具体的には、ZEHビルダー、エネルギーマネジメント事業者(エネマネ事業者)、エネルギー小売り事業者、商工会議所や金融機関などによる省エネルギー相談地域プラットフォーム―が想定されています。

ZEHビルダーは、ZEHすなわちゼロエネルギーハウス(エネルギー消費量をネットでゼロにする住宅)の普及をめざし、「2020年までに提供する住宅の過半数をZEH化する」ことを宣言した工務店・ハウスメーカー・設計事務所等を、「ZEHビルダー」として登録します。
そして、ZEHに対する補助金は、登録されたZEHビルダーが設計、建築したものに限って交付します。こうした枠組みによって、ZEHビルダーの活動を通じてZEHの普及・拡大に取り組みます。どの地域にどのようなZEHビルダーが存在するかは、今後、補助金執行団体や経産省のホームページなどで公開することにしています。

エネ合補助金の補助率優遇も


エネマネ事業者は、省エネ設備の導入や、エネルギーマネジメントシステム(エネルギー見える化などにより、エネルギー使用の最適化を図るシステム)の導入サービスを通じて、事業所、店舗等の省エネを支援する事業者を指します。経産省はエネマネ事業者を活用して省エネ対策を実施した場合、補助金割合を優遇する考えです。現在、エネルギー使用合理化等事業者支援補助金(エネ合補助金)の補助率は設備・システム購入資金の3分の1ですが、エネマネ事業者を活用した場合、補助率は2分の1に優遇されます。

エネルギー小売り事業者は、2016年4月から実施された電力小売りの全面自由化によって参入した様々な業種の企業で、経産省に電力小売り事業者として登録された企業及び、2017年4月実施予定のガス小売り事業の事前登録企業などが相当します。これらの登録企業は、電気及びガスの需要家と直接接点を持つため、電気・ガスの供給や関連サービス・製品及び情報提供などを通じて、需要家の省エネを促進することができるとみられています。

電力小売り事業者による省エネ製品・サービスの提供事例としては、例えば、東急パワーサプライは、電力需要がピークとなる昼間の時間帯に、電車を利用して系列のデパート、スーパーに行くことで電気代を値引きするサービスを実施しています。リコージャパンは、事業所、スーパー、コンビニ等の電力小売り契約者に対し、LED照明やエアコン等の省エネ機器の導入を提案しています。

2017年度までに省エネ支援窓口を全国に


省エネルギー相談地域プラットフォームは、現在、全国19地域に設置され、商工会議所、金融機関のほか、自治体、コンサルティング会社などの専門家を含めて中小企業に対するきめ細かな省エネの取組を支援しています。いわば、省エネ支援のための地域連携体です。経産省では、2017年度までに、こうした支援窓口を全国に設置する方針で準備を進めています。

まとめ


サードパーティーはこのように、地域連携体を含めてさまざまな事業者が、省エネの取組を支援する事業者として想定されています。法律による直接規制の及びにくい中小企業や流通などの業務分野の事業者には、サードパーティーによる働きかけを強めるというのが一つの目的です。とはいえ、サードパーティーの活用や補助金などの支援措置については、中小企業、業務部門の企業には必ずしも認知が行き届いていないのが実情です。今後、サードパーティーの活用、支援措置の周知徹底が求められます。

■著者■ 
廣瀬 鉄之介
エネルギー・環境ジャーナリスト
産経新聞社経済記者、編集委員として、経済・産業・エネルギー政策等の記事執筆を担当。退社後、経済産業省所管団体「原子力発電技術機構」及び「社会経済生産性本部」で原子力、その他エネルギー関係の広報、出版物の編集に携わる。原子力発電、電力自由化、再生可能エネルギー等に精通。

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