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出光興産が国内最大級の地熱バイナリー発電所建設

日本ロジテックの経営破たんにみる新電力に求める経営力とは


制作:廣瀬 鉄之介(エネルギー・環境ジャーナリスト)

出光興産が国内最大級の地熱バイナリー発電所建設

日本ロジテックの経営破たんは、小売り電力の全面自由化を目前にして、電力会社の選択を検討していた消費者、商店、小規模事業者などの電力ユーザーに冷水を浴びせる形となりました。同時に、小売り電力事業に進出している新電力会社などの関係者にも波紋を投げています。日本ロジテックの場合、自前の発電所を所有していないことが、経営破たんの要因の一つと言われます。そうした中で、自前の発電所の建設や増強に取り組む動きが広がっていますが、新電力会社の出光興産が、新たに国内最大級の地熱バイナリー発電所の建設を開始したことが、注目されています。地熱バイナリー発電所建設の意義と同社の電力ビジネスへの取組を探っていきます。

地熱エネルギーを効率的に電力に変換


地熱バイナリー発電は、地熱発電の一種で、低温の地熱の有効活用を図ることによって地熱エネルギーを効率的に電力に変換する発電方式です。地熱は、再生可能エネルギーの一つで、現在、国は太陽光発電、風力発電、小水力発電、バイオマス発電と並んで、地熱発電を固定価格買取制度の対象として、その普及・促進を図っています。

固定価格買取制度は、制度の対象として認められた5種類の再生可能エネルギー電力を、電力会社に買取を義務づけ、買取費用については、再エネ賦課金の形で電気料金に上乗せされ、国民全体が負担する仕組みです。賦課金の一部は、電力会社を通じて再エネ発電事業者に補助金として交付されます。つまり、国民全体の費用負担によって、再生可能エネルギー電力の普及を図ろうというわけです。

今年2月に決まった2016年度の再生可能エネルギー電力の買取価格は、制度発足の2012年度以降、太陽光発電が4年連続で引き下げられたのに対し、地熱をはじめ、風力、小水力、バイオマスの買取価格は据え置かれています。太陽光発電に関しては、制度スタート当初、その導入拡大を何よりも促進する必要があるとの政策判断に基づき、買取価格を比較的高い水準に設定し、発電事業者への利益を優遇したことによります。

太陽光発電の場合、買取価格が高く設定されたことから、発電事業者が増え、買取費用が急増しました。その結果、賦課金が増大し、電気料金負担が増えたことから、固定価格買取制度に対する見直し機運が高まりました。また、太陽光発電の送電系統への接続申し込みが、電力会社の受け入れ能力を超えて増大したため、接続の一時ストップという事態に陥りました。

太陽光偏重の買取制度に見直し論


見直し論の背景には、太陽光発電の急増とともに、制度そのものが太陽光発電に偏重していることへの批判があることを見逃せません。国はそうした批判を踏まえ、太陽光発電の買取価格を段階的に引き下げてきたのです。逆に、地熱など他の再生可能エネルギーについては、買取価格を据え置き、太陽光発電との価格差を相対的に縮小しました。

買取価格差の是正に関しては、太陽光発電以外の再生可能エネルギー電力をこれまで以上に後押ししようという政策的配慮が働いています。とくに地熱に関しては、太陽光発電のように、天候や日照に左右されず、いつでも、安定した出力でエネルギーを取り出せることが、魅力の一つになっています。

国も地熱発電促進に積極的な方針


国内の地熱資源量は、約2340万kWと推定され、これは、世界第3位の規模です。現在稼働している国内の地熱発電所は、17カ所、約52万Wとなっています。特に地熱発電は、発電コストが安く、出力が一定であるため、火力発電や水力発電などと同じように、安定的な発電が可能なベースロード電源としての役割が期待されています。そうしたことから、経産省は、今後、再生可能エネルギーの中でもとりわけ地熱発電の促進に力を入れるとしています。具体的には、地熱開発にあたって地元の理解を得るための地熱開発理解促進関連事業支援補助金や、地熱資源開発調査事業費などを予算化することで、地熱開発を積極的に支援する方針を打ち出しています。

出光興産の地熱バイナリー発電所の建設は、そうした国の政策支援を背景にしたものとみることができます。出光興産の場合、新電力会社として、「出光グリーンパワー」と「プレミアムグリーンパワー」の二つの子会社を設立しており、いずれも、経産省に登録を行っています。

出光グリーンパワーは、再生可能エネルギー電力のほか、リサイクル発電による電力や、石油などの化石燃料による電力を組み合わせて販売する方針です。プレミアムグリーンパワーは、再生可能エネルギー電力を可能な限り高めてユーザーに販売することにしています。

電力供給拡充策として大分で着工


出光興産のそうした電力小売り事業推進のための電力供給拡充策として、地熱バイナリー発電所の建設に踏み切ったもので、同社の100%子会社である出光大分地熱(株)の滝上事業所(大分県玖珠郡九重町)で着工しました。完成は2017年3月の予定です。完成後の発電容量は5050kW、年間発電量3100万kWhとなります。この規模は、国内の地熱バイナリー発電としては最大級のものです。稼働後は、固定価格買取制度を活用して電力会社に売電します。

滝上事業所は、九州電力の滝上発電所に発電用の蒸気を供給している事業所で、滝上発電所は、地熱発電所の規模としては九州で5番目、全国で11番目の規模です。発電部門は九州電力、蒸気部門は、出光大分地熱という形で、共同運営を行ってきました。今回、出光興産が地熱バイナリー発電所を建設することにより、同社独自の地熱発電所を保有することになります。

出光興産は、電力事業の展開にあたって、地熱をはじめ、再生可能エネルギー電力の発電、販売に積極的に力を入れる方針を打ち出していますが、それは、国のエネルギー基本計画で、再生可能エネルギーの比率の拡大が明示されているからです。2014年4月に決まったエネルギー基本計画では、現在、総発電電力量に占める再生可能エネルギーの割合約10%を、2030年には、22~24%にまで高める目標を示しています。この割合は、その時点における原子力発電比率20~22%を上回る水準で、現在の割合の2倍以上となるレベルです。

地熱のほか、太陽光、風力、バイオマスにも取り組む


再生可能エネルギーのそうした政策支援を背景に、出光興産も地熱発電のほか、太陽光発電、風力発電、バイオマス発電、バイオ燃料などに取り組んでいます。

電力の小売り全面自由化に際し、同社は、二つの新電力会社を設立していますが、この2社の販売電力の電源比率をみると、出光興産としての再生可能エネルギー電力の取り組みが鮮明となります。「出光グリーンパワー」の場合、2015年度の販売電力の電源比率は、再生可能エネルギー電源と廃棄物発電などのリサイクル電源を合計した値は、62%となっています。残り38%は、副生ガス発電や石炭火力などの化石燃料発電や卸電力取引所からの調達電力などとなっています。

出光グリーンパワーの電源比率は、電力小売りの全面自由化後の、2016年度には、再生可能エネルギー電源とリサイクル電源を合計した値が78%まで、大幅に高まる見通しです。
とくに、出光大分地熱・滝上事業所の地熱バイナリー発電が新たに加わることによって、再エネ電源比率が高まることになります。

「プレミアムグリーンパワー」の場合は、本来再エネ電源比率が高く、再エネとリサイクルを合わせた電源比率は2015年度で97%ですが、全面自由化後の2016年度には、98%と1%アップする見通しです。それも、地熱バイナリー発電が加わることによるものです。

出光興産は、地熱開発については今後ともさらに積極的に推進することにしています。具体的には、北海道阿女鱒岳地域や秋田県小安地域で、それぞれ構造試錐井掘削調査を進めています。地熱は、エネルギー自給率の低い日本にとって、数少ない貴重な国産エネルギーであり、その将来性に期待が寄せられています。

小売り全面自由化では、自前の電源が重要


電力小売りの全面自由化に際して、新電力会社がユーザーに電気を安定的に供給していくためには、自前の発電設備、電源の建設が極めて重要になります。出光興産は、再生可能エネルギーだけでなく、天然ガス発電に関しても、先ごろ、大阪ガスと共同出資で新会社および発電所を建設することを明らかにしています。ガスタービンコンバインドサイクル方式(ガスタービンと蒸気タービンによる複合発電方式)で、2020年代前半の運転開始を予定しており、発電規模は、第一期工事で約100万kW、最終的には約180万kWを目指しています。

まとめ


新電力会社は、地域電力会社に比べて自前電源の種類や数が圧倒的に少なく、電力の安定供給、安定販売には、電源の確保が必須ともいえます。新電力会社の中には、自社で電源を持たず、他の新電力や地域電力会社などから調達して販売する会社も多いのですが、グループ会社や系列会社から低コストで電力を調達できる会社は別として、電源を保有しない新電力会社の場合、いかに低コストの電力調達ができるかどうかが経営のカギを握るといえます。

■著者■ 
廣瀬 鉄之介
エネルギー・環境ジャーナリスト
産経新聞社経済記者、編集委員として、経済・産業・エネルギー政策等の記事執筆を担当。退社後、経済産業省所管団体「原子力発電技術機構」及び「社会経済生産性本部」で原子力、その他エネルギー関係の広報、出版物の編集に携わる。原子力発電、電力自由化、再生可能エネルギー等に精通。

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