介護・スーパーマーケット・建築・不動産・飲食業界向けノウハウ・事例・提案資料が多数の情報サイト

985 views

電力自由化 20兆円市場規模を狙う海外企業の経営戦略

自由化先進国アメリカ・ドイツが活かすノウハウとは


制作:廣瀬 鉄之介(エネルギー・環境ジャーナリスト)

小売電力の自由化に外資系企業も参入

小売電力の全面自由化を控え、国内のさまざま業種の企業が、新電力として電力ビジネスに参入していますが、電力ビジネスに参入しているのは、日本企業だけではありません。米国、ドイツ、中国などの海外企業も参入を表明し、日本の電力市場を虎視眈々とねらっています。これら外国企業の狙いは何か、その戦略を追ってみました。

20兆円の電力自由化市場を狙う


小売電力の全面自由化は、これまで規制対象となっていた一般家庭やコンビニ、商店、オフィス、小規模事業所などの低圧需要家の電力市場がすべて開放されることを意味します。これらの市場規模は、約7兆5000億円に上るといわれます。しかし、そればかりではありません。

すでに自由化されている工場やホテルなどの大口需要家向けの電力小売や再生可能エネルギー発電事業なども、全面自由化によって、さらに活発化することが予想されます。加えて、通信、インターネット、ガス事業者などが電力とのセット販売を打ち出したり、電機、住宅、建設会社などが、機器や設備ごとの販売を打ち出すところもあります。省エネ、節電サービスなどの多様な関連事業・サービスが創出されることも予想されます。そうした関連事業・サービスの需要は電力需要と合わせ、全体で約20兆円に上るとの試算もあります。外国企業の電力ビジネスへの参入は、そうした巨大な関連需要に着目した動きと見られます。

2015年8月、米国の電力・ガス供給会社のスパークエナジー社(本社・テキサス州ヒューストン)が、日本の新電力であるイーレックスと業務提携し、日本国内での家庭用電力の供給、販売サービス事業を行うことを明らかにしました。当面、日本の電力市場や今後の見通し、電力ビジネスの採算性などの調査しますが、それと並行して、合弁会社を設立し、具体的な事業を展開します。合弁会社の資本金は約4億9000万円で、スパークエネジー社20%、イーレックス80%の出資比率です。合弁会社はすでに設立しており、今年4月から、一般家庭やコンビニ、商店などの低圧需要家向けの電力を小売販売する予定です。

イーレックスは、1999年に阪和興業、太平洋セメント、日立製作所、東芝、前田建設等の共同出資により設立され、これまでは、主に、工場やホテルなど、大口需要家向けの電力を販売してきました。しかし、低圧需要家向けの小売電力に関して販売ノウハウを持たないため、その分野で実績やノウハウを持つ他社との提携を検討してきました。

スパークエナジー社は1999年創業で、2014年の米国ナスダック市場への上場に伴い社名をスパーク社から現在の社名に改めました。同社は、米国での小売電力分野で多くの販売実績やノウハウを蓄積しており、かねてから日本市場への参入を検討していました。今回、イーレックスとの提携は、そうした両社の電力ビジネスの利害が一致したわけで、合弁会社の社名は「イーレックス・スパーク・マーケティング」とされています。合弁会社は、米国でのスパークエナジー社のノウハウを活用して事業に取組み、家庭向けの小売電力では、既存の電力会社より約1割程度安い価格で販売するとしています。

ゴールドマン・サックスも再エネで日本法人設立


米国企業の参入では、スパークエネジー社のほかに、国際的な金融・投資会社であるゴールドマン・サックス社が日本での事業展開に乗り出しています。同社は海外ですでに多くのエネルギー関連事業に投融資していますが、日本でも2012年に全額出資の子会社「ジャパン・リニューアブル・エナジー」を設立、太陽光発電や風力発電などの再エネ事業を行っています。その中でもとくに規模の大きいのは、茨城県の「水戸ニュータウン・メガソーラーパーク」です。2015年1月から営業運転をはじめており、発電規模は39メガワット(3万9000kW)、一般家庭1万2000世帯分に電気を供給することができます。同社はさらに2018年までに日本で3000億円を投資し、再エネ電力1000メガワット(100万kW)をめざす方針です。

太陽光発電に特化するドイツ・アドラーソーラー


欧州の企業としては、ドイツの太陽光発電メンテナンスサービス会社のアドラーソーラーが2015年5月、太陽光発電専門施工会社の横浜環境デザインと、日本における合弁会社「アドラソーラーワークス」を設立しました。合弁会社は、アドラーソーラーが欧州で長年蓄積した太陽光発電の本格的O&M(オペレーション&メンテナンス)サービスを日本で初めて展開し、日本での太陽光発電市場に特化した専門的サービス事業を展開する戦略です。

上海電力は福島で国内最大級のソーラー事業


中国の企業では、上海電力が2014年に100%出資の日本法人「上海電力日本」を設立、太陽光発電などの再生可能エネルギーによる発電事業を展開します。大阪市や栃木県那須地区などで、事業実施計画を打ち出している他、福島県には国内最大級の大型メガソーラー事業を予定しています。上海電力は、中国電力投資集団などの政府系資本が株主となっており、上海を基盤に発電施設800万kWを所有しています。この規模は日本の北陸電力と同程度です。

まとめ

米国、ドイツの企業は、自由化先進国と言われる欧米での実績や蓄積ノウハウを日本で活かす点に大きな狙いがあります。中国企業の場合は、ソーラー大国・中国での実績が、日本で活かされることになります。いずれにしても、電力自由化市場では、内外の企業が激しい競争を展開することになりそうです。

■著者■ 
廣瀬 鉄之介
エネルギー・環境ジャーナリスト
産経新聞社経済記者、編集委員として、経済・産業・エネルギー政策等の記事執筆を担当。退社後、経済産業省所管団体「原子力発電技術機構」及び「社会経済生産性本部」で原子力、その他エネルギー関係の広報、出版物の編集に携わる。原子力発電、電力自由化、再生可能エネルギー等に精通。

本テーマに関係する関連記事まとめ