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ガス全面自由化を控え、大手電力3社が販売攻勢


制作:廣瀬 鉄之介(エネルギー・環境ジャーナリスト)

ガス全面自由化を控え、大手電力3社が販売攻勢

今年4月から、ガスの全面自由化がスタートします。それを控え、ガス事業への参入を決めた東京電力(東電エナジーパートナー=東電EP)、中部電力、関西電力の大手電力3社が、都市ガス販売で攻勢をかけようと準備を急いでいます。大手電力会社は、昨年4月の電力小売りの全面自由化の際には、地域大手ガス会社の参入で、守勢に立たされましたが、ガスの自由化では、反転攻勢に出るチャンスとみられ、その戦略が注目されています。3社のガス販売戦略を探っていきます。

東電EPはニチガスと提携


東電EPは昨年12月26日、都市ガス小売り事業に関し、日本瓦斯(東京都中央区、ニチガス)と業務提携契約を締結しました。この契約は、具体的には、2017年4月以降、首都圏を中心とする東京ガスエリアで、ニチガスが営業活動を展開し、獲得した顧客に対し、東電EPから卸供給を受けた都市ガスを販売する内容です。

東電EP自体も、7月から、東京ガスエリアを中心に都市ガスの販売を予定しており、初年度(2017年度)で、東電販売分及びニチガス販売分を併せ、15万件相当の販売を目指しています。ニチガスは、これまで関東地域を中心に、都市ガス、LPガス(プロパンガス)の販売実績を持ち、現在、一般家庭をはじめ、商店、事業所、工場など、ニチガスグループ全体で32万件に都市ガスを販売しています。今回の東電EPとの提携により、2017年度には、東電EP及びニチガスグループ全体で合計50万件相当の顧客を獲得し、2019年度中には100万件に拡大する目標を掲げています。

東京ガスの牙城を切り崩す


今回のガス全面自由化により、家庭や事業所など新たに開放される市場は、首都圏で、従来独占的に供給していた東京ガスの供給量の約3分の1(LNG換算約400万トン)に相当するとみられています。この量は、家庭、事業所件数で約1000万件とみられており、東電EP及びニチガスグループはその約1割の顧客の獲得が目標ということになります。東京ガスの牙城にくさびを打ち込む形です。

東電EP及びニチガスグループは、そうした目標達成のため、最終ユーザーや、都市ガス販売に新規参入する企業に対し、様々なサービスを提供する「都市ガス事業プラットフォーム」の構築を進める方針です。同プラットフォームは、東電EPやニチガスグループが保有する都市ガスの供給、販売に関する機能やノウハウを融合し、最終ユーザーや販売企業に最適な形のサービスとして提供する内容です。サービスとしては、都市ガスの託送手続きや保安業務、機器のメンテナンスやその販売、業務システムの構築などが考えられています。東電EPでは、そうしたプラットフォームの構築により、都市ガスの安定的な供給と顧客サービスの充実を図りたいとしています。

大阪ガスより割安の関電のガス料金メニュー


関西電力も、4月からのガス事業への参入を決め、このほど、家庭や飲食店向けの小規模需要家向けガス料金メニューを発表しました。それによると、家庭向けでは、ガスの使用量や時間帯、季節に関係なく、すべての需要家がお得になるメニューとして「なっトクプラン」を提供します。月間ガス使用量33立方mの平均的需要家では、大阪ガスの「一般料金」と比べて年間約5%(約3200円)安く、さらに電気とのセット割と早朝契約割引を合わせると、年間8%(約5500円)安くなると試算されています。また、ポイントサービスも実施し、年間約300円相当のポイントが貯まるとされています。こうした「なっトクプラン」やポイントサービスは、小規模事業所など、全面自由化で新たに対象となる法人も加入できます。

新たに自由化対象となる法人は、飲食店などの小規模事業所のほか、宿泊施設、工場、病院など、ガスを比較的多く使う法人です。モデルケースでは、月間使用量800立方m以上の需要家の場合、大阪ガスの「小型業務用季節別契約」と比べると、年間約20%(約19万円)安くなります。また、電気とのセット割と早期契約割引を合わせると、年間24%(約22万円)お得になります。

さらに、月間ガス使用量が5000立方m以上の需要家、例えば、病院、ホテル、大型スーパー、ショッピングセンター、大工場などの需要家の場合、大阪ガスの「時間帯別B契約」と比べると、年間で約15%(約74万円)安くなります。電気とのセット割引にした場合、早期契約割引を合わせると約19%(約93万円)お得になります。

関西電力は、同社100%出資の電気通信事業会社ケイ・オプティコムを設立しており、同社は小売り電気事業者として登録されています。ケイ・オプティコは今年1月より、「なっとくプラン」及び、ガスと電気、インターネットサービスを組み合わせた「関電ガスなっトクプラン」の事前申し込みの受け付けを始めています。

関西電力はまた、ガスの販売で新たに大阪府や京都府など2府4県の関西エリアで、地域電気店の販売・経営等を支援する大阪府電機商業組合や、セキュリティサービス会社東洋テックなどとも提携し、ガスやガス関連器具の販売、安全・保安面での業務に取り組んでいくことにしています。

岩谷産業と「関電ガスサポート」を設立


さらに関西電力は、ガス事業会社の岩谷産業と共同で「関電ガスサポート」を設立、ガスの販売から、機器の保安などメンテナンスに至るまで、顧客をサポートします。関電ガスは、関西電力で取り扱うガスの通称です。具体的には、「関電ガスサポート」が、岩谷産業の100%子会社であるイワタニ近畿と提携し、「関電ガス」の訪問販売や機器の修理・補修、買い替え等の保安業務を行います。また、関電ガスの販路拡大戦略を進め、岩谷産業のLPガス販売会社で組織する会員会社やその他地域のLPガス事業者との提携を広げていくことにしています。

中部電力は5年間で20万件以上の販売目指す


中部電力は2016年11月にガス事業への参入を表明し、経済産業省にガス小売り事業者としての登録を行いました。同社は当面、愛知県、岐阜県、三重県の3県で、東邦ガスの都市ガス需要家を対象に、ガスを販売する方針です。主に、一般家庭が対象となり、5年間で20万件以上の販売を目指します。ガス販売の場合、安全性対策が第一の課題となるため、同社は社内に保安を専門に扱う組織を新設し、さらに、実績のある会社と提携し、顧客への保安体制に万全を期す方針です。

中部電力は、火力発電所で使用するLNG(液化天然ガス)を海外から大量に輸入しています。輸入量は年間約1200万トンで、この量は都市ガス最大手の東京ガスの年間販売実績に匹敵します。同社は、こうした調達力を背景に、これまでのガス自由化の過程で、大口需要家に対し、ガス・LNGの販売を行ってきました。また、東京電力とも燃料調達事業で合弁会社JERA(ジエラ)を設立し、LNG調達量は年間約4000万トンと、世界屈指の規模となっています。こうした強力な調達力をバックに、4月からのガス全面自由化で、積極的な販売攻勢をかけることにしています。

総合エネルギー企業を目指す戦略(まとめ)


電力の自由化は2000年から始まりましたが、ガスはそれ以前の1995年から、大口需要家から順次、規模の小さい需要家へ自由化の範囲を段階的に広げてきました。残された一般家庭や商店、小規模事業所などの小口需要家も今年4月から自由化され、それによってすべての需要家がガス会社を選べるようになります。ただ、電力とは異なり、ガスの場合は、導管が、全国的に敷設されているわけではなく、自由化されるとはいえ、新規参入会社のガス供給地域は限定されます。大手電力3社の場合、東電EPは、首都圏を中心とする東京ガスの供給エリア、関西電力は、関西地方を中心とする大阪ガスの供給エリア、中部電力は中部地方の東邦ガスの供給エリアとなります。また、ガス事業への参入企業は、2016年末で電力3社など計9事業者にとどまっています。導管敷設やLNG調達力がカベとなっているためです。電力自由化の際には、大手ガス会社が電力事業に参入しましたが、今回は、大手電力会社がガス事業に参入することになります。いずれも、電気とガスを取り扱うことにより、総合エネルギー企業を目指して販路を拡大する戦略といえます。

■著者■ 
廣瀬 鉄之介
エネルギー・環境ジャーナリスト
産経新聞社経済記者、編集委員として、経済・産業・エネルギー政策等の記事執筆を担当。退社後、経済産業省所管団体「原子力発電技術機構」及び「社会経済生産性本部」で原子力、その他エネルギー関係の広報、出版物の編集に携わる。原子力発電、電力自由化、再生可能エネルギー等に精通。

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