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相次ぐ地方自治体の新電力参入 その狙いは?

エネルギーの地産地消と雇用創出


制作:廣瀬 鉄之介(エネルギー・環境ジャーナリスト)

相次ぐ地方自治体の新電力参入 その狙いは?

地方自治体の新電力への参入がこのところ相次いでいます。群馬県の中之条町が自治体として初めて新電力を設立したのに続いて、福岡県みやま市、鳥取市も新電力を設立し、事業をスタートさせました。また、浜松市は政令指定都市として初めて新電力を立ち上げました。地方自治体が新電力に参入する狙いは何なのかを探ってみました。

中之条町はメガソーラーで発電


全国の地方自治体に先駆けて新電力(特定規模電気事業者)を設立した中之条町の場合。同町は2013年6月に町議会の決議を受けて「再生可能エネルギーのまち中之条」を宣言しました。その宣言に沿って新電力「一般財団法人 中之条電力」を設立し、同年10月から電力の小売事業を始めています。現在は、町役場や小中学校などの公共施設を対象に電力を供給していますが、今年4月からの小売電力の全面自由化後は、町内の一般家庭にも電力を販売する予定です。販売する電力は、同町にある3ヵ所のメガソーラー(大規模太陽光発電)で発電されます。出力は5MW(メガワット)で、一般家庭約1500世帯分に供給できます。同町はこのほか、農業用水路を利用した小水力発電や、間伐材を活用したバイオマス発電も計画しています。さらに、地熱発電の可能性についても検討する方針です。

みやま市は太陽光発電の余剰電力買い取りも


福岡県みやま市は、2015年3月に新電力「みやまスマートエネルギー」と立ち上げました。市が55%を出資し、残りを地元の筑邦銀行などが出資しています。また、市と共同事業協定を結ぶ電力管理システムのエプコ(本社東京)が、電力小売のシステムやノウハウを提供します。事業計画では、電力の調達は、市が出資する、みやまエネルギー開発機構のメガソーラーから年間5000kWと、市民が設置した太陽光発電の余剰電力を買い取ることで確保します。足りない分は九州電力から購入します。今年度は、市役所や小中学校などの公共施設に電力を供給しますが、自由化後は市内の一般住宅などにも販売します。

鳥取市は鳥取ガスと共同で設立


鳥取市は、鳥取ガスと共同で新電力「とっとり市民電力」を2015年8月に設立しました。
資本金は2000万円で、鳥取ガスが90%、鳥取市が10%。鳥取ガスによる都市ガスで発電するほか、太陽光発電、廃棄物発電、バイオマス発電、小水力発電などからの電力を調達し、地域に販売します。

スマートシティづくりめざす浜松市


浜松市は2015年10月に、株式会社「浜松新電力」を設立し、浜松版スマートシティの実現を目指して、電力ビジネスに参入しました。資本金は6000万円で、浜松市の出資比率は8.3%。50%は、NTTファシリティーズとNECキャピタルソリューションです。残りは鉄道、建設などの地元資本です。浜松新電力は、地域における太陽光発電やバイオマス発電、小水力発電などの再生可能エネルギー電力を購入し、公共施設や、一般市民、事業者などの市内需要家に供給します。

エネルギーの地産地消で過疎化に歯止め


こうした地方自治体の新電力への参入は、太陽光発電や小水力発電、バイオマス発電などを活用すると言う点で、エネルギー資源の「地産地消」を目指す狙いがあるといえます。しかし、それだけではありません。最大の狙いは、地方自治体共通の悩みでもある、過疎化に歯止めをかけたいと言う切実な要請のあることを見逃せません。中之条町の場合、同町は人口約1万8000人の農業の町ですが、近年は年々人口が減少しており、30年後には、現在の半分の9000人を下回ると予測されています。そのため、町の活性化が急務となっているのです。

みやま市の場合も、人口は4万人足らず。同市も、地域での雇用創出によって活性化を図る必要に迫られています。同市は現在、経産省の推進する「大規模HEMS(ホームエネルギーマネジメントシステム)情報基盤整備事業」に参画しています。それも将来の町の活性化を目指した取組です。市内約2000世帯に、日々の電気使用量が分かる端末を設置し、インターネットで市と結ばれています。それを活用して一人暮らしの高齢者の見守りサービスを実施する一方、各家庭にタブレットを配布し、家事代行や商品の宅配、病院の予約、タクシーの手配などをボタンひとつでできるようする予定です。そうしたサービスの実施は、市民の利便性の向上とともに、雇用の創出に大きく貢献すると期待されています。

まとめ


地方自治体の新電力への参入は、直接的には、エネルギー資源の地産地消に目的があるといえます。しかし、それ以上に、関連事業・サービスの創出によって、雇用の場を生み出すことに狙いがあります。人口減少に歯止めをかけるには、再生可能エネルギーの活用やエネルギーサービス事業の展開が大きな効果を生むといえます。

■著者■ 
廣瀬 鉄之介
エネルギー・環境ジャーナリスト
産経新聞社経済記者、編集委員として、経済・産業・エネルギー政策等の記事執筆を担当。退社後、経済産業省所管団体「原子力発電技術機構」及び「社会経済生産性本部」で原子力、その他エネルギー関係の広報、出版物の編集に携わる。原子力発電、電力自由化、再生可能エネルギー等に精通。

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