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こうすれば食品ロスを減らせる! 経産省が製・配・販・連携プロジェクト


制作:廣瀬 鉄之介(エネルギー・環境ジャーナリスト)

こうすれば食品ロスを減らせる! 経産省が製・配・販・連携プロジェクト

賞味期限内であるにもかかわらず捨てられる大量の食品ロス。「もったいない」という気持ちだけでなく、資源・エネルギーの無駄遣い、さらには配送・輸送の無駄にもつながっています。食品ロスの削減は、メーカー、流通、小売り業界はもちろん、消費者を含めた、いわば社会的課題といってよいでしょう。そうした中、経済産業省が、メーカー・流通企業・卸小売り企業による、製・配・販連携プロジェクトを推進し、先ごろ、その成果をまとめました。どのようにして食品ロスを減らせるのか、プロジェクトの背景や取組の内容、その成果をご紹介していきます。

年間500万~800万トンが捨てられる


食品ロスは、賞味期限内の、食べられるにもかかわらず捨てられてしまう食品を言います。日本国内の食品ロスは、農林水産省の調べによると、年間500万~800万トンといわれています。これは、世界全体の食料援助量の約2倍に相当します。日本のお米の生産量にも匹敵するほどの量です。

食品ロス多さは、日本だけでなく、欧米などの先進国では、かねてから指摘されています。国際連合食料農業機関(FAO)の報告書によると、農業生産から消費に至るフードチェーン全体で、世界の生産量の実に3分の1に相当する約13億トンの食料が毎年廃棄されているといわれます。

一方で、食料不足から、飢餓、栄養不足に見舞われる国々も少なくありません。世界の栄養不足人口は、減少傾向にあるものの、依然として8億7000万人が栄養不足の状態にあるといわれます。これは、世界人口の8人に1人の割合です。特に栄養不足人口の多いのは、南アジア、サハラ以南の南アフリカ諸国です。

欧州は2025年までに食品ロスを半減


欧州では、こうした実情から、EC委員会を中心に、食品廃棄物削減を含む「資源効率化計画」を策定、また、欧州議会では、2014年を「ヨーロッパ反食品廃棄年」と位置づけ、2025年までに食品廃棄物を半減するとともに、廃棄物の発生抑制の具体的措置をEC委員会とEU(欧州連合)諸国に要請する決議を採択しています。OECD(経済協力開発機構)では、食品廃棄に関するデータの収集と各国の比較を行い、政策提言に結び付けることを目的に分析作業が進められています。

日本政府も、食料不足で深刻さの厳しい、アフリカのナミビア、リベリア、コンゴの3共和国に対し、積極的な食料支援を行っています。3ヵ国に対する日本のODA(政府開発援助)の食料援助量は合計で約600万トンといわれます。しかし、日本国内で廃棄されている食品はそれを上回る量ですから、いかに日本の食品ロスが大きいかが分かります。

作り過ぎ、返品、過剰在庫などが要因


日本における加工食品の中で、食品ロスが生ずるのは、小売・卸売り業者から食品メーカーへの返品、食品メーカーの作りすぎ、過剰在庫などによるものです。これらは、その多くは、メーカー、卸売り、小売の各段階での生産量や注文量のミスマッチに要因があります。つまり、需要予測の誤差が生じ、それが、廃棄や返品ロスのムダを生ずる一因になっているわけです。

食品ロスを少なくし、廃棄や返品ロスの無駄を少なくするためには、需要予測の精度を高め、メーカー、卸売り、小売のそれぞれの段階での注文量のミスマッチをなくすことが、きわめて重要となります。それによって、ムダのない生産、流通、販売を可能にすることができるのです。

需要予測の精度向上に気象情報が重要


食品の場合、季節や天候など、気象条件によって、需要量が変動する食品が少なくありません。例えば、お豆腐は気象状況によって売り上げが変化すると言われます。また、鍋物に使われる加工食品は、冬場に需要が増えます。そうした食品の持つ季節性から、需要予測の精度向上には、気象情報が非常に重要な要素となるのです。

経済産業省が、製・配・販の連携プロジェクトに取り組むことにしたのは、注文量のミスマッチをなくすとともに、気象情報を需要予測に活かす観点から、日本気象協会に参加してもらい、食料需要量と気象との関連性についてのデータ分析を行うことにしたのです。

同省のプロジェクトは、「需要予測の精度向上による食品ロス削減および省エネ物流プロジェクト」という名称で実施されています。このプロジェクトでは、気象情報とPOS(販売時点情報管理)データなどのビッグデータを解析し、高度な予測を行います。平成26年度次世代物流システム構築事業の一環として行われました。

日本気象協会を実施主体に


プロジェクトの参加者は、一般財団法人日本気象協会を実施主体とし、食品メーカーからは、(株)Mizkan(本社・愛知県半田市)、相模屋食料(株)(本社・前橋市)、卸売り事業者として、国分(株)(本社・東京都中央区)、小売り事業者からは(株)ココカラファインヘルスケア(本社・横浜市)、国分グローサーズチェーン(株)(本社・東京都中央区) 、一般社団法人新日本スーパーマーケット協会(事務局・東京都千代田区)、(株)ローソン(本社・東京都品川区)、関連事業者として(株)アットテーブル(本社・東京都品川区)、(株)シグマクシス(本社・東京都港区)がそれぞれ参加しました。関連事業者の2社はオブザーバーとしての参加です。また、プロジェクトの調整、アドバイス等を行うため、気象庁、大学、企業による有識者委員会も設置されています。

生産、発注の予測の誤差が一因に


プロジェクトの実施に際して、大量の食品ロスを発生させている、食品の生産・流通ルートの現状分析を行いました。それによると、現在、メーカー、卸売り事業者、小売り事業者のそれぞれの企業が、独自のPOSシステムなどのデータをもとに需要予測を行っているのが一般的です。そのため、それぞれの企業の予測データや予測に用いられるデータは、流通全体の流れの中で、必ずしも共有されているわけではありません
その結果、各流通段階での生産量や発注量の予測に誤差が生じるため、食品の廃棄や返品などの無駄を生ずる一因となっています。

気象情報のデータを事業者が共有


プロジェクトでは、気象情報に関するデータを、メーカー、卸・流通事業者、小売り事業者が共有することで、食品の原材料である農作物などの生産・価格動向を把握します。一方、POSシステムなどのビッグデータを各事業者が共有することで、出荷、仕入れ量などを予測します。それらのデータを突き合わせることにより、無駄のない食品の生産・出荷・仕入れなどが可能になるのです。

経済産業省は、そうした製・配・販の連携プロジェクトの成果として、去る4月に、まず、季節商品といわれる「冷やし中華つゆ」(Mizkan製)と日配品である「豆腐」の2品目について、売上高、発注量、CO2排気量、気象条件等に関する需要予測と解析を行いました。

その結果、従来、余剰に生産されていた冷やし中華つゆについては約40%、豆腐については、約30%それぞれ削減することができました。

今後、同プロジェクトでは、対象商品を拡大するとともに、対象地域も、これまでの関東地域から、全国に拡大する予定です。対象商品は、従来の2品目から、日配品、季節商品をそれぞれ拡大する方針です。日配品では、牛乳、パン、お惣菜、練り物などの日足の短い商品を、季節商品では、清涼飲料水や麦茶、乾めんなどを対象に加えることにしています。

省エネ、CO2排出削減の意義も


経済産業省によると、製・配・販の連携プロジェクトは、食品ロスの削減が最大の目的ですが、それに伴う、省エネルギー、CO2の排出削減の意義も見逃せません。食品ロスは、需要量以上の商品を生産した結果、流通事業者などからメーカーへの返品回数が増え、輸送・配送業者の車両稼働の増大を招いています。

近年、エネルギー使用に伴うCO2の排出量は、最も多い企業や工場の生産・業務活動(全体の62%)に次いで、運輸部門が23%を占めており、トラックなどからの排出削減が課題となっています。

まとめ


食品ロスの削減には、生産から流通、販売に至るサプライチェーン全体での適正な需要予測が欠かせません。それと同時に、食品の賞味期限の設定に関しても、消費者などの要望を踏まえた、合理的なルールづくりが求められるようです。

■著者■ 
廣瀬 鉄之介
エネルギー・環境ジャーナリスト
産経新聞社経済記者、編集委員として、経済・産業・エネルギー政策等の記事執筆を担当。退社後、経済産業省所管団体「原子力発電技術機構」及び「社会経済生産性本部」で原子力、その他エネルギー関係の広報、出版物の編集に携わる。原子力発電、電力自由化、再生可能エネルギー等に精通。

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