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自販機セットの電力小売り新ビジネスが登場


制作:廣瀬 鉄之介(エネルギー・環境ジャーナリスト)

自販機セットの電力小売り新ビジネスが登場

街角やオフィス、事業所、病院、ショッピングセンターなど、あらゆる場所で目にする自動販売機。中でも多いのが飲料自動販売機です。その飲料自動販売機設置と電力小売りをセットにした新手のビジネスが登場し、話題を呼んでいます。飲料自動販売機設置と電力小売りセット販売の仕組みと、その目的を探っていきます。

自販機の電気代相当額を割り引く


電力小売りの全面自由化が4月1日から実施されましたが、それをビジネスチャンスととらえ、飲料自動販売機とのセット販売に乗り出したのは、アサヒ飲料(株)です。自販機設置と電気販売をセットにした取組は飲料業界では初めてです。同社は、小売り電気事業者のワタミファーム&エナジー社およびLED照明メーカーのサンコーライテック社とそれぞれ業務提携しました。ワタミファーム&エナジー社から電気を購入し、アサヒ飲料の自動販売機を設置した顧客に対して、既存の大手電力会社より最大で5%の料金を割り引くほか、自動販売機の電気代相当額を割り引くサービスを提供します。

ワタミファーム&エナジー社はサンコーライテック社とも業務提携し、サンコーライテック社に電力需給契約に関する顧客向けの営業窓口を担当してもらいます。

アサヒ飲料は、このように、ワタミファーム&エナジー社との提携によって、電力供給を確保するとともに、サンコーライテック社によって、顧客向けサービスや顧客の開拓などを図ります。そうした提携を通じて、アサヒ飲料として、自販機の設置拡大を図っていくことにしています。

ワタミファーム&エナジー社は外食・居酒屋チェーンのワタミの100%子会社で、風力発電や太陽光発電事業などの再生可能エネルギー事業のほか、小売り電気事業として、食品工場や店舗、学校、オフィスビル等への電力供給事業を行っています。また、食品リサイクルやリユースなどの資源循環、森林再生など、環境関連事業にも取り組んでいます。

サンコーライテック社は、LED(発光ダイオード)照明のほか、他業種とのコラボレーションによる、省エネソリューション・サービスなどの事業も手掛けています。

自販機の需要は近年、停滞ないし減少傾向


アサヒ飲料が、自販機をセットにした電力小売りビジネスに進出することにしたのは、自販機の需要が近年、停滞ないし、減少傾向にあるうえ、自販機を設置する顧客にとって、電気代がかなりのウエートを占めることによります。飲料自販機1台当たりの電気代は、ホット飲料、コールド飲料の割合によって異なりますが、1ヵ月平均5000円~1万円と言われます。

飲料自販機の場合、全国の設置台数は、近年、横ばいないし減少傾向にあります。2008年のリーマンショック後の景気の停滞や、2011年の東日本大震災などによって、国内の消費が大幅に落ち込んだことが要因です。2014年度では、台数は256万台となっています。前年の260万台から約2%の落ち込みです。

自販機は、飲料販売機のほか、自動サービス機、日用品雑貨自動販売機、たばこ自販機、食品自販機など、さまざま種類がありますが、中でも台数の多いのが、飲料自販機です。日本自動販売機工業会によると、2014年の自販機全体の設置台数は、全国で503万台となっており、飲料自販機は、ほぼ半数を占めています。

飲料自販機設置台数の低迷は、個人消費の不振もありますが、景気停滞による企業の業績不振が長く続き、オフィスの自販機の稼働率が大幅に低下したことを見逃せません。
自販機は、路面上での設置も多いのですが、それ以上に、オフィスや事業所、工場などの屋内での設置が比較的多い割合を占めています。リーマンショック後の数年間、企業内のリストラなど、雇用調整が続いたため、自販機利用者が少なくなったといわれます。オフィスビルによっては、自販機の設置台数を減らしたところも多いようです。残業が減り、夜間の利用が落ち込んだことも影響しています。

路面上の自販機も、コンビニや周辺の小売店との競争が激化し、利用者の減少が著しくなっています。また、従来、自販機でたばこと飲料を同時に買う人が多かったのですが、2008年に導入されたタスポ(たばこ自販機の成人識別システム)によって、タスポを敬遠した顧客がコンビニなどに流れ、自販機での飲料の「ついで買い」が減ったともいわれています。

国内の自販機設置は飽和状態


この2,3年は、景気回復の影響もあって、自販機の設置数の減少に歯止めがかかったといわれますが、全体的には、国内の自販機の設置は、飽和状態となっており、大幅な増加は見込みにくいのが現状です。

自販機の伸びが期待しにくい理由として、消費電力に伴う電気料金負担も無視できません。飲料自販機の場合、日中、深夜を問わず24時間稼働しているうえ、気温の高い盛夏には、強い冷却用電力、また、気温の低下する秋から冬、さらに春にかけては、ホット飲料に対する加熱用電力が加わります。

日本自動販売機工業会によると、自販機1台あたりの消費電力は、標準機種でおおむね500W~1000W程度が定格電力です。自販機には、自販機稼働用電力のほか、加熱・冷却用電力、照明用電力などが使われています。自販機1台当たり消費電力を1kWと仮定すると、1ヵ月当たり電気代は、約1万円強です。最近は、照明をLED照明に替えたり、明るい室内に設置された自販機の場合、照明をオフにするなどの、省エネ節電システムが内蔵された自販機も数多く登場しています。そのため、省エネ型自販機では、月額電気代は5000円程度にまで節約できるといわれています。

とはいえ、自販機を設置する企業、事業所はもちろん、個人の場合はなおのこと、電気代の負担が大きくのしかかります。仮に電気代を、省エネ型の自販機で、月5000円とすると、それをまかなうための自販機の売上は、1台で月間約500本以上を売り上げる必要があるといわれます。1日当たり17本以上をコンスタントに販売しなくてはなりません。飲料自販機でこれだけの売上を確保しようとすると、路面上では人が多く集まる場所、あるいはオフィスビル、社内食堂など、集客が見込める場所を選んで設置する必要があります。

かつては自販機が飲料メーカーのドル箱


飲料メーカーにとって、以前は、自販機が売上拡大のためのドル箱ともいわれました。しかし、現在は自販機の設置が思うように進まないのが現状です。国内のどの地域にも自販機がゆきわたり、設置余地が限られている現在、余程集客の見込める立地場所を選ばない限り、飲料メーカーにとっての販売の拡大は困難です。

アサヒ飲料が乗り出した自販機設置とセットにした電力小売り戦略は、そうした厳しい自販機設置の状況を克服する切り札としての役割を担うといえます。電力自由化により、コストの安い電力を確保することが可能になったことから、その分を自販機の電気代に充当し、顧客の自販機設置負担の軽減を図る戦略ということができます。

まとめ


電力小売りの全面自由化のもとでは、電力ユーザーが、電力の使用量、使用形態に合わせた電気を小売り電気事業者から買うことができます。自販機を設置する事業所、店舗、オフィス、個人は、必要な電力量に応じて、契約することができるようになりました。自販機を何台も設置する事業所、店舗などは高圧契約で、1~2台の個人の場合は低圧契約で電気を購入することも可能です。

高圧契約の場合は受電設備などでコスト増になりますが、電気代は安くなります。低圧契約を選ぶか高圧契約を選ぶかは電力使用量に応じてユーザーが選択できます。今回の自販機設置と電力小売りのセット販売では、アサヒ飲料が自販機電気代相当額を割り引くと同時に、自販機以外の電気代も5%割引されるので、ユーザーには、電気代負担が大幅に軽減されることになります。アサヒ飲料は、電気代の割引によって、飲料自販機の設置拡大を目指す考えのようです。

■著者■ 
廣瀬 鉄之介
エネルギー・環境ジャーナリスト
産経新聞社経済記者、編集委員として、経済・産業・エネルギー政策等の記事執筆を担当。退社後、経済産業省所管団体「原子力発電技術機構」及び「社会経済生産性本部」で原子力、その他エネルギー関係の広報、出版物の編集に携わる。原子力発電、電力自由化、再生可能エネルギー等に精通。

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