介護・スーパーマーケット・建築・不動産・飲食業界向けノウハウ・事例・提案資料が多数の情報サイト

182 views

東京都が電力事業に参入、地域新電力との連携広げる


制作:廣瀬 鉄之介(エネルギー・環境ジャーナリスト)

東京都が電力事業に参入、地域新電力との連携広げる

東京都がこのほど、地域新電力会社として電力ビジネスに参入し、話題を呼んでいます。
地域新電力会社は、多くの地方自治体で設立の動きが相次いでいますが、東京都の場合、福岡県みやま市などいくつかの地域新電力会社と連携する点が注目されています。東京都では、7月から地域新電力会社のモデル事業として、再生可能エネルギー電力の供給を始める予定です。東京都の電力事業への参入の狙いを探っていきます。

福岡県みやま市と連携


東京都は去る4月、地域新電力会社としてのモデル事業を実施すると発表しました。地域新電力会社は、公益財団法人の東京都環境公社がその事業主体となります。公社は経産省からすでに小売り電気事業者としての登録認可を得ています。モデル事業では、公社が各発電事業者から再生可能エネルギー電力(太陽光発電とバイオマス発電)を買い取り、当面、東京都の施設に供給します。また、福岡県みやま市とは、みやま市などが設立した新電力会社「みやまスマートエネルギー」と協定を締結し、電気の需給調整のサポートや再生可能エネルギーの共同調達、運用、ノウハウの共有などによって、電力ビジネスのサポートを受けることにしています。

調布市や気仙沼市の発電事業者から電力を調達


発電事業者としては、太陽光発電については東京都調布市の「調布まちなか発電(株)」、バイオマス発電は宮城県気仙沼市の「気仙沼地域エネルギー開発(株)」が予定されています。調布まちなか発電(株)は、調布未来エネルギー協議会が運営する公共施設屋根借り太陽光発電事業会社です。調布市の地域福祉センターや公民館、保育園、市営住宅などの施設の屋根を借りて設置した太陽光発電から電力を買い取ります。

気仙沼地域エネルギー開発は、地域の間伐材を買い取り、それを燃料として発電するバイオマス事業会社で、通常の買取価格より高い値段で間伐材を買い取る一方、買い取りには地域通貨を使用するなど、地域振興に貢献している発電会社です。

東京都環境公社では、当面この2社から電力を調達し、都の環境科学研究所および水素情報館「東京スイソミル」に供給しますが、将来は、一般の事業所、オフィスなどにも供給を予定しています。

電力の地産地消めざして地域新電力会社が相次ぐ


地域新電力会社は、地方自治体の間で電力の「地産地消」や地域の雇用拡大などの地域振興を目指して、設立する動きが目立っています。全国の自治体に先駆けて新電力会社を設立した、群馬県中之条町は、「一般財団法人 中之条電力」を設立し、電力の小売り事業を始めました。2013年設立当初は、町役場や小学校などの公共施設を対象に電力供給を行っていましたが、今年4月の小売り電力の全面自由化以降、一般家庭をはじめ、商店、事業所、オフィスなどにも供給を行う予定です。

みやまスマートエネルギーと電力融通


今回東京都が連携した福岡県みやま市の新電力会社「みやまスマートエネルギー」は、2015年3月に、みやま市や、地元の銀行などと共同出資で設立された、自治体による初の電力事業会社です。 自治体、地域金融機関、民間のノウハウを活用した地方創生のモデルケースとして、地域新電力会社の間で注目されています。地域新電力会社は、このほかにもいくつか例がありますが、みやま市の場合、東京都とは、再生可能エネルギー電力の融通などで協力することにしています。

自治体による地域新電力会社設立は、エネルギー・電力の地産地消によって、雇用の拡大や地域の活性化を図るのが最大の目的です。エネルギー・電力の地産地消は、地域に賦存する小水力、太陽光、バイオマス、地熱、風力、廃棄物などが対象となります。いわゆる再生可能エネルギーであり、発電時にCO2を排出しないクリーンなエネルギーです。地域新電力会社は、こうした地域に眠る資源を活用した発電事業者から電力を調達し、地域の家庭や商店、地元企業、学校などの公共施設に供給します。

地元資源を活用するため、比較的安いコストで発電でき、地域の企業や住民に割安の電気を供給することができます。自治体にとっても、市役所や公民館などの公共施設の電気代が安くなるため、その分の予算を、福祉など他の事業に振り向けることが可能になります。

不可欠のエネルギーマネジメント技術


地域新電力会社が電力を調達したり、地域への安定的な供給を図るには、ユーザーの省エネはもちろん、電力の「見える化」を推進したり、発電事業者とユーザーとの需給調整を図るなど、エネルギーマネジメント技術が欠かせません。

地域新電力会社が、地元資源の開発やその活用を図り、電力の供給を行うには、様々なノウハウや技術が必要になります。そのため、新電力会社では、IT(情報通信技術)企業と連携することで、サポートを受けるケースが多いようです。「みやまスマートエネルギー」の場合も、電力情報管理システム会社のエプコ(本社・東京)がみやま市と共同事業協定を結んで、ノウハウを提供したり、サポートを実施しています。東京都が、みやま市と事業協定を結んだのも、そうした電力事業に関してみやま市が蓄積したエネルギーの情報管理技術の活用、アドバイスを受けることに目的があるといえます。

エネルギー・電力の「見える化」や電力の需給管理技術の具体化には、新たなビジネスや人材の確保が欠かせません。自治体が、新電力会社に期待するのは、資源・エネルギーの「地産地消」だけでなく、そうした新たなビジネスの創出や雇用の拡大を図る点にも目的があります。

当面は再エネ電力の安定供給


東京都が、今回、環境公社を軸として、電力ビジネスに参入するのは、地産地消といった、他の自治体における目的とはやや異なります。当面は、再生可能エネルギーの調達の多様化を図ることによって、電力の安定供給をめざします。再生可能エネルギーは、エネルギーの種類によって、出力が不安定であり、その補完・調整をする必要があります。補完・調整のためには、多様な再生可能エネルギーを組み合わせるとともに、地域以外の遠隔地からも調達の必要に迫られます。地域新電力会社との連携は、そうしたエネルギーの多様化、安定化に役立ちます。

最終的には最先端のスマートコミュニティづくりへ


東京都の電力ビジネス参入は、地域新電力会社との連携の輪を広げ、再生可能エネルギーの相互融通、エネルギー・電力の安定供給を進めるとともに、最終的には、2020年の東京オリンピック・パラリンピックに向けて、世界最先端のスマートコミュニティづくりを進める点に大きな狙いがあるといえます。

スマートコミュニティは、経済産業省が2011年から全国で展開している「次世代エネルギー・社会システム」の実証事業を指します。ITや蓄電池技術などのエネルギー管理システムを用いた、快適で安心・安全なエネルギー・社会をめざす町づくりです。再生可能エネルギーだけでなく、最終的には、電気、ガス、熱供給などのすべてのエネルギーのネットワーク化を図り、無駄のない効率的なエネルギー供給と、災害に強い町づくりを目的としています。すでに、北九州市、豊田市、けいはんな学研都市、横浜市の4都市で、実証事業を終え、今後、同事業で得られた成果を、各地のスマートコミュニティづくりに活かす方針です。

東京都は2012年5月、「東京都省エネ・エネルギーマネジメント推進方針 ~節電の先のスマートエネルギー都市へ~」を策定し、低炭素、快適性、防災力の3つの目的を同時に達成する「スマートエネルギー都市づくり」を目指しています。

まとめ


東京都が、地域新電力会社による電力ビジネスに参入するのは、スマートエネルギー都市づくりへの布石にしたいとの発想によるといえます。スマートエネルギー都市は、名前こそ違え、現在、国が展開するスマートコミュニティづくりと軌を一にするものです。スマートコミュニティは最終的には水素社会の実現をめざしていますが、東京都も、「水素社会の実現に向けた東京戦略会議」を設置し、東京オリンピック・パラリンピックで、水素社会の姿の一部を世界に発信したいと考えています。電力ビジネスは、将来の夢の実現に向けた一里塚といえるでしょう。

■著者■ 
廣瀬 鉄之介
エネルギー・環境ジャーナリスト
産経新聞社経済記者、編集委員として、経済・産業・エネルギー政策等の記事執筆を担当。退社後、経済産業省所管団体「原子力発電技術機構」及び「社会経済生産性本部」で原子力、その他エネルギー関係の広報、出版物の編集に携わる。原子力発電、電力自由化、再生可能エネルギー等に精通。

本テーマに関係する関連記事まとめ