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ノンフロンな世界-自然冷媒機器導入支援制度の適用企業


制作:廣瀬 鉄之介(エネルギー・環境ジャーナリスト)

ノンフロン化への国や企業の対応-自然冷媒機器導入の取組事例

ノンフロン化への取組の中で、国の自然冷媒機器導入支援制度の適用を受けた企業の中からいくつかをご紹介していますが、今回は、イオン(株)と、(株)タカキベーカリーの2社を取り上げます。

イオン(株)


国内外に1万8000店舗を展開

イオンは、スーパー、コンビニ、専門店など多彩な小売り事業を展開するグループで、2014年度末のグループ店舗は、国内およびアジア地域を中心に1万8740店舗を数えます。イオンという名前は、ラテン語で「永遠」を意味する言葉です。企業理念も、そこから生まれました。同社の「サスティナビリティ基本方針」(持続可能性に配慮した経営方針)では、「低炭素社会の実現」「生物多様性の保全」「資源の有効利用」「社会的課題への対応」を重点課題として取組を進めています。2011年に同社は「自然冷媒宣言」を打ち出しましたが、それも、「サスティナビリティ基本方針」に基づく取組です。

同社は2009年に省エネ型自然冷媒機器を導入しました。欧州では以前より自然冷媒の導入が進んでおり、食品メーカーや小売店などで構成されるTCGF(The Consumer Goods Forum)という団体では、地球温暖化への影響の小さい自然冷媒の導入を促進すべきである、との機運が高まっていました。そうした動きにも刺激されて導入を決断したのです。最初はイオングループの食品スーパーである「マックスバリュ」が導入先となりました。

導入の検討の段階では、「省エネ効果は果たしてあるのだろうか」といった導入を不安視する声もあったのですが、まずは導入してみよう、と衆議一決しました。導入後の省エネ効果は10~20%とまずまずの成果でした。現在では、20%前後の省エネ効果をあげています。

同社の「自然冷媒宣言」は、イオンとしての、いわば低炭素社会に向けた宣言であり、2015年度以降、新設される店舗すべてに自然冷媒(CO2)を採用するとともに、既存の店舗においても順次、自然冷媒に切り替えていく予定です。「マックスバリュ」での省エネ型自然冷媒機器の効果が明確になったため、今後も導入を継続し、省エネおよびノンフロン化をさらに徹底していく方針です。

現在、同社では、大型の総合スーパー、コンビニでも導入に取り組んでいます。家庭用冷蔵庫では、ノンフロンが当たり前となっていますが、同社でも、ノンフロン機器が当たり前になるよう、導入を加速させていくことにしています。

とはいえ、省エネ型自然冷媒機器の導入には、課題もいくつかあります。一つはコストです。自然冷媒機器の製造メーカーの数が、まだ少ないうえ、様々な法規制がコスト高の要因になっていると思われます。コンビニで使われる冷凍冷蔵ショーケースは汎用性もあり、メーカーの参入も多く予想されるので、コストが抑えられる可能性があります。しかし、総合スーパーなどで使われる機種は多種多様であり、それぞれの生産台数も少ないので、新規参入のメーカーも限られると思われます。

そのほかの課題としては、都市部での騒音の発生があります。室外機からの音は結構うるさいので、その対策が必要となります。同社は、別置型の冷凍冷蔵ショーケースの一部を、室外機内蔵型にするなどの対策を施しています。それによって、騒音を抑えることができると考えています。騒音対策に関しては、機器メーカーと共同で実証試験を行っており、同社の京都桂川店など2店舗で内蔵型ショーケースを導入しています。

(株)タカキベーカリー


将来の規制環境の変化に対応

タカキベーカリーは1948年に広島で創業した製パン企業です。系列会社には、全国に小売直営店舗「アンデルセン」を展開する(株)アンデルセンや、ベイクオフ(工場で製造した冷凍生地を店舗で焼く)店舗の「リトルマーメイド」等を展開している(株)マーメイドベーカリーパートナーズ等があります。

タカキベーカリーの主力製品の一つは冷凍パン生地です。現在、売上高の25~30%を占めています。品質の良い冷凍パン生地を安定的に生産し、消費者に届けることを事業の大切なポイントと考えています。そうした中で、事業を取り巻く環境変化が時としてリスクになる場合があります。代表的なリスクの一つは、規制の変化といえます。同社では「フロンに関する規制」が今後の事業におけるリスクの一つになると考えています。

特定フロンの一種であるHCFCは2020年に生産が禁止されますが、現在、多くの設備で使用されている代替フロンのHFCも、地球環境対策の規制の一つとして、いずれ禁止されるとみられています。同社では、そうした規制環境の変化から、HCFCからどの冷媒に切り替えるべきかを、数年前から検討してきました。

冷凍冷蔵機器を、製品の保管用として使用する場合は、フロンへの対応の優先順位はそれほど高くないかもしれませんが、同社の機器の場合、冷凍パン生地を生産する際の急速冷凍の工程で使用する機器です。いわば、製品の付加価値を決める極めて重要な工程での不可欠な機器なのです。そのため同社では、長期的な規制環境の変化を見越し、代替フロンではなく、CO2やアンモニアといった自然冷媒機器に思い切って切り替える選択をしたわけです。自然冷媒の選択により、長期的なリスクを回避すると同時に、省エネにも成果を上げています。同社では、省エネ型自然冷媒機器の導入によって、当初予測していた電気の使用量より、30%程度削減できたと見ています。

■著者■ 
廣瀬 鉄之介
エネルギー・環境ジャーナリスト
産経新聞社経済記者、編集委員として、経済・産業・エネルギー政策等の記事執筆を担当。退社後、経済産業省所管団体「原子力発電技術機構」及び「社会経済生産性本部」で原子力、その他エネルギー関係の広報、出版物の編集に携わる。原子力発電、電力自由化、再生可能エネルギー等に精通。

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