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東電・ソニーがIoTを活用した電力ビジネスに進出


制作:廣瀬 鉄之介(エネルギー・環境ジャーナリスト)

東電・ソニーがIoTを活用した電力ビジネスに進出

さまざまな事業で今、IoT(Internet of Things)を活用したビジネスが普及し始めています。IoTとは、あらゆるモノがインターネットにつながることを指しますが、それによって、新たなサービス、ビジネス、技術などが生み出される可能性が広がっています。IoT社会とも呼ばれますが、IoTでは比較的立ち遅れていたエネルギー分野でも、このほど、東京電力がソニーと組んで、IoTを活用したビジネスを立ち上げることになりました。電力の供給事業がメインであった同社が、IoTビジネスに参入するというのも、電力の全面自由化によって、さまざまな企業との競争が激化する一方、スマートメーターやHEMS(ホームエネルギーマネジメントシステム、家庭のエネルギー管理システム)などの普及により、エネルギーの情報・通信化が急速に進むと判断されるためです。同社のIoT戦略やIoT社会の行方を探ってみました。

スマートホーム分野を対象にサービス提供


東電は去る8月23日、東電エナジーパートナー(東電ホールディングスの100%出資子会社)とソニーモバイルコミュニケーションズ(ソニーの100%出資子会社)との間で、スマートホーム分野でIoTを活用したサービスの開発やその提供に向けた業務提携の検討を始めたと発表しました。両社はすでに基本合意書を締結しており、来年以降、IoT活用によるサービスの提供を具体化していくことにしています。

電力事業は、今年4月から小売りの全面自由化によって、さまざまな業種分野からの企業参入が相次ぎ、既存の大手地域電力会社は、厳しい競争に直面しています。とりわけ国内最大の電力ユーザーを抱える東京電力は、他地域の大手電力会社やガス会社、電鉄会社、石油会社などとの間で顧客獲得合戦を強いられており、電力供給事業をメインとしたこれまでの事業形態では、経営の長期的展望が開けないとみられています。そのため、電力全面自由化を契機に、事業の再構築によって、活路を見出す必要に迫られています。

顧客の立場から快適で安心な暮らしを支える


東電は、今年4月から、全面自由化を踏まえ、ホールディングカンパニー制に移行しました。東京電力ホールディングス(持ち株会社)のもとに燃料・火力発電事業会社、一般送配電事業会社、小売電気事業会社の3社体制を敷いています。3社のうちの小売り電気事業会社が東電エナジーパートナーであり、電力販売だけでなく、電気を含む多彩なエネルギー商品やサービスを提供することにしています。電気を軸としながらも、顧客の立場から、快適で安心な暮らしやビジネスを支える商品・サービスを提供することを目指しています。東電は自社の将来像を「未来型インフラ企業」と位置づけていますが、電力供給の枠を超えた新たなビジネスに活路を見出す戦略と見ることができます。

この新たなビジネスの一つが、今回のスマートホームにおけるIoTサービスといえます。同社は、首都圏を中心とした関東地域で、多くの電力ユーザーを抱えており、これまでの電力供給の中で培ってきたHEMSやスマートメーターなどの技術・ノウハウを蓄積しています。スマートホームは、そうしたHEMS、スマートメーターを導入するユーザーを指しますが、それらのシステムや技術を、インターネットに接続して、暮らしやビジネスをより快適にしようというのが、IoTサービスのねらいです。

ソニーはリカーリング事業に期待


一方、ソニーモバイルは、双方向コミュニケーションを可能にする商品や通信技術、分かりやすいユーザーインターフェース(アプリ操作画面)のデザインやサービス、ソリューション(課題解決策)の提供などで多くの実績を持っています。また、東電と提携することで、リカーリング型事業の展開に期待できると判断しています。リカーリング型事業は、直訳すれば繰り延べ収益型事業ということですが、具体的には、電気、ガス、通信料金などの毎月の料金収入を収益の基盤とした事業です。一過性の利益の確保でなく、安定した収益をあげられるということから、近年、企業のビジネスモデルとして普及しています。

東電エナジーパートナーとソニーモバイルとの提携の当面の対象事業は、スマートホームの構築による快適な住環境の構築です。HEMSによる家電製品、エアコン、照明、太陽光発電、電気自動車などの機器やセンサーなどをネットワーク化して、機器間の連携を行う一方、それらをインターネットに接続することで、ビッグデータの分析が可能となり、住む人に快適で、しかもエネルギーの最適利用、効率利用を実現することができるようになります。

モビリティ、福祉・健康、流通・販売でIoTが進展


IoTを活用したビジネス、サービスは、エネルギー分野では比較的立ち遅れているといわれますが、生産部門では、センサー性能の進化により、様々な現場データの収集が可能になっています。生産・在庫データや設備の稼働状況を把握し、それらを分析・活用することで、生産ラインの効率化・高度化を実現しています。今後は、生産部門だけでなく、エネルギーをはじめ、自動車などのモビリティ、福祉・健康などのヘルスケア、流通・販売分野などで、IoTビジネスが急速に進展するとみられています。

経済産業省のデータによると、IoTでつながる機器台数は近年、目覚ましい勢いで拡大しています。2013年に30億台程度だった機器の台数は、2020年には8倍以上の250億台程度に達すると予測されています。IoTでつながる機器が増えれば増えるほどデータ蓄積量は飛躍的に拡大し、蓄積されたデータを用いて新たなビジネスモデルを構築した事業者が、それそれの事業分野で主導権を握る可能性があるとみられています。

IoTによる新たなビジネスとして期待されているモビリティ分野では、自動車を安全かつ快適に目的地まで案内してくれる自動走行システムが実用化の日程にのぼっています。それによって交通事故の減少はもちろん、年間12兆円ともいわれる国内交通渋滞による損失を軽減できるほか、CO2排出量の減少にも寄与できます。

ヘルスケアでは予防医療や食事・運動ビジネスも登場


福祉・健康などのヘルスケア分野では、運動ログ(履歴記録)等の健康管理装置や、高齢者・要介護者の生活補助装置、センサー付き衣類、スマートウオッチ(身体ログ用の時計)などのウエアラブル端末などの機器がIoTとして、インターネットにつながります。その結果、データ集積による予防医療サービスや食事やエクササイズなどのビジネスに役立つことが期待されます。また、これらのデータを活用することで、患者ごとに個別化された医療を提供するビジネスも登場するとみられます。

流通・販売分野では、現在POS(販売時点情報システム)が普及していますが、それらはいずれも各社ごとの管理であり、また、メーカー・卸売りを含めた情報共有がなされていません。そのため、製造・流通・販売等の垣根を越えてサービスを提供する新たなビジネスモデルが登場するとみられます。また、販売分野におけるIoT機器として、顧客の店内移動ログ信号等の受信装置やセンサー付きレジ、センサー付き商品陳列棚、在庫管理用タグリーダー(情報読み取り装置)などの機器が普及するとみられています。それらによって、顧客の商品購入状況を把握し、顧客の好みに対応した商品・サービスを迅速に提供することが可能になります。また、そうした情報管理・提供ビジネスが登場すると期待されます。

まとめ


東電エナジーパートナーとソニーモバイルのIoTサービスの提携は、分野としてはエネルギーの範囲ですが、東電の将来戦略からみれば、エネルギー以外の関連分野にもビジネスの対象が拡大される可能性があります。経済産業省のIoTビジネスに関するデータでも、従来の企業、業界の枠を越えた企業間、業種間連携が、ビジネスの主流になるとみられています。IoT社会は、このような特定事業の枠を越えた形でビジネスが展開されることになりそうです。

■著者■ 
廣瀬 鉄之介
エネルギー・環境ジャーナリスト
産経新聞社経済記者、編集委員として、経済・産業・エネルギー政策等の記事執筆を担当。退社後、経済産業省所管団体「原子力発電技術機構」及び「社会経済生産性本部」で原子力、その他エネルギー関係の広報、出版物の編集に携わる。原子力発電、電力自由化、再生可能エネルギー等に精通。

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