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食品廃棄物の転売防止へガイドライン


制作:廣瀬 鉄之介(エネルギー・環境ジャーナリスト)

今年1月、廃棄カツの不正転売事件が大きな社会問題となりましたが、環境省の中央環境審議会が去る9月16日、食品廃棄物の不正転売防止策として、食品関連事業者が取り組むべき措置等をとりまとめ、環境大臣に答申しました。答申にはいくつかのポイントがありますが、特に緊急の課題として、転売防止策としてのガイドラインを年内に公表するよう求めています。そこで、今回の答申の意義や課題及び、今後検討されるガイドラインの具体的な内容などを探っていきます。

食品リサイクル法違反事件


廃棄カツの不正転売は、カレーチェーン「CoCo(ココ)壱番屋」を展開する壱番屋のトッピング用冷凍ビーフカツが、産業廃棄物処理業者のダイコーに廃棄処理を依頼したにもかかわらず、愛知県内の複数のスーパーで販売されていたことから発覚しました。冷凍用ビーフカツの廃棄処理依頼は、壱番屋の商品製造工程で異物が混入したことによるものです。依頼を受けたダイコーは、同商品を廃棄処理せず、他の食品関連事業者に“横流し”したのです。これは、食品リサイクル法に基づくマニフェスト(廃棄物管理票)の最終処理確認義務に違反し、虚偽報告をしたということになります。

事件の発覚を受けて環境省は、今年3月に、当面の不正転売防止策をまとめ、対策に乗り出しました。対策は、電子マニフェストの機能強化や廃棄物処理業に関する監視強化及び排出事業者に関する転売防止策などです。このうち、排出事業者に関する転売防止策は、食品製造事業者や食品の小売り、卸、外食チェーン店などの事業者を対象としたもので、残食品(売れ残ったり、食べ残しなどの食品)を廃棄物として排出する際の対策です。この対策については、廃棄物として排出する形態がさまざまであることから、環境省では農林水産省と合同で食品関連事業者から、実態のヒアリングを行ったうえ、食品リサイクル法にもとづく判断基準省令の見直し(ガイドラインの作成)の形で、実施することにしています。

答申に2つのポイント


今回、環境大臣に答申された主な内容は、大きく二つあります。一つは、転売防止の取組のために、食品リサイクル法に基づく食品循環資源の再生利用の取組の促進と、食品廃棄物の不適正な転売防止の措置とを同時に達成することです。つまり、転売防止策が、廃棄物の再生利用の促進を妨げることがあってはならないという点です。

二つ目は、そうした前提に立って、消費者の信頼を取り戻すための緊急の再発防止措置を講ずるという点です。この点に関しては、廃棄される食品の性状、荷姿、消費・消費期限の長さ、発生量など、不適切な転売のリスクを考慮し、食品関連事業者が、追加的に転売防止措置策を検討するとしています。そして、防止策が継続的に、柔軟に実施できるよう、国が新たな指針(ガイドライン)を示すことにしています。

環境省と農水省が食品関連事業団体からヒアリング


環境省は、ガイドラインに関して、今年4~6月にかけて農林水産省と合同で食品関連事業者の業界団体(食品製造業関係26団体、食品卸売業関係1団体、食品小売業関係4団体、外食産業関係1団体)からヒアリングを行いました。

ヒアリングでは、食品廃棄物が排出される状況や廃棄処理委託事業者の選定基準、処理能力、廃棄処理終了確認時の対応などに詳しく聞きました。

それによると、食品廃棄物がそのまま転売可能な状態で排出される状況としては、納品期限切れによる返品や、店舗における販売期限切れ、余剰在庫の廃棄、さらに、商品の改廃・期間限定商品の入れ替え、製造ロス、災害等があげられました。

廃棄物排出の頻度や数量の多くなる場面としては、チルド商品・日配商品・生鮮食品等の賞味期限の短い商品や、新商品、惣菜等の需要予測の難しい商品、製造工程での品質トラブル(異物混入等)によるロット単位での廃棄があげられました。

食品廃棄物の不適正な転売を防止する観点としては、、まずは食品ロスを削減することが有効な取組との意見が多く出されました。具体的には、製造工程・品質管理の強化などのほか、製造業・卸売業・小売業が連携した商習慣の見直しについて検討を行い、納品期限の見直し、発注精度の向上、日持ちの良い加工食品の賞味期限は年月表示にするなどの案が出されました。

適切な処理施設の保有などをチェック


環境省では、ヒアリングで出されたこうした意見や観点等を踏まえ、ガイドラインに盛り込む内容の検討を進める予定です。これまでのところ、廃棄物処理業者への委託契約を締結する段階では、処理業者が廃棄物処理法に基づく適切な処理施設を保有していること、十分な処理能力があること、情報公開や書類の管理状況が適切であること、処理の対価として適切な処理料金を請求していること、などがチェックポイントとして考えられています。

転売できぬよう箱をつぶすなどの方法も


食品廃棄物の収集運搬・処分の段階における転売防止策としては、食品廃棄物に直接なんらかの手を加える手法として、例えば、箱をつぶすなど包装の状態を崩したり、容器のふたをとる、廃棄物である旨の印を付与する、賞味期限後に排出する、等の手法が考えられています。ただ、その場合、手法により、再生利用を阻害したり、衛生上の懸念があるほか、保管場所の確保の限界や液状の商品などで処理機能のない物流・営業拠点などでの対応などが、検討課題となっています。

食品廃棄物に直接手を加える以外の方法としては、マニフェストまたは伝票による業務管理や荷積み時の写真撮影、ドライブレコーダー、封印輸送等による監視体制の強化が考えられています。

再生利用事業者と定期的なコミュニケーションも


一般的な転売防止策としては、食品関連事業者の従業員に対する教育訓練や再生利用事業者との定期的なコミュニケーションの実施などにより、信頼関係の構築を図ることも重要と考えられています。

今回の答申のポイントの一つとなっている、食品廃棄物の転売防止と、食品循環資源の再生利用促進の同時達成は、食品リサイクル法の最大の眼目である廃棄物のリデュース(減量)と、飼料や肥料等の再生利用を優先し、焼却や埋め立てをできるだけ少なくすることで、可能であると環境省は判断しています。

食品リサイクル法は、正式には「食品循環資源の再生利用等の促進に関する法律」の名称で、2001年に施行され、2007年6月に改正されています。同法は一般に3R(リデュース、リユース、リサイクル)法とも呼ばれますが、優先順位としてはまずリデュースが最優先です。

国内における食品廃棄物の総量は2014年度推計で2801万トンに上っています。この量は、国内の食用仕向量全体の約3割、つまり、食用に回される農畜水産物全体の3割が廃棄されていることになります。しかも、食品廃棄物のうち、加食部分(食べられるにもかかわらず捨てられている、いわゆる食品ロス)は23%にも達しています。

食品廃棄物は事業系が70%を占める


食品廃棄物は、とくに事業系(食品製造業、食品卸売業、食品小売業、外食産業)からの排出が最も多く、全体の70%近くを占めています。中でも食品製造業はその8割となっています。次いで外食産業が10%と多くなっています。

環境省ではこうした実態から、食品関連事業者では、廃棄物の減量化を徹底し、やむを得ず廃棄物として排出されたものに関しては、飼料・肥料等の再生利用を促進すべきとしています。

まとめ


今回の答申の端緒となった廃棄カツの転売は、あってはならないことですが、防止策としての対策が厳しすぎると、廃棄物の減量化や再生利用の道を狭めることになりかねないと思われます。ガイドラインを検討・運用する環境省としては、そのさじ加減が問われることになります。

■著者■ 
廣瀬 鉄之介
エネルギー・環境ジャーナリスト
産経新聞社経済記者、編集委員として、経済・産業・エネルギー政策等の記事執筆を担当。退社後、経済産業省所管団体「原子力発電技術機構」及び「社会経済生産性本部」で原子力、その他エネルギー関係の広報、出版物の編集に携わる。原子力発電、電力自由化、再生可能エネルギー等に精通。

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