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電気、ガス、灯油事業者向けに初のエネルギー総合診断サービスを提供


制作:廣瀬 鉄之介(エネルギー・環境ジャーナリスト)

昨年4月からの電力全面自由化に続いて今年4月からガスの全面自由化がスタートします。自由化にともない、様々な業種の企業が、電力、ガス小売り事業に参入しており、その数はこれまでに400社以上にのぼります。そうした電力、ガス小売り事業者にとって、顧客開拓の重要な営業ツールとなるのが、エネルギー診断サービスです。従来は、電力に限定した省エネ、料金診断サービスなどがありましたが、ガスの全面自由化によって、電気もガスも、さらには灯油までを含めたエネルギー全体の総合診断サービスが求められます。そうしたニーズに対応して、このほど、国内で初めてエネルギーの総合診断サービスが開発されました。エネルギーの総合診断サービスとはどんな内容なのか、事業者にとってどんなメリットがあるのかなどを探っていきます。

凸版印刷が多様な事業展開


このサービスを開発したのは、凸版印刷です。同社は印刷大手ですが、これまで、印刷テクノロジーをベースとした、情報コミュニケーション事業、生活・産業事業、エレクトロニクス事業などの分野を積極的に開拓し、進出を図っています。今回のエネルギー総合診断サービスは、同社の生活・産業事業分野の一つと位置付けられています。

エネルギーの総合診断サービスの開発は、近年、電力事業やガス事業に進出する企業が急増し、顧客獲得のための営業ツールとして重要性が高まっていることによるものです。電力事業に進出する企業は、昨年4月からの電力全面自由化によって大幅に増え、今年2月末現在で、経済産業省に登録された事業者は383事業者に上っています。ガス事業者も、今年4月からの全面自由化を控えて進出が増えており、3月8日現在26事業者となっています。ガス事業への進出が比較的少ないのは、電力の送電ネットワークが全国的に整備されているのに対し、ガスの場合、導管の敷設が大都市など地域的に限られていることによります。

電力、ガスの相互乗り入れが進む


電力やガスの全面自由化により、参入企業は今後とも増える見通しですが、自由化によって、従来の電力会社、ガス会社といった仕分けがなくなり、相互乗り入れによって、いずれも総合エネルギー企業としての事業展開が進むとみられます。その場合、営業の決め手となるのが、顧客へのサービスツールです。これまでに電力事業に進出した小売り電気事業者、ガス事業に進出した小売りガス事業者は、従来の地域大手電力会社、大手ガス会社を除けば、大多数は、資本金規模の比較的小さい中堅・中小企業です。また、進出事業者は、異業種からの参入がほとんどで、電力、ガスなどのエネルギー診断に関するノウハウの蓄積や技術的な実績を持ち合わせていないのが実情です。

電力やガスなどのエネルギー診断は、顧客のエネルギー消費量の推移や実績をベースとして、顧客に最適なエネルギープランや省エネ、料金プランを提案することが大きな目的です。その際、診断のベースとなるのは、エネルギー消費量の推移や実績データです。エネルギー消費量やその推移を計測するには、スマートメーターやHEMS(ホームエネルギーマネジメントシステム)の導入が不可欠といわれます。スマートメーターは、通信機能を備えた次世代電力計測計で、2020年までに各家庭に100%導入をめざして、現在、大手地域電力会社が整備を急いでいます。HEMSは家庭における電気器具、家電製品等を、ネットワークで結び、それぞれの電力消費量をモニターで見える化する一方、電力会社との情報連絡によって、ピーク時電力の消費抑制等の対応がなされます。

「生活時間」をベースにエネルギー消費を分析


スマートメーターやHEMSは今後、整備が進み、顧客のエネルギー消費量のデータ把握が容易になると思われますが、それは電力データに限られるうえ、すべての顧客のデータの取得は困難とみられます。そうした状況の中で、凸版印刷が開発したサービスツールは、単なる電力消費量の見える化だけではなく、顧客の家庭内での生活行動の量と電気、ガスなどのエネルギー消費量の推移との関連性に着目した点が大きな特徴です。このサービスツールを使えば、顧客の過去のエネルギー消費データがなくても、家庭のエネルギー消費実態を継続的に推定することができます。

凸版印刷の開発したエネルギー消費量の推定法は「REEDA」と呼ばれ、家庭内における時間ごとの生活行動の量と、エネルギー消費量を比較し、その関連性から、生活スタイルに合わせた最適なエネルギー利用法を提案するものです。具体的には、「生活時間」をエネルギー消費量把握のベースとしてとらえ、家族の人数や、一日の行動時間などが分かれば、電気やガスの消費量を推計できるという方法です。それによって、過去のエネルギー消費データがなくてもエネルギー消費傾向を分析でき、省エネや節電のアドバイスに活かせるというわけです。

凸版印刷はこれまで、経済産業省や環境省などの実証事業への参加を通じ、エネルギー事業者と家庭との、コミュニケーションを図ることを目的に、HEMSなどの「見える化」だけではない、新しいエネルギーソリューション手法について、実証を重ねてきました。その一環として、2012年から、早稲田大学と共同で、独自のエネルギー消費量の推定法として、「REEDA」の研究を進めてきました。

2013年からは富士通と共同で、家庭のエネルギーデータからエネルギー使用状況や生活行動を予測し、その分析結果をもとに、新しいマーケティングを実現する次世代レコメンドシステム(過去の購入履歴から新たな商品・サービスを推奨するシステム)の研究開発を進めてきました。

 

今回開発したエネルギー消費量の推定法(REEDA)と合わせ、富士通との共同研究による次世代レコメンドシステムを活用した、新たなサービスを事業者向けに提供していくことにしています。

省エネなどのスマートライフの提案も


その一つは、「スマートライフレポート」発行サービスです。スマートライフレポートは、消費者に対する分かりやすい電力利用状況やそれに応じた省エネアドバイス、省エネにつながる推奨家電製品情報など、各家庭ごとのライフスタイルに合わせた情報を、ダイレクトメールやWEBサイトにレポート形式で紹介するサービスです。従来、消費者固有のエネルギー情報といえば、電力会社やガス会社の電気、ガスの検針票しかありませんでした。「スマートライフレポート」では、消費実態に即したさまざまなデータ分析がなされています。

新たなサービスとしては、「スマートライフレポート」以外に、「料金プランレコメンドプラン」があります。このプランは、それぞれの家庭の電力データをもとに、電力料金をシミュレーションし、家庭ごとのライフスタイルに合ったお得な料金プランを提案する内容です。従来は、消費者がネットの個別サイトで、電力消費量の実績データを入力して料金プランを選択する方法が一般的でした。新サービスは、総合診断サービスを実施するエネルギー事業者が、顧客と、電気、ガスの契約を結ぶだけで自動的にプランの提供が可能になります。

このほか、エネルギーポイント発行やクーポン配信サービスなどのサービスも併せて実施することにしています。凸版印刷は、こうしたエネルギー総合診断サービスツールを、ガスの全面自由化が始まる4月から、事業者向けに本格的に提供していく方針です。当面、2018年度で、約100億円の売上を目標にしています。

まとめ


凸版印刷のエネルギー総合診断サービスは、総合エネルギー企業をめざす電力、ガス、石油等の事業者にとって、顧客開拓の有力ツールになるとみられます。単に、顧客開拓だけでなく、今後普及が進むと予想されるスマートハウスや、スマートコミュニティづくりにおけるエネルギーの最適利用などにとっても、有益なサービスになると期待されています。

■著者■ 
廣瀬 鉄之介
エネルギー・環境ジャーナリスト
産経新聞社経済記者、編集委員として、経済・産業・エネルギー政策等の記事執筆を担当。退社後、経済産業省所管団体「原子力発電技術機構」及び「社会経済生産性本部」で原子力、その他エネルギー関係の広報、出版物の編集に携わる。原子力発電、電力自由化、再生可能エネルギー等に精通。

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