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流通・サービス業にも省エネベンチマーク制度 事業者をクラス分け


制作:廣瀬 鉄之介(エネルギー・環境ジャーナリスト)

流通・サービス業にも省エネベンチマーク制度 事業者をクラス分け

電力の全面自由化によって、節電・省エネ機運が高まる見通しにありますが、経済産業省はそのタイミングをとらえ、これまで推進してきた省エネルギー政策を一段と強化し、より徹底した省エネ政策を実施することにしています。その第一弾として、これまで省エネ対策が十分行われていなかった流通・サービス業分野に、今年度から新たにベンチマーク制度(一定の指標に基づいて企業の省エネの取組度合を比較できる制度)を導入、事業者の省エネクラス分けを行うなど、厳しい取組を実施することにしています。流通・サービス業への省エネベンチマーク制度の狙いは何か、具体的な制度の仕組みとその意義を探っていきます。

産業部門での対象は6業種10分野


省エネベンチマーク制度は、石油危機を契機として1979年に制定された省エネ法(エネルギーの使用合理化法)に基づいて、従来、産業部門を中心に導入されてきました。2008年~2009年にかけての省エネ法改正の中で、順次対象業種が拡大され、現在は、6業種10分野が制度の対象となっています。具体的には、エネルギー消費量の多い製鉄業や電力供給業、セメント、洋紙・板紙、石油精製、石油化学、ソーダ工業などです。

ベンチマーク制度というのは、事業者の省エネ状況を絶対値で評価する指標(ベンチマーク指標)を定めることで、事業者の省エネの取組を客観的・公平に評価する制度です。ベンチマーク指標としては、業種によって異なりますが、おおむね生産量当たりのエネルギー使用量(エネルギー消費原単位)となります。

エネルギー消費量の多い事業者に定期報告を義務づけ


産業部門で実施されているベンチマーク制度では、エネルギー消費量の多い、すなわち石油換算で年間1500kl以上のエネルギーを使用する事業者には、毎年定期報告書の提出を義務付け、提出された報告書の内容に基づき、経済産業省が指導・調査を行うことにしています。

具体的には、定期報告書の内容を踏まえ、より詳細な報告聴取を行ったり、立ち入り検査などの厳しい調査を実施します。省エネの取組が著しく不十分とみなされた場合、エネルギー使用に関する合理化計画の作成・提出を指示します。指示に従わない場合は、事業者名を公表したり、省エネ改善命令を出します。命令に従わない場合は、罰則が課せられます。

ベンチマーク制度では、エネルギー消費原単位を年平均で1%以上低減することを基本にしており、対象とされた業界で、ベンチマーク指標の最も優れた事業者(業界全体の1~2割)の指標レベルを、他の事業者の目指すべき目標水準として設定します。

目標水準を満たした事業者は「省エネ優良事業者」として、定期報告の中でプラス評価を行います。目標水準を満たせなかった事業者は、引き続き従来の評価(エネルギー消費原単位の年平均1%以上の低減)を達成するよう努力が求められます。

経済産業省は、産業部門で実施されている、こうした省エネベンチマーク制度を今年度から流通・サービス業にも導入するとともに、産業部門、流通・サービス業を含めて、事業者単位での省エネ取組の徹底を図るため、新たに、事業者に対するクラス分け評価制度を実施します。これは、各段階のクラスの事業者に、それに対応するメリハリのある施策を進めるのがねらいです。

事業者を4段階にクラス分け


事業者に対するクラス分け評価は、エネルギー消費量の多い事業者から省エネ法に基づく定期報告書を提出してもらい、それをベースにすべての事業者を、S・A・B・Cの4段階にクラス分けします。流通・サービス業の場合も、対象となる事業者は、年間エネルギー消費量が1500kl以上となる見通しですが、流通・サービス業には、エネルギー消費量の少ない事業者も多く存在することから、1500kl未満の事業者は対象から除かれるとみられます。

4段階のクラスのうち、Sクラスというのは「省エネが優良な事業者」、Aクラスは「一般的な事業者」、Bクラスは「省エネが停滞している事業者」、Cクラスは「注意を要する事業者」と位置づけられます。それぞれのクラスの具体的な評価水準は、Sクラスにおいては、5年間平均原単位を年1%以上低減するという努力目標を達成した事業者、あるいは、事業者が中長期的に目指すべき水準を達成した事業者となります。

Bクラスは、努力目標が未達成でしかも、直近の2年間連続して原単位が対前年度比増加あるいは、5年間平均原単位が5%超増加している事業者、AクラスはSクラスにもBクラスにも該当しない事業者です。

Cクラスは、Bクラスの事業者の中でもとくに目標達成に対する努力が不十分と判断される事業者です。

経済産業省は、ベンチマーク制度におけるこうしたクラス分け評価によって、省エネに積極的に取り組む事業者と、そうでない事業者とを峻別し、施策にメリハリのある対応措置を講ずることにしています。取組の優良な事業者は、経済産業省ホームページで事業者名や連続目標達成年数を公開して称揚するとともに、省エネ法上のさまざま税制・金融支援策を講じます。

省エネ停滞事業者には注意文書や改善命令


半面、省エネが停滞したり、注意を要する事業者の場合は、注意文書を送付し、現地調査を重点的に実施したり、改善命令、罰則などによって厳しく対応することにしています。いわば“アメとムチ”による取組の強化といえます。

経済産業省によると、現在、流通・サービス業でのベンチマーク制度導入を検討している業界団体6団体です。ショッピングセンター、スーパー、百貨店、業務用ビル、コンビニエンスストア、ホテルです。これら6業界だけで、エネルギー消費量は、業務部門全体の5割をカバーしています。産業部門でのベンチマーク設定は製造業全体の8割をカバーしています。

今回、新たにベンチマークを導入する流通・サービス業を含めると、今後3年以内に全産業のエネルギー消費の7割の事業者分野で省エネの取組が実行されることになります。現在、ベンチマーク制度とは別に、家電製品などの商品ごとのエネルギー消費効率の改善をめざすトップランナー制度という省エネ促進制度があります。この制度も省エネ法に基づいて実施されており、省エネ統一レベリングなどによって、商品のクラス分けが行われています。今回の流通・サービス業におけるベンチマークのクラス分けも、同様の考え方であり、“流通・サービス版トップランナー制度”ともいえます。

景気回復でエネルギー消費量が増加


経済産業省が、ここにきて流通・サービス業に対する省エネ政策を強化することになったのは、産業部門や運輸部門でのエネルギー消費量の伸びが低下ないし、減少しているのに対し、業務部門での伸びが極めて大きくなっているためです。とくに、ここ2,3年の景気回復の影響を受けて、流通・サービス業での伸びが著しくなっています。

一方、今年4月から実施された電力小売りの全面自由化によって、電気料金の削減、節電の動きが強まっており、それに対応した、様々な事業者による、省エネ、エネルギー管理ビジネスの展開が始まっています。ICT(情報通信技術)の進展により、家電や自動車、工場、店舗、オフィス内設備をネットワークで結び、エネルギーマネジメントを一括して行うビジネスが登場しています。また、電力会社によるデマンドリスポンス(需要家による節電対応)の要請やネガワット(節電量)取引などの新しいビジネスも生まれています。

経済産業省としては、こうした全面自由化の時機をとらえ、国の省エネ政策強化との相乗効果で、省エネの成果を一段と高めたい考えです。

まとめ


政府は昨年7月にまとめた長期エネルギー需給見通し(エネルギーミックス)で、再生可能エネルギーの大幅な導入とともに、徹底した省エネにより、2030年の最終エネルギー消費量を2013年度比13%削減する方針を打ち出しました。その方針の柱の一つが、流通・サービス業などの業務部門におけるエネルギー消費量の削減といえます。

■著者■ 
廣瀬 鉄之介
エネルギー・環境ジャーナリスト
産経新聞社経済記者、編集委員として、経済・産業・エネルギー政策等の記事執筆を担当。退社後、経済産業省所管団体「原子力発電技術機構」及び「社会経済生産性本部」で原子力、その他エネルギー関係の広報、出版物の編集に携わる。原子力発電、電力自由化、再生可能エネルギー等に精通。

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