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発電しない再エネ設備は認定を取り消し FITに新制度


制作:廣瀬 鉄之介(エネルギー・環境ジャーナリスト)

発電しない再エネ設備は認定を取り消し FITに新制度

再エネ固定価格買取制度(FIT制度)の見直しが急がれていますが、FIT法改正案が先ごろ国会で成立したことから、改正法を踏まえ経済産業省は来年4月から、見直しによる新制度を実施に移すことになりました。新制度では、設備認定だけを確保して、発電に至らない事業用太陽光発電について、認可を取り消すという厳しい対応を行います。また、従来、太陽光発電に偏重したFIT制度を改め、地熱、風力、水力、バイオマスなどの他の再エネ電力の導入拡大に向けた対策も実施する方針です。新制度を中心に、FIT制度見直しの具体的な内容と、今後の再エネ導入の行方を追っていきます。

2030年度再エネ比率を22~24%へ


再エネ固定価格買取制度は、2012年7月からスタートした制度で、クリーンでしかも貴重な国産エネルギーである再生可能エネルギーの導入促進が最大の目的です。2015年7月に作成された国の長期エネルギー需給見通し(エネルギーミックス)では、現在、総発電電力量に占める再エネの割合(12%)を、2030年度に22~24%に大幅に引き上げる目標が示されています。

2030年時点での電源構成は、液化天然ガス火力(LNG火力)27%、石炭火力26%に次いで、再エネ電力が位置づけられており、再エネ電力のウエートは、その時点での原子力発電の22~20%を上回る規模です。つまり、再エネ電力を、火力発電と肩を並べる日本の電力の柱にしようという位置づけです。

未稼働案件増加などのひずみ


FIT制度は、そのような再エネ電力の導入拡充を支援する施策として実施されたのですが、制度導入以降、制度のひずみが生じていることも事実です。その一つが、太陽光発電の導入を急ぐあまり、太陽光発電の設備が増大する半面、稼働しない、いわゆる未稼働案件となっている太陽光発電設備が増えたことです。未稼働案件は、発電事業者が、国の設備認定だけを確保し、実際には、電力会社の送電系統に接続しないで、眠っている設備というわけです。

経済産業省によると、再生可能エネルギー全体でFIT制度による設備認定を受けた発電設備容量は8768万kW(2016年3月末)ですが、そのうち、送電系統に接続して運転を始めた設備は1875万kW に過ぎません。つまり、設備認定を受けたものの実際に発電している設備は、2割に過ぎないのです。こうした未稼働案件は、9割以上が太陽光発電設備といわれます。

太陽光発電設備で未稼働案件が増大したのは、一つには、太陽光発電を再エネ電力拡充の中核に位置付けた国の方針にあります。

買取費用を国民が賦課金の形で負担


FIT制度は、太陽光発電、風力発電、地熱発電、小水力発電、バイオマス発電の再エネ電力を、発電事業者から、電力会社が、長期固定価格で買い取ることを義務づけた制度です。買取価格は、再エネ電力の導入状況や設備コストなどを考慮し、毎年度、経済産業省が有識者の意見を踏まえて設定することになっています。買取価格は、電力会社の買取費用にほぼ相当し、電力会社は買取費用を、賦課金の形で、電気料金に上乗せする仕組みになっています。すなわち、FIT制度は、国民の負担によって、再エネ発電の導入を促進する仕組みといえます。

FIT制度による買取価格は、制度発足当初、太陽光発電について比較的高い価格の設定がなされました。その結果、太陽光発電事業者は高い価格で買い取ってもらえる設備認定をまず獲得したいという動きが強まったのです。買取価格は、毎年度改定されますが、一度決まった買取価格は、その後20年間(事業用設備)同じ価格で買い取ってもらえることになります。そのため、発電事業者にとっては、高い価格設定がなされた時期に設備認定を取得したほうがメリットのある事業になります。

太陽光発電の買取価格は、制度発足後、毎年引き下げられきましたが、制度発足時あるいはその後1~2年の間の、高買取価格時期の認定設備が急拡大しました。

系統接続に電力会社が“待った”


しかし、一方で、電力会社への接続は、発電設備が急増したことで、円滑に進まないという問題を生じました。電力会社にとっては、太陽光発電や風力発電などの出力変動の大きい電力を受け入れるためには、それ相当の調整電源が必要となります。調整電源というのは、出力変動の大きい電源の出力を平準化するために、火力発電や水力発電の稼働率を変化させる必要があるのです。電力系統の中で出力が変動すると、周波数に変化が生じ、工場の操業やコンピュータの作動を狂わせ、ひいては、地域的に停電の事態を招きかねません。出力変動の大きい、いわゆる自然エネルギーを受け入れるには、電力会社にとっては一定の限界があり、それが、再エネ電力受け入れに“待った”をかける要因になりました。

FIT制度のそうしたひずみから、経済産業省は、FIT法改正案の成立を契機に、設備認定に新たな制度を創設することにしました。具体的には、FIT制度による固定価格買取制度の適用を受ける再エネ設備については、送電系統への接続契約の締結を要件とすることにしています。また、すでに認定を受けた設備についても、原則として、新制度での認定の取得を求めます。

新制度では、事業開始前の審査に加え、事業実施中の点検・保守や事業終了後の設備撤去などの順守を求め、違反した場合の改善命令・認定取り消しなどを行います。

設備認定に伴う新制度の実施により、すでに認定を受けた発電事業者であっても、送電系統に接続していない未稼働案件は、認定を取り消される可能性があります。

買取価格低減へ入札制度


今回のFIT制度の見直しでは、設備認定の新制度とともに、太陽光発電などの買取費用の増大が、国民の賦課金負担の増大を招いていることから、買い取り価格低減のための入札制度導入なども実施することにしています。電力会社間の競争促進によって、買い取り価格の低減を図る目的です。

再エネ買取費用は、とくに太陽光発電の設備急増によって増大、その結果、再エネ賦課金総額が急増しています。2012年度では1306億円でしたが、2013年度では3289億円、2014年度には6520億円、さらに2015年度では、1300億円と、年々倍増する勢いで伸びています。再エネ賦課金の増加は、その分、国民の電気料金負担の増大をもたらしていることになります。

数年先まで見通せる価格提示を


FIT制度の見直しでは、買い取り価格設定における太陽光発電の優遇を縮小する半面、他の再エネ電力の設備の導入を促進する方針です。具体的には、再エネ発電事業者の参入を促すため、買い取り価格に関して数年先までを見通せる価格提示の方法を検討することにしています。地熱や風力発電、中小水力発電、バイオマス発電などは、事前調査をはじめ、土地の確保や設備の建設に比較的長期間のリードタイムを必要とします。現在のFIT制度における単年度ごとの買取価格の設定では、再エネ事業の将来予測が困難との指摘もあり、経済産業省では、数年先を見据えた価格設定方法を提示したい、としています。

FIT制度に関しては、電力の小売り全面自由化に対応した、制度の見直しも実施する方針です。小売り全面自由化では、地域の枠をなくし、全国規模での電力融通を行う体制を目指しますが、それに対応して、再エネ電力の買取も、従来の買取義務者である小売り電気事業者から、一般送配電事業者(電力大手の送配電部門)に切り替えることにしています。それによって、電力の広域融通をより円滑化し、多くの再エネ電力の導入を可能にしたい考えです。

まとめ


設備認定における新制度やFIT制度の見直しは、エネルギーミックスを踏まえた電源間でのバランスの取れた再エネ導入の促進をめざすことに目的があるといえます。その結果として、国民負担の低減が可能になるといえます。

■著者■ 
廣瀬 鉄之介
エネルギー・環境ジャーナリスト
産経新聞社経済記者、編集委員として、経済・産業・エネルギー政策等の記事執筆を担当。退社後、経済産業省所管団体「原子力発電技術機構」及び「社会経済生産性本部」で原子力、その他エネルギー関係の広報、出版物の編集に携わる。原子力発電、電力自由化、再生可能エネルギー等に精通。

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