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ノンフロンな世界-フロン対策の必要性


制作:廣瀬 鉄之介(エネルギー・環境ジャーナリスト)

ノンフロン化への国や企業の対応

昨年12月に採択された地球温暖化防止の枠組みである「パリ協定」によって、日本は、より一層、温室効果ガスの削減を求められています。温室効果ガスの中では、量的な割合としてはCO2が多いものの、温室効果という点では、フロン類が圧倒的に大きく、その排出抑制が急務となっています。フロン類は温室効果だけでなく、オゾン層の破壊を通じ、有害な紫外線の増加をもたらします。そのため、フロン対策は重要な政策課題となっています。そこで、国の取り組みやフロン排出抑制法の狙いや意義、企業の取り組み、欧米の動向などを5回にわたってご紹介していきます。

温室効果、オゾン層破壊度合の高い特定フロン


フロンは身の回りの多くの製品、機器、建材などに使われています。スプレー、エアコン、冷凍・冷蔵庫、パソコン、電子部品、携帯電話、カーエアコン、住宅用建材などです。フロンは、機器の使用中に漏えいしたり、修理や使用済み廃棄の段階で適切に回収されなかった場合、大気中に排出されます。

フロンのうち、温室効果やオゾン層破壊の度合いで最も高いのは特定フロンとされる2種類のフロン(CFCとHCFC)です。とくにCFCの温室効果は、CO2の1万900倍と言われます。

HCFCを2020年までに全廃


1985年のウイーン条約や87年のモントリオール議定書の採択では、そうした地球環境への影響の大きい特定フロンについて、2009年末までに全廃、HCFCに関しては、先進国は2020年までに、途上国は2030年までに、それぞれ原則全廃することが合意されました。合意を受けて日本政府は、これら2種類の特定フロンの生産量と消費量を段階的に規制し、CFCについては、すでに全廃を達成しています。HCFCについては、2020年までに生産量・消費量を全廃する予定です。また、政府はモントリオール議定書を受けて1988年にオゾン層保護法を制定し、それに基づき特定フロンの製造・輸入に関しても規制を加えています。

温室効果はCO2の1400~2000倍


HCFCについては、オゾン層の破壊や、温室効果の小さい、いわゆる代替フロン(HFC)への切り替えが進みましたが、代替フロンは、オゾン層の破壊こそありませんが、温室効果は、CO2の1400倍~2000倍といわれます。そのため、政府は、1992年の気候変動枠組条約及び97年の京都議定書の採択を踏まえ、HFCに関し企業に排出量の削減を義務づけました。産業界全体としても、排出抑制への取り組みを進めていますが、2020年に向けて、排出量はむしろ増加する傾向にあります。

フロン排出源は空調機器が58%と最多


経済産業省がまとめた、代替フロンの機器別排出源割合(2012年調べ)では、排出源として、店舗やオフィス用エアコン、ビル用のマルチエアコン(1台の室外機で複数のエアコンを稼働できる空調システム)などが排出量全体の約20%を占め、最も多い割合を占めています。次いで家庭用エアコンが18%などとなっています。輸送機関用エアコンなどを含めた空調機器全体からの排出が、フロン類排出量の58%と、過半を占めています。空調機器に次いで排出量が多いのは、冷凍・冷蔵機器で33%の割合となっています。この中には、冷凍機別置き型ショーケース(1台の冷凍機で複数台の運転を可能にするショーケースで、冷凍機内蔵型に対比される)が27%とかなり高い割合となっています。代替フロンの生産・消費は、全廃となったものの、このように、現在稼働している機器や装置の中にはいぜん多くの代替フロンが使われており、それが大気中に排出されているのです。

業務用冷凍空調機器の整備・廃棄時に回収義務


国は、2001年にフロン回収・破壊法を制定し、とくに排出の多い業務用冷凍空調機器について、整備や廃棄を行う際に、冷媒として使用されるフロン類の回収と破壊を義務付けました。破壊というのは、回収したフロンを技術的に無害化する処理方法です。現在、フロンの回収業者は、全国に約3万事業所が登録業者として事業を認められています。回収されたフロンは、フロン類の破壊業者の手で破壊されます。破壊業者は、現在、全国に70事業所が、事業者としての許可を受けています。

業務用冷凍空調機器は、例えば店舗用のエアコンやビル用マルチエアコン、冷凍・冷蔵ショーケースなどですが、これらの機器の整備時や廃棄時には、登録回収業者によって、フロンを適切に回収し、回収したフロンは破壊業者に引き渡されなければなりません。そうした処理を怠ったり、回収、破壊をせずにフロンを放出した場合には、法律に基づき50万円以下の罰金または1年以下の懲役に処せられます。

代替フロンの市中ストック増大など課題も


フロン類は、国の取組によって、排出抑制が進んでいますが、新たな課題も浮かんでいます。2000年代以降、冷凍空調機器の冷媒として用いられるフロン類に関し、特定フロンから代替フロンへの切り替えが進んだ結果、特定フロンはオゾン層保護法による生産規制などもあって大幅に減少していますが、代替フロンの市中ストックは増大し、フロンのストック全体も増える傾向にあります。

フロン類の回収量は、法律による回収の義務付けにより増加しているものの、回収率はフロン回収・破壊法の制定時以降、ほぼ30%程度で低迷しています。また、最近の経産省の調査では、冷凍空調機器の設備不良や経年劣化などにより、機器使用時の代替フロンの漏えいが想定以上であることもわかりました。業務用冷凍冷蔵機器の場合、漏えい率は年間13~17%に達しているとされています。そうした状況から、フロンに関する新たな課題への対策が急がれています。

■著者■ 
廣瀬 鉄之介
エネルギー・環境ジャーナリスト
産経新聞社経済記者、編集委員として、経済・産業・エネルギー政策等の記事執筆を担当。退社後、経済産業省所管団体「原子力発電技術機構」及び「社会経済生産性本部」で原子力、その他エネルギー関係の広報、出版物の編集に携わる。原子力発電、電力自由化、再生可能エネルギー等に精通。

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