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広がるアグリゲーションビジネス

節電量売買や省エネサービス


制作:廣瀬 鉄之介(エネルギー・環境ジャーナリスト)

広がるアグリゲーションビジネス

電力小売りの全面自由化を踏まえて、このところ、電力アグリゲーションビジネスに取組む事業者の動きが広がっています。電力アグリゲーションとは、工場やオフィス、店舗などの節電量(ネガワット)を買い集め、電力会社に販売するビジネスを指しますが、それに関連した様々な省エネサービスも含まれます。2017年度には、ネガワット取引市場の創設が予定されていることから、それをにらんだ動きともいえます。そこで、省エネ、節電サポートをビジネスとする、アグリゲーションビジネスの周辺を探っていきます。

エネットがAIを活用した法人向け省エネサービス


小売り電力事業者(新電力)のエネットが去る11月7日、AI(人工知能)を活用した法人向けの省エネルギーサービスを開始したと発表しました。省エネ自体は目新しいことではありませんが、同社の場合、すでに電力使用量の見える化やデマンドレスポンス(節電協力に対するリベートの支払い)を実施しており、今回、スマートメーター(通信機能を持つ電力メーター)からの電力データに加え、気象情報や建物情報などを収集し、AIによって24時間解析します。それによって、顧客の建物や節電・省エネの課題などを提示し、より、節電量を高めるサービスを提供するのが特徴です。

エネットの今回のサービスは、オーストラリアの省エネサービスの有力ベンチャー企業COzero社と提携して実施するもので、新たな設備を必要とすることなく、収集情報のデータ解析は30分ごとに繰り返されます。早朝、夜間、休日など、顧客が把握することの難しい時間帯の電力利用の問題点を即座に検出できるほか、各プロセスを自動化することで、即時性、継続性、経済性などに優れたサービスを提供できるのが特徴となっています。

エネットでは、今回の省エネサービスの提供によって、同サービスの導入企業では、最大5~10%の省エネが可能とみています。当面、3年後に3000件の企業の利用を目標にしています。

パナソニックはエプコと合弁でアグリゲーション事業


パナソニック・エコソリューションズ社とエプコ(小売り電気事業者)は2014年に、家庭用太陽光発電のアグリゲーション事業の合弁会社を立ち上げ、現在、さまざまエネルギーソリューションズ(課題解決型サービス)事業に取り組んでいます。具体的には、個々の住宅から、太陽光発電の小規模な電力を買い取り、集約して販売する事業を展開しています。それに伴い、両社は住宅用設備・商品の提供や設備の設計支援はもとより、住宅のエネルギーマネジメントなどを手掛けています。パナソニックでは、2018年に住宅関連事業で売り上げ2兆円を目指しており、今回のアグリゲーションビジネスはそのための布石の一つと位置づけています。

背景に分散型再エネ電源の急増


アグリゲーションビジネスが登場した背景には、電力会社の設備投資環境が厳しくなる一方、電力自由化によって、太陽光発電や風力発電、バイオマス発電などの小規模な分散型再エネ電源(エネルギーリソース)が急増してきたためです。アグリゲーションは、ポジワット(発電)に対するネガワット(節電)を取引するビジネスで、工場、店舗などの節電量がすなわち発電量に相当するとの考え方から生まれた事業です。電力会社にとっては、ネガワットを調達することで、新たな発電設備投資が不要になり、コストを削減できるメリットがあります。そのコスト削減分は、ネガワットを調達したアグリゲーター(節電量を集約する事業者)や節電した電力需要家などに還元されることで、ビジネスが成り立ちます。

アグリゲーターは、電力会社や小売り電気事業者、エネルギーサービス会社などがその役割を担っており、現在、各地で、アグリゲーターによるエネルギー・リソース・アグリゲーションの実証事業が進められています。分散型電源をネットワークで一括制御し、電源の最適利用を図るとともに、生み出されたネガワットは、既存の電力会社の調整電源として活用されます。既存の電力会社の電源、例えば、石油火力や天然ガス火力などの電源による発電量が、ピーク需要時に不足した場合、アグリゲーターによって生み出されたネガワットが、供給力を補完する形になります。逆に、電力会社の発電量が余剰になりそうな場合は、分散型電源すなわち、需要家のエネルギーリソースをコントロールすることで、発電量を抑制します。

バーチャル発電所の登場


アグリゲーターによる、様々な分散型電源をネットワークでコントロールするシステムは、電力需給の調整とともに、ネガワットによる新たな電力の創出を可能にします。そのため、エネルギー・リソース・アグリゲーションは、あたかも一つの発電所のような機能を持つことになります。そのため、こうしたシステムは、仮想発電所(バーチャル発電所:Virtual Power Plant)と呼ばれています。

経済産業省は2016年7月、「バーチャルパワープラント」構築に向けた実証事業推進のための参加企業を採択しました。採択件数は7プロジェクトあり、それぞれ制御対象機器によって、参加企業が異なります。7プロジェクトの幹事企業としては、関西電力、東京電力エナジーパートナー、日本電気、アズビル、エナリス、ソフトバンクエナジー、ローソンが採択されています。それぞれのプロジェクトには、複数の企業が参加しており、これらの企業を中心に、今後、実証事業を進めていきます。

蓄電池、電気自動車などもネットワーク化


同省は、実証事業の採択に先立ち、2016年1月に省内にエネルギー・リソース・アグリゲーション・ビジネス検討会を設置するとともに、官民によるアグリゲーション・ビジネス・フォーラムを立ち上げ、国と企業が連携して新しい需給システムづくりや、それによる新たなサービスの提供などに取り組んでいくことにしています。 エネルギー・リソース・アグリゲーションで一括制御されるリソースには、太陽光発電、風力発電、バイオマス発電などの再エネ電源のほか、蓄電池、電気自動車のバッテリー、燃料電池、コージェネレーションシステム(熱電併給システム) などの創エネ、蓄エネ機器が想定されています。制御する際には、近年普及が進んだIoT(Internet of Things、モノのインターネット接続)を活用し、リソースごとに、最適なエネルギー管理を行うとともに、ネットワークの需給調整に役立てます。

大規模火力24基の電力を生み出す


エネルギー・リソース・アグリゲーションによるバーチャル発電所が誕生すると、どれくらいの電力を生み出せるのでしょうか。経済産業省は長期エネルギー需給見通し(平成27年7月発表)をもとに、2030年における電力量の目安を試算しています。それによると、住宅用太陽光発電からは760万kW、燃料電池からは371万kW、コージェネレーションシステムからは1320万kWで、計約2450万kWとみています。この規模は、出力100万kWクラスの大規模火力発電の約24基分に相当します。日本全体の発電設備規模は、現在、2億5000万kWですから、その約1割に相当します。このほか、デマンドレスポンスや蓄エネ設備による、調整可能電力量としては、1320万kW、大規模火力発電の約13基分が想定されています。

まとめ


バーチャル発電所が各地で誕生すると、従来の大型火力発電による電力会社の設備コストは大幅に軽減されるとみられます。それによる電力料金コストも大きく低下することが期待されます。それと同時に、エネルギー・リソース・アグリゲーションの普及によって、アグリゲーターによる、さまざま電力ビジネスが生まれ、新たなエネルギー市場の創出につながると思われます。

■著者■ 
廣瀬 鉄之介
エネルギー・環境ジャーナリスト
産経新聞社経済記者、編集委員として、経済・産業・エネルギー政策等の記事執筆を担当。退社後、経済産業省所管団体「原子力発電技術機構」及び「社会経済生産性本部」で原子力、その他エネルギー関係の広報、出版物の編集に携わる。原子力発電、電力自由化、再生可能エネルギー等に精通。

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