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東京都がグリーンエネルギー証書を一般事業者向けに販売

購入第1号は日本エコシステム


制作:廣瀬 鉄之介(エネルギー・環境ジャーナリスト)

東京都がグリーンエネルギー証書を一般事業者向けに販売

東京都がこのほど、一般事業者向けにグリーンエネルギー証書の販売を始めました。グリーンエネルギー証書は、再生可能エネルギー電力における環境価値を証券化したもので、証書購入者は、再エネ電力の発電設備を持たなくても、証書相当分の再エネ電力を使用しているとみなされます。購入第一号は、小売り電気事業者の株式会社日本エコシステムです。グリーンエネルギー証書の仕組みや日本エコシステムのグリーンエネルギー証書の活用例を中心に、証書の意義や、証書購入事業者のメリットなどを探っていきます。

環境価値を切り離し証券化


グリーンエネルギーは、自然エネルギーである、太陽光、風力、バイオマス(生物資源) などの再生可能エネルギーを指します。自然エネルギーによって発電された電力をグリーン電力とも言います。自然エネルギーによる電気は、電気としての価値のほか、CO2を排出しないという環境価値が付加されています。この環境付加価値を電力と切り離し、その価値を証券化することで、市場で流通できるようにしたのが、「グリーンエネルギー証書」です。

グリーンエネルギー証書の発行については、証書発行事業者が第三者機関であるグリーンエネルギー認証センターの認証を得る必要があります。グリーンエネルギー認証センターは、グリーンエネルギー証書に記された電力が、一定の基準を満たした発電設備で作られたことを認証する機関で、一般財団法人日本エネルギー経済研究所に2008年に設置されました。グリーンエネルギー証書は、再生可能エネルギーの普及促進を目的としたものであり、証書を購入する企業や団体、自治体などは、再生可能エネルギーの発電設備を持たなくても、証書に記載された電力量(kWh)相当分の再生可能エネルギー電力を利用したとみなされます。購入代金は、証書発行事業者を通じて再生可能エネルギー発電事業者の設備の維持・拡大などに充当されます。

東京都環境公社が発行


東京都が販売した一般事業者向けのグリーンエネルギー証書は、直接的には、東京都環境公社が発行したグリーンエネルギー証書で、東京都のCO2排出削減義務を課せられているエネルギー利用の大規模事業所向けに販売されていたものです。エネルギー利用の大規模事業者とは、燃料や電気等の使用量が原油換算で年間1500kl、電力使用量換算で年間600万kWh以上の事業者を言います。

大規模事業者向けのCO2排出削減義務は、東京都が平成22年度(2010年度)から実施している「温室効果ガス排出総量削減義務と排出量取引制度」に基づくものです。東京都が「世界で最も環境負荷の少ない都市」を目指して実施している制度で、排出量削減の方法としては2通りの方法があります。1つは、自らの省エネ努力で削減する方法であり、他の1つは、自らの努力で削減義務を達成できない場合、「排出量取引」による方法です。排出量取引による方法は、義務量以上に排出量を削減できた他の事業者から排出枠を購入することで、自らの削減義務量を達成する方法です。

こうした排出量取引の一形態がグリーンエネルギー証書の購入で、削減義務量の未達分をグリーンエネルギー証書の購入によって充当することができるわけです。

電力と熱の2種類の証書


今回、東京都が販売した一般事業者向けのグリーンエネルギー証書は、エネルギーの大規模利用者でなくても、購入が可能です。証書には「グリーン電力証書」「グリーン熱証書」の2種類があります。「グリーン熱証書」は太陽熱温水器などの熱によるエネルギー証書です。いずれも東京都内で生み出された太陽光発電、太陽熱エネルギーです。

証書の販売期間は、平成28年10月11日~平成29年2月28日まで、販売量は、グリーン電力証書の場合、1億772万kWh、販売価格は7円/kWh、販売単位は1000kWh以上です。グリーン熱証書では、販売量が621万7000MJ(メガジュール)、販売価格は26円/MJ, 販売単位は100MJ以上です。

グリーンエネルギー証書の購入は、事業者にとってどのようなメリットがあるのでしょうか?東京都の一般事業者向けグリーンエネルギー証書の購入第一号となった日本エコシステムの活用例を中心に見ていきます。

「じぶん電力」を100%再エネに


日本エコシステムは、電力の小売り全面自由化によって、電力小売り事業に進出し、「じぶん電力」のブランドで、一般家庭などへの電力販売を行っています。「じぶん電力」は、ユーザーの住宅の屋根に太陽光発電設備を無償で設置し、そこで発電した電気を直接使ってもらうサービスです(設備と電気は日本エコシステムに帰属します)。使用した電気代は日本エコシステムに支払われ、余剰分は日本エコシステムが電力会社に販売します。ただ、夜間や雨天などの太陽光発電を利用できない時は、他の電力会社から電力を供給してもらいます。他の電力会社から供給してもらう電力は、必ずしも100%再生可能エネルギーではありません。そこで他の電力会社からの供給分にグリーンエネルギー証書の電気量を充当し、使用電力を100%グリーン電力とみなすのです。それによって、同社の「じぶん電力」はすべて「環境に優しい自然エネルギー電力」とPRできるわけです。

日本エコシステムでは、購入したグリーン電力証書を、東京都内のユーザー、住宅建築業者、工務店などを通じて「電力の地産・地消」をPRしていくことにしています。

JTBは「CO2ゼロ旅行」を商品化


東京都環境公社発行のグリーンエネルギー証書以外では、環境省によると、多くの企業でグリーン電力証書の活用事例があります。JTB関東では、「CO2ゼロ旅行」の商品を売り出しています。旅行中のバス、鉄道などの温室効果ガス排出量を、証書によってゼロにするツアーで、ツアー参加団体には、額入りの「グリーン電力証書」、参加者全員に「バッジ」が配布されます。

ソニーの場合は、工場やオフィスなどで使用する電力の一部を自然エネルギーによる電力にしています。2010年3月現在ソニーグループのグリーン電力証書契約量は年間7104万kWh で、グループ全体の電力使用量の約4%に相当します。

「風で織るタオル」を販売


愛媛県今治市にある池内タオルでは、秋田県能代風力発電所のグリーン電力証書を使用し、自社の使用電力を100%風力発電で賄い、「風で織るタオル」の名前でタオルを販売しています。バスタオル1枚織る際に約1kWh の電力を消費しており、現在、年間25万kWhのグリーン電力証書を利用しています。

自治体などが、各種のイベントを開催する際に、グリーン電力証書を使った取組を実施するケースもあります。千葉県松戸市では、2010年7月7日に、松戸駅西口デッキにて「減CO2(げんこつ)グリーン電力ライブを開催、ライブなどで消費すると想定した電力(50kWh)をすべてグリーン電力証書で賄いました。この企画は松戸市が2009年よりスタートさせた「松戸市減CO2(げんこつ)大作戦(松戸市地球温暖化対策地域推進計画)」の事業の一環で、同市は7月7日を、「まつど減CO2(げんこつ)の日」と定め、一斉消灯や星空観望会などの環境イベント合わせて実施しています。

まとめ


グリーン電力証書は、企業や自治体、団体、学校等で、様々な活用が考えられています。
活用方法としては、製品の製造に使用するケース、オフィスなどの電力として利用するケース、イベントや行事に活用するケースがあります。とくに環境へのやさしさ、クリーンなイメージなどをPRする場合には、証書の活用は大きな効果を発揮すると思われます。
また、企業に求められるCSR(企業の社会的責任)活動の一つとしても証書の活用は有効です。製品やオフィス、店舗などにはグリーンエネルギーマークの貼付も認められるので、商品の差別化、企業のイメージ向上に役立てるメリットが大きいと思われます。

■著者■ 
廣瀬 鉄之介
エネルギー・環境ジャーナリスト
産経新聞社経済記者、編集委員として、経済・産業・エネルギー政策等の記事執筆を担当。退社後、経済産業省所管団体「原子力発電技術機構」及び「社会経済生産性本部」で原子力、その他エネルギー関係の広報、出版物の編集に携わる。原子力発電、電力自由化、再生可能エネルギー等に精通。

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