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東芝の“地産地消”電力供給のねらいは?

神奈川県内で屋根借りによる太陽光発電事業を開始


制作:廣瀬 鉄之介(エネルギー・環境ジャーナリスト)

東芝の“地産地消”電力供給のねらいは?

地方自治体を中心に、エネルギーの“地産地消”の動きが活発になっていますが、東芝が神奈川県内で屋根借りによる太陽光発電事業を実施、2月1日から発電電力を県内の需要家に供給を始めました。大手の電機メーカーが、一地域での電力の地産地消に取り組むのは極めて珍しいケースです。その取組の中身と狙いを探っていきます。

神奈川県の電力供給システム事業に採択


東芝の取組は、神奈川県が昨年7月に公募した、「平成27年度地域電力供給システム整備事業」に採択されたもので、芙蓉総合リース及び東芝プラントシステムとともに事業を実施します。実施期間は2036年1月までの20年間となっています。

この事業では、芙蓉総合リースが太陽光発電設備に関する資金調達を行い、東芝プラントシステムが、東海大学柔道部寮の屋根を借りて太陽光発電設備を設置します。東海大学に対しては、屋根の賃料を支払います。発電電力は東芝に売電し、東芝は、買い取った電力を県内の需要家に安価に販売します。東芝は、昨年7月に特定規模電気事業者(新電力会社)として経済産業省に届出を提出しています。また、東芝プラントシステムも発電事業者として届出しています。

特定規模電気事業者は、契約電力が原則として50kW以上の需要家に対し、地域電力会社(神奈川県の場合は東京電力)の送配電ネットワークを通じて電力供給を行います。当面、県内の工場や事務所ビルなどの高圧需要家向けに供給を行いますが、4月の全面自由化後には、一般家庭向けにも電力販売を行います。

エネルギーの地産地消は、地域エネルギーである太陽光、地熱、水力、風力、バイオマスなどの資源を活用して発電し、その電力を地元で利用する取組で、国や地方自治体が、地域活性化の一環として全国的に推進しています。これまでの取組は主として、自治体、地元企業などが中心で、東芝のような大手電機メーカーの参入は非常に珍しいと言われています。

電力ビジネス拡大の突破口に


今回の東芝の取組は、小売電力の全面自由化を控えて、電力ビジネス拡大の突破口を開く点に最大のねらいがあるといえます。狙いのひとつは、電力の地産地消とはいえ、今後、再エネ電力は全国的に拡大するとみられます。再エネ電力の地域エネルギー資源は、全国に存在し、それぞれの地域で再エネの地産地消を展開することによって、発電設備、機器、システムの関連需要が大きく見込まれます。従来の発電設備需要は、主として火力発電や原子力発電などでしたが、今後は、それほど大きな需要は見込めません。むしろ、再エネ関連の発電、機器システムなどの成長が期待されています。

それと同時に、小売電力の全面自由化では、一般家庭などが新たな電力需要対象となることを見逃せません。需要は全体で約8兆円ともいわれますが、それに加えて関連需要が見込まれます。一般家庭の電力が自由化されることにより、家庭におけるエネルギーマネジメントシステム(HEMS)が急速に普及すると考えられます。すでに、スマートメーターの導入が各電力会社で進められていますが、スマートメーターとHEMSとの連携によって、電気の見える化、省エネはもちろん、スマートハウスやライフスタイルそのもののスマート化が進展するとみられます。

そうした、HEMSやライフスタイルのスマート化による新たな需要は、専門家によると、約20兆円に達するとされています。東芝の狙いは、そのような、電力ビジネス全体の新規需要をねらったもので、再エネ電力の地産地消の試みはその試金石といえます。

まとめ


東芝は家電メーカーというイメージが強いのですが、実は主力は電力・社会インフラ事業とされる発電、送配電設備、電池、鉄道システムなどのエネルギー関連事業なのです。家電関係の売り上げは全体の16%に過ぎません。同社は、小売電力の全面自由化を、電力ビジネス拡大のチャンスと捉えているようです。

■著者■ 
廣瀬 鉄之介
エネルギー・環境ジャーナリスト
産経新聞社経済記者、編集委員として、経済・産業・エネルギー政策等の記事執筆を担当。退社後、経済産業省所管団体「原子力発電技術機構」及び「社会経済生産性本部」で原子力、その他エネルギー関係の広報、出版物の編集に携わる。原子力発電、電力自由化、再生可能エネルギー等に精通。

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