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医療・福祉・公衆浴場に東京都がエネルギーマネジメント支援


制作:廣瀬 鉄之介(エネルギー・環境ジャーナリスト)

医療・福祉・公衆浴場に東京都がエネルギーマネジメント支援

エネルギーの効率利用や最適利用など、エネルギーマネジメントの導入の動きが高まっていますが、東京都は、平成28年度の中小事業所向け熱電エネルギーマネジメント支援事業の実施に着手しました。この支援事業は、中小医療施設、福祉施設、公衆浴場を対象とした、ESCO(省エネ診断、設計・施工、運転・維持管理、資金調達までの包括サービス事業、Energy Service Companyの略)契約が対象となり、助成対象者は、ESCO事業者及び設備リース事業者となります。7月下旬にこれらの事業者に対する説明会を行ったうえ、今年度中に申請書類の受け付けを始めます。

エネルギー効率の高いコージェネレーション


熱電エネルギーマネジメント事業は、熱と電気を効率よく、また、需要に合わせた最適な供給量を管理し、エネルギーロスを最小限に抑えるエネルギー管理事業です。熱と電気を同時に供給するシステムとして近年、注目されているのが、コージェネレーションシステム(熱電併給システム)です。このシステムは分散型エネルギー供給システムの一つで、石油や天然ガスなどの燃焼エネルギーで電気を発電すると同時に、発生する熱を有効利用します。そのため、コージェネレーションシステムのエネルギー効率は、80~85%と極めて高いのが特徴です。

通常の発電システム、例えば、石油、石炭、天然ガス火力発電の場合は、エネルギー効率は35~40%とされています。しかも、コージェネレーションシステムは、分散型電源のため、場所を問わず、エネルギー需要の近接地に設置できるという利点があります。また、小型で、搬送に便利なため、災害発生時の緊急電源としても、有効性が評価されています。

コージェネレーションシステムの課題は、熱と電気の両方のエネルギーを必要とする事業所に有効であり、熱あるいは電気だけのエネルギー需要家には、そのメリットを生かせないことです。そのため、コージェネレーションシステムの利点を最大限に生かせる需要家は、両方のエネルギーを同時に使うという点で、ある程度その範囲が限定されます。今回の東京都の中小企業事業所向け熱電エネルギーマネジメント支援事業の対象も、そうした理由から、選択されています。

対象は養護老人ホームや介護施設など


熱電エネルギーマネジメント支援事業の具体的な対象施設としては、病床数20床以上200床未満の医療施設、利用定員数28人以上200人未満の福祉施設、公衆浴場法で規定される施設があげられています。福祉施設としては、養護老人ホームや介護老人福祉施設、小規模保育事業実施施設、療養介護事業所、特定民間施設などがあります。
これらの施設で、熱および電気の両方のエネルギーマネジメントすなわち、省エネやエネルギーの効率利用を目的としたESCO事業の実施が支援事業の対象となります。

米国でビジネスとして展開


ESCO事業はもともと、フランスで生まれた省エネ事業で、実際にビジネスとして展開されたのは、1900年代の米国です。日本では、1970年代の石油危機を契機として、省エネ活動が進められましたが、当時の省エネ活動は、国や地方自治体による要請や企業の自主的活動に基づくもので、ビジネスとして事業展開がなされたのは、2000年代に入ってからです。省エネ活動を企業の自主的活動に任せるのでなく、省エネを利益創出の事業として実施する活動で、国内でもESCO事業者が数多く登場しました。また、ESCOを導入することによって、エネルギーコストの削減に取り組む事業所、工場、オフィス、店舗などの需要分野が広がりました。

ESCO事業は、企業の省エネルギー診断をはじめ、設備の設計・施工から、運転・維持管理、さらには、そのための資金調達など省エネルギー全般に関する包括的なサービス提供が特徴です。単に、サービスの提供だけでなく、省エネルギーによる効果をESCO事業者が保証し、効果がなければESCO事業者が弁済するという「パフォーマンス契約」を実施するところも多いといわれます。そのため、近年では、企業だけでなく、国や地方自治体などの行政官庁、学校、病院などの公共施設などでの導入が進んでいます。

東京都の中小事業所向け熱電エネルギーマネジメント支援事業は、医療、福祉、浴場の各施設におけるESCO事業の導入が要件となります。都内に設置された施設が対象ですが、国や自治体、独立行政法人の所有する施設や、国、自治体の出資比率が50%を超える法人所有施設は対象から除かれます。つまり、あくまでも民間企業主体の施設ということになります。

施設の最大電力需要を5%以上抑制


ESCO事業の導入としては、まず、コージェネレーションシステムの設置が前提となります。コージェネレーションシステムでは、各施設の最大需要電力を5%以上抑制するESCO契約が対象となります。助成対象施設の所有者あるいは施設運営事業者は、この条件をクリアする契約をESCO事業者と結ぶことになります。

コージェネレーションシステムは、天然ガス、液化天然ガスを主原料とし、発電および廃熱利用のエネルギー総合効率は87%以上が求められます。コージェネレーションシステムは、いわば「創エネルギー」ですが、ESCO契約では、このほか、蓄電池付き太陽光発電設備、LED照明器具、省エネ型空調設備などの「省エネルギー」設備も対象となります。

助成対象経費は、熱電エネルギーマネジメントにかかわる設計費(コージェネレーションシステムの据え付けなど)、設備費(ガスエンジン、ガスタービンなどの費用、燃料電池、、空調設備、太陽光発電設備やそれらに付随する費用)、工事費、諸経費などで、上限1億円を限度として対象経費の2分の1が助成されます。助成資金は、東京都環境公社の基金(30億円)から支給されます。この基金は、熱電エネルギーマネジメント支援事業制度の実施期間(平成26年度~平成32年度)に、東京都が公社に出えん金を出資して造成されます。環境公社は、それぞれの事業効果の報告を各事業者から受け、それを東京都に報告しなければなりません。

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スマートエネルギー都市づくりの一環


熱電エネルギーマネジメント支援事業制度は、東京都がめざす「スマートエネルギー都市」づくりの一環として実施されています。「スマートエネルギー都市」は、東京都が平成24年5月に策定した「東京都省エネ・エネルギーマネジメント推進方針~節電の先のスマートエネルギー都市へ~」に基づく都市づくりの姿です。そこでは、従来からの気候変動対策に先導的に取り組むとともに、災害に備え、かつ、都市の魅力と知的生産性の向上を図ることで、低炭素・快適性・防災力の3つを同時に実現する姿が描かれています。

熱電エネルギーマネジメントにおける支援の主要対象であるコージェネレーションシステムは、エネルギー効率が高く、環境性にすぐれると同時に、分散型の災害時電源としても期待されていることから、低炭素、防災力に優れたエネルギー源としての評価が高まっています。東京都が、中小事業所向けに熱電エネルギーマネジメント事業を支援対象としたのも、そうした判断からですが、東京都には、中小、小規模事業所が数多く集積している地域特性も見逃せません。

東京都内には、約63万件の中小規模事業所が立地しており、その数は全国の1割強に達します。それらの事業所では、大規模工場などと違い、事業所当たりのエネルギー消費量は小さいものの、電気と熱の両方を使用するところが圧倒的に多いのです。また、そうした中小事業所では、効果的なエネルギーマネジメントを導入しているところが少なく、都の支援事業によって、導入企業の増大が期待されています。

まとめ


今回の中小事業所向け熱電エネルギーマネジメント支援事業は、ESCO事業によるエネルギー利用施設が対象となっていますが、コージェネレーションシステムは、熱電併給の比率を変えることで、電気を多く消費する施設、熱を多く消費する施設などにも、導入が可能になる見通しです。そのため、今後、中小事業所はもちろん、家庭などにも導入が広がりそうです。

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■著者■ 
廣瀬 鉄之介
エネルギー・環境ジャーナリスト
産経新聞社経済記者、編集委員として、経済・産業・エネルギー政策等の記事執筆を担当。退社後、経済産業省所管団体「原子力発電技術機構」及び「社会経済生産性本部」で原子力、その他エネルギー関係の広報、出版物の編集に携わる。原子力発電、電力自由化、再生可能エネルギー等に精通。

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