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ワタミが電気・宅食とセットで高齢者向け見守りサービス開始


制作:廣瀬 鉄之介(エネルギー・環境ジャーナリスト)

ワタミがエネルギー事業を拡大 その戦略とは?

外食、宅食事業を展開するワタミが、電力の全面自由化を機に、エネルギー事業の拡大を積極的に進めています。去る9月にパワーシェアリング社(PS社 千葉県旭市)と共同でVPP(バーチャルパワープラント 仮想発電所)の実証事業に乗り出したのに続き、10月には大分県臼杵市に「うすきエネルギー株式会社」を設立しました。ワタミのエネルギー事業拡大戦略のねらいを探ってみました。

電力供給システムの変更を迫られる


国内の電気事業は、東日本大震災やそれに伴う原子力発電所事故の運転停止などで、従来の大規模集中電源に依存した供給システムからの脱却を迫られています。一方、再エネ特別措置法(電気事業者による再生可能エネルギー電気の調達に関する特別措置法、FIT法)の施行によって、太陽光発電を中心に再エネの導入が急速に進んでいます。しかし、太陽光発電や風力発電などの自然エネルギー電力は、気象条件や日照の変化に大きく左右され、出力が不安定になるという課題があります。

VPPで電力の需給調整


そうした電力供給のシステムや再エネ電力の不安定性を解消する方法として、VPPが登場してきました。VPPは、複数の小規模な再エネ電源をネットワークで連系するとともに、需要家を含めて、電力の需給調整をコントロールするシステムです。つまり、ネットワークで結んだ電源を一つの発電所(バーチャル発電所)と見立てて、需給を管理するシステムです。こうしたVPPの取組は、各地で進められており、経済産業省も実証試験に乗り出しています。

ワタミのVPPの実証事業は、同社の100%子会社のワタミファーム&エナジー(ワタミF&E)が取り組んでおり、ワタミF&Eが展開するワタミの宅食事業の営業所や他の事業拠点にPS社が蓄電池を設置します。

電力供給の安定性に蓄電池を使用


ワタミF&Eは電力の全面自由化に伴い、すでに小売り電気事業者として経済産業省に登録し、家庭や商店、事業所などへの電気販売を行っています。供給する電気は、自前の再エネ電気のほか、他の電力会社や卸電力取引所から調達します。再エネ電気の場合、出力が不安定なので、電力供給に安定性を欠くことが多くなります。そうした場合、蓄電池によって、電気料金の安い夜間に電気を蓄えたり、昼間の太陽光発電電力を蓄電し、電気料金の高い時間帯に蓄電分を使用するなど、電気料金を抑えながら、電気の需給調整にも役立てることができます。

宅食事業の一環で高齢者の見守りサービス


ワタミF&Eは、こうした蓄電池による電気の需給調整とともに、宅食事業のサービスの一環として、高齢世帯や一人暮らしの高齢者向けの見守りサービスを実施します。ワタミの販売する電気購入のセットメニューとして、遠く離れて住む両親など、高齢者の暮らしぶりを、電気使用量を通じてメールでお知らせするサービスです。親の電気使用量を遠隔地の家族が知ることによって、暮らしぶりを察知できる仕組みです。

エネルギーの“地産地消”へ新会社


うすきエネルギー株式会社の設立は、ワタミと大分県臼杵市とのこれまでの関係の積み重ねに基づくものです。ワタミF&Eは2002年に有機農業を目指して農業法人ワタミファームを設立、2014年には臼杵市の進める水源涵養のための森林づくりに参画しました。また、2014年には再エネ電源を活用した再生可能エネルギー電力事業に参入し、臼杵市の公共施設や民間事業者への電力供給を行っています。

臼杵市とのそうした関係を踏まえて、新会社を設立したのですが、その狙いは、地域電力会社として、地元で発電した電力を臼杵市内の事業施設や一般家庭に供給する、いわゆるエネルギーの“地産地消”が目的です。

うすきエネルギーは、当面はワタミF&Eに運営を委託しますが、今後、地元の企業などからも出資してもらい、地域電力会社として運営することになります。また、供給する電力も、当面は九州電力や卸電力取引所から調達しますが、地元のさまざまな再エネ電力を調達する予定です。

地域電力会社は、新電力会社の一形態で、地方自治体と地元の企業が参加して設立する電力会社です。地域電力会社の例としては、全国自治体に先駆けて設立された群馬県の「中之条電力」、政令指定都市としては初めての「浜松新電力会社」、福岡県みやま市の「みやまスマートエネルギー」などがあります。

電力の全面自由化とともに、新電力会社や地域電力会社の設立が相次いでいますが、地域電力会社の場合、地域の活性化と地元住民に料金の安い電気を供給するのが大きな目的です。

うすきエネルギーの場合も、太陽光発電や風力発電、さらには、木材などのバイオマス発電で作られた電力を調達して、地元の事業所、工場、公共施設、一般家庭などに供給します。

食に関する6次モデル産業づくり


外食産業からスタートしたワタミグループは、食の素材づくりである農業、宅配事業、さらにエネルギー・環境事業にまで幅広い取組を展開しています。こうした事業展開に流れる一貫した戦略は、食に関する6次産業モデルの構築にあるといえます。

ワタミの創業は1984年の外食産業から始まりましたが、顧客に安全な食材を提供する必要から、2002年に有機農業をスタートさせました。現在では、北海道から九州に至る全国12ヵ所に約632ヘクタールの規模で、ワタミファームを運営し、有機農業、畜産、酪農事業を行っています。

ワタミファームでとれた有機野菜などの食材は、ワタミの厨房で加工、調理し、外食事業や宅食事業として、顧客に提供されます。これらの事業は、農業(1次産業)、食品製造・加工(2次産業)、外食・宅食サービス(3次産業)であることから、ワタミグループ全体の事業は、1次産業×2次産業×3次産業のいわゆる6次産業と位置づけられています。

6次産業化の動きは近年、農業生産法人や水産加工業者などの間で広まっていますが、これまでの動きは、生産事業者が、製造・加工から、販売サービスへと、いわゆる川上から川下に事業を展開するダウンストリーム型が多かったようです。それに対して、ワタミグループの場合は、外食・宅食サービスから農業事業に進むアップストリーム型の事業展開といえます。

環境に優しいエネルギー事業


ワタミグループの事業で特に注目されるのは、エネルギー事業です。外食・宅食とは一見関係の薄い事業のようですが、ワタミグループの戦略としては、有機農業の取組にみられる環境事業への取組を見逃せません。いわゆる“環境にやさしい事業”としてのエネルギーに対する取組です。自然エネルギーを中心とした再生可能エネルギーについては、ワタミグループは2012年に風力発電事業に参入し、自前の風力発電を稼働させています。

太陽光発電についても、2014年から、札幌市の市民ソーラーシステムと共同で、北海道厚真町にメガソーラー(15MW)を建設、2015年から、発電を行っています。ワタミF&Eでは、今年中に、同社の供給する電源の約3割を、再生可能エネルギーで賄うことを目標にしています。

環境事業の取組としては、廃棄物処理も重要な事業となっています。外食や宅食から生ずる食品廃棄物の資源リサイクル、有機農業の一環としてのたい肥などによる土づくり事業、廃棄物の資源化事業など、環境に配慮した資源リサイクルの取組も、同グループの事業の一翼を担っています。

まとめ


外食産業から始まったワタミグループの、食に関する6次産業化のモデルは、他の事業者などからも大いに関心を集めそうです。それぞれの事業の川下、川上への展開は、多くの事業者でも検討されていますが、電力・エネルギー事業をマッチングさせた動きは極めて珍しいといえます。電力全面自由化を機に、様々な業種、業態の企業が、電力ビジネスに参入すると予想されますが、ワタミグループの戦略は、注目に値するビジネスといえるでしょう。

■著者■ 
廣瀬 鉄之介
エネルギー・環境ジャーナリスト
産経新聞社経済記者、編集委員として、経済・産業・エネルギー政策等の記事執筆を担当。退社後、経済産業省所管団体「原子力発電技術機構」及び「社会経済生産性本部」で原子力、その他エネルギー関係の広報、出版物の編集に携わる。原子力発電、電力自由化、再生可能エネルギー等に精通。

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