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公開日:2017年2月1日

労働条件通知書で飲食店の労使トラブルを防止


制作:おぬおぬ(行政書士・ライター)

労働条件通知書で飲食店の労使トラブルを防止

お店の経営にあたり、自分一人でお店に立つのか、従業員を雇うのか、重要な問題です。
店舗の規模や営業時間などにもよりますが、完全にオーナーさん一人での経営というのはあまりお勧めできません。
ピークの時間帯には人手が足りないことでお客さんを逃がすことになりますし、オーナーさんが体調を壊してしまったら代わりがいない、ということのリスクが高いということは明白ですね。
一度に10人以上の方が滞在できる規模であれば、従業員の雇用を考えるべきでしょう。

但し、従業員を雇うには様々なルールがあります。このルールを最低限は理解し守っていないと従業員とのトラブル(労使間紛争)が発生する危険性があります。労使間のトラブルでは、お店側が法律上定められたルールを守っていない場合が多く、仮に争ったとしても従業員側の言い分が認められるケースが多いのが特徴です。
その為、従業員とのトラブルが一旦発生してしまうと損害賠償や未払い賃金の支払いを迫られ、経営に予期せぬダメージを与えることになります。私も職業上、「退職するにあたり、未払いの残業代100万円を請求したいのですが、相談に乗って下さい。」といったご相談を受けることは多く、退職する人数が多い場合や、小規模なお店の場合は、死活問題になり得ます。
しかし、労使間紛争は、雇い入れの際に決めるべきことをきちんと決めておけば、事前に防ぐことが出来た、ということがほとんどです。ここでは従業員を雇う際に必要な手続きについてまとめて解説していきます。

労働条件通知書を作る


従業員を雇う際には、労働条件を書面にて通知することが雇う側の義務になっています。
つまり、いわゆる労働条件通知書の作成が必須なのです。これを怠ると処罰の対象にもなりますし、後々、労働者と労働条件についてのトラブル発生の元になりますので必ず作成し、雇い入れの際には労働者に渡しましょう。

労働条件通知書に関しては、よく「労働契約書とは違うの?」というご質問を受けます。労働条件通知書と労働契約書とは、正確には別の書面です。しかし、要は定められた項目を書面にて労働者に通知すれば良い訳ですから、労働条件通知書の記載事項を、労働契約書に記載して、一つの書類にするということも可能です。

尚、労働契約を結ぶにあたり、書面によって提示しなければならない事項は以下の通りです。

① 労働契約の期間に関する事項
② 就業の場所・従事する業務に関する事項
③ 始業・就業の時刻・所定労働時間を超える労働の有無・休憩時間・休日・休暇・交代制に関する事項
④ 賃金の決定・計算・支払い方法、時期、締切日、昇給等に関する事項
⑤ 退職・解雇に関する事項

上記の①~⑤は必ず記載しなければいけません(絶対的記載事項といいます)。

⑥ 退職金手当の定めが適用される労働者の範囲、退職手当の決定・計算・支払い方法・支払い時期に関する事項
⑦ 臨時に支払われる賃金・賞与・最低賃金に関する事項
⑧ 労働者に負担させるべき食費、作業用品その他に関する事項
⑨ 安全及び衛生に関する事項
⑩ 職業訓練に関する事項
⑪ 災害補償及び業務外の傷病扶助に関する事項
⑫ 表彰及び制裁に関する事項
⑬ 休職に関する事項

⑥~⑬は相対的記載事項といって、これらの定めをする場合には必ず記載しなければなりません(賞与を払う場合には賞与についての記載が必須、等)。

『労働条件通知書』書式サンプル(厚生労働省)
http://www.mhlw.go.jp/bunya/roudoukijun/roudoujouken01/

つまり、雇ってみたけれど売り上げが悪いから給料は少なくしよう、と使用者が一方的に決めるのは当然ダメなのです。
雇う前に雇う際の条件を整理し、明確にして通知しなければなりません。また、一定以上の制裁や強制貯金の禁止など、逆に決めてはいけない事項もあり、労働条件通知書や労働契約書はなかなか複雑です。
自分の事業の場合に何を決めれば良いのか判断がつきにくい、自社の労働条件を書面上どのように表現すれば良いのか分からない、という場合には社会保険労務士へ相談するのが良いでしょう。「契約書を自分で作ったので見て欲しい。」という依頼を受けてチェックをすると、依頼者さんが自分で考えている契約とは全く違う意味の契約書になっていた、ということもあります。労働契約書は労使間の約束を証明する非常に重要な書類です。くれぐれも慎重に。

雇い入れの際に必要な書類の交付義務は基本的に雇う側が負います。不要なトラブルを避ける為にも最低限、労働条件通知書と雇用契約書は準備しましょう。

労務管理に関する仕組みを整える


従業員を雇う以上、その管理を行うことも使用者の義務です。
具体的には、労働者名簿や、出勤簿、賃金台帳等の書類の準備、労働時間の管理、給与の計算、残業をする可能性があるのであれば36協定を締結し労働基準監督署へ届け出る、従業員の数によってはその他にも就業規則の作成(常時10人以上の労働者を使用する場合)等、様々な労務管理の仕組みを作り、正確に運用しなければなりません。

労働保険に加入する


労働保険とは、労災保険と雇用保険を指します。労災保険は、お店で業務上、従業員が怪我をした場合や病気になった場合に、本来、オーナーさんが賠償をしなければならない訳ですが、その肩代わりをしてくれる重要な保険です。雇用保険は主には従業員を失業から守る保険ですが、加入していることで助成金の申請が可能になったりと、オーナーさんにも加入をしていることの利益は大きいです。どちらも保険は従業員を雇う場合には加入が必須です(雇用保険には例外あり。)。保険料も低く抑えられていますので、従業員を雇用する場合には必ず加入しましょう。

社会保険は必須?


社会保険とは健康保険と厚生年金を指します。従業員の生活保障の為には欠かせないものなのですが、保険料がそこそこかかることもあり、加入をためらうオーナーさんもいらっしゃいます。

誤解しているオーナーさんもいらっしゃるのですが、この社会保険、法人の場合は例え従業員を雇っていなくても加入が必須です。
選べるのは個人事業のオーナーさんだけです。個人事業の飲食業は任意加入ですので、社会保険に加入することのメリットと保険料の支払いが発生することの負担を比較し、加入を検討して下さい。

以上、従業員を雇う際の必須事項について簡単に説明させて頂きました。人材はお店の宝です。
安心して働くことが出来る労働条件で雇い、正確な勤怠管理を行うことや福利厚生の仕組みを整えることは、労使間トラブルを避ける為だけでなく、有能な人材の確保、定着につながり、事業の発展に大きく資することは間違いありません。

■著者■ 
おぬおぬ
行政書士。バーテンダーの経験を活かし、飲食店関連許認可、民事法務、入管業務を中心に、顧客との相談が得意な行政書士として活動。 ライター業も行っています。社会保険労務士有資格者、介護福祉士、宅地建物取引士を兼務。

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