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平成28年度のグリーン物流パートナーシップ優良事業者を募集


制作:廣瀬 鉄之介(エネルギー・環境ジャーナリスト)

平成28年度のグリーン物流パートナーシップ優良事業者を募集

物流分野での環境負荷の低減や生産性向上などによって、持続可能な物流体系の構築が急がれています。経済産業省と国土交通省は持続可能な物流体系づくりの促進のため、グリーン物流の普及拡大を目指すグリーン物流パートナーシップ事業の一環として、平成28年度における優良事業者の募集を開始しました。応募事業者は荷主と物流事業者など複数事業者間のパートナーシップによる取組が対象となります。募集期間は8月31日までで、12月上旬に優良事業者の選定結果が発表されます。優良事業者はグリーン物流のモデル企業として、事業の普及に貢献することになります。そこで、グリーン物流とはどんな取組なのか、パートナーシップ事業とはどういうメンバ―による事業なのかを、平成27年度の優良事業例などを参考にしながら見ていきます。

省エネや輸送効率化でCO2排出量を減らす


グリーン物流というのは、環境負荷の低減を可能にする物流体系のことです。具体的には、省エネや輸送の効率化によるCO2の排出量の少ない物流体系を指します。CO2の排出は、エネルギー消費によるものが主因であり、エネルギー消費量の多い事業分野ではCO2排出量が多いということになります。

国内のエネルギー消費量の推移をみると、石油危機の起きた1973年度~2014年度のエネルギー消費量は、全体で1.2倍となっています。同期間のGDP(国内総生産)の伸びは2.4倍ですから、全体としては、省エネやエネルギー利用効率の向上が進んだことになります。しかし、事業部門別にみると、エネルギー消費量の伸びに大きな違いが見られます。

エネルギー消費量の最も多い産業部門では、同期間のエネルギー消費量の伸びは0.8倍と、むしろ減少しています。それに対して、トラックなどの運輸部門のエネルギー消費量は1.7倍、エアコン、冷蔵庫などの家庭部門は2.0倍と大きく増大しています。さらに、小売り・流通、オフィス・店舗・ホテルなどの業務部門は2.4倍と、各部門の中では、最も高い伸びとなっています。

流通・業務部門のグリーン化を重点的に推進


国土交通省と経済産業省は、流通などの業務部門でのこうした伸びは、省エネやエネルギーの効率利用などが、他部門に比べ遅れていることによるとみています。そのため、両省は、地球温暖化対策や省エネ・省資源の観点から、小売り・流通などの業務部門のエネルギー消費量を重点的に抑制していく必要があると判断、その対策の一つとして、グリーン物流体系の構築に取り組むことにしました。

グリーン物流体系づくりでは、物流における環境負荷低減対策として、トラック輸送などから、内航船舶や鉄道などの輸送に切り替えることが重要とされています。また、そうした輸送機関の切り替え(モーダルシフト)には、流通関係業界、輸送、運輸などの物流業界が一体となって取り組む必要があることから、両省は平成17年に両省及び、メーカー、流通、物流関係企業が連携した「グリーン物流パートナーシップ会議」を設置して、モーダルシフトの普及・促進に取り組んでいます。

モーダルシフトでCO2量を削減


モーダルシフトによるCO2排出量削減効果については、国土交通省が平成25年度にデータをまとめています。それによると、輸送機関別のCO2排出量原単位(1トンの荷物を1km運ぶのに排出されるCO2量)は、鉄道が最も低く、25g(CO2換算)、内航船舶は39g、それに対して営業用トラックは217gとなっています。トラックによる輸送は、環境負荷が高いだけでなく、交通混雑に拍車をかけたり、大気汚染の要因ともなっています。

3300社の企業がパートナーシップ会議に会員登録


グリーン物流パートナーシップ会議は、産業横断的に協働してグリーン物流を進めていくことに最大の眼目があります。平成27年1月現在、約3300社の企業が会員登録していますが、今後さらに会員企業を増やし、モーダルシフト実施の輪を広げていきます。

モーダルシフトの普及・促進の啓蒙の手段として同会議で実施しているのが、優良事業の表彰です。表彰は毎年度実施されていますが、平成27年度の募集から、表彰対象を拡大しました。従来のCO2排出量削減の取組に加え、大気汚染や騒音など、それ以外の環境負荷の低減や、物流における生産性向上の取組も対象とします。また、荷主と物流事業者の連携に限定せず、関係する複数の事業者との連携も対象としています。

優良事業表彰には国土交通省、経済産業省の各大臣表彰のほか、各省の担当審議官表彰及びグリーン物流パートナーシップ会議特別賞があります。ここでは、平成27年度の大臣表彰を例に、グリーン物流の取組をご紹介します。

▽国土交通省大臣表彰

【取組】
モーダルシフトに加えた総合的なグリーン物流への取組 ~パレタイズ(物品のパレットへの積み付け作業)運用の標準化やドライバー不足に備えたダイバーシティ物流ネットワークを指向して~

【事業者】
・神戸モーダルシフト推進協議会(代表)・ネスレ日本株式会社・全国通運株式会社・日本貨物鉄道会社(JR貨物)

【事業の概要】
事業者は2012年より、納品先顧客への鉄道・内航海運・トラックを活用した直接配送の取組を実施しています。今回、この取組のさらなる拡大に向け、輸送距離に応じた最適な配送モードの設定によるCO2削減の最大化や、パレタイズ運用の標準化によるドライバーの配送効率の向上、業務負荷の低減を実現しました。また、保育施設の開放などにより、女性・高齢者が働きやすい環境整備を進めました。

【取組のポイント】
輸送距離に応じた最適な配送モード(トラック・鉄道・内航海運)の設定により、戦略的なモーダルシフトを実現し、大幅なCO2の排出削減を実現しました。
②パレタイズ運用の標準化による作業の効率化と生産性の維持・向上を図りました。
③ネスレ日本の関連施設における保育施設をドライバーに開放するなど、女性・高齢者など多様な人材活用を可能にするダイバーシティ物流ネットワークを構築しました。

【取組実施前と実施後の成果】
ネスレ日本では、茨城県稲敷市にある霞ケ浦工場のほか、2工場の製品を、全国13ヵ所の同社中継工場でばら積みし、そこからトラックなどで納品先顧客の倉庫に配送するというのが基本的な流れでした。しかし、取組実施後は、モーダルシフトによって、工場から直接納品することでトラックなどの輸送車両台数の削減とパレット配送の拡大を図ることができました。また、パートナー企業ドライバーへの拠点託児所の開放などにより、女性ドライバーを活用でき、生産性向上に役立てることができました。
取組の結果、CO2の排出量を2464トン、取組前に比べて87%削減することができました。

▽経済産業省大臣表彰

【取組】
「イオン鉄道輸送研究会」専用列車による環境負荷低減の取組

【事業者】
・イオングローバルSCM(サプライチェーンマネジメント 代表者)・日本貨物鉄道株式会社・全国通運株式会社

【事業の概要】
イオン鉄道輸送研究会は、イオンの物流を担当するイオングローバルSCMと、JR貨物が幹事を務めるモーダルシフト促進のための研究会です。イオングローバルSCM、JR貨物のほかにも、さまざまな業種の企業が参加しています。専用列車による環境負荷低減の取組は、日曜日に運休となるダイヤを活用して貨物輸送用の臨時列車を運行する取組です。イオンや、ネスレ日本、江崎グリコ、花王、P&Gが、トラックの幹線輸送を列車による共同運行に切り替えました。その結果、運休となっていた列車の有効活用を図ることができ、モーダルシフトによるCO2排出量の削減や繁忙期の輸送力向上を実現できました。

【取組のポイント】
列車の有効活用のほか、各荷主が日曜日の運行に合わせて貨物の集約等の調整を行うなど、配送の効率化が可能になりました。

【取組実施前と実施後の成果】
取組実施前は、各企業がそれぞれ独自にトラックや列車による輸送を行っていましたが、企業が列車の共同運行に取組むことにより、トラック輸送に比べCO2排出量が537トン削減できました。

■著者■ 
廣瀬 鉄之介
エネルギー・環境ジャーナリスト
産経新聞社経済記者、編集委員として、経済・産業・エネルギー政策等の記事執筆を担当。退社後、経済産業省所管団体「原子力発電技術機構」及び「社会経済生産性本部」で原子力、その他エネルギー関係の広報、出版物の編集に携わる。原子力発電、電力自由化、再生可能エネルギー等に精通。

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