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これはマズイ!ユニットケアの盲点


制作:吉田 匡和(介護ライター)

介護保険施行後、高齢者のプライバシーの保護や尊厳などにより、介護施設においては、集団ケアから個別ケアを重視する傾向がみられるようになりました。その一つとして「ユニットケア」が主流となりつつあります。入居者にとって理想的と思えるユニットケアに死角はないのか。その実情をお伝えいたします。

ユニットケアとは


大勢を一か所に集めて、同じケアを同じ時間に行う「集団ケア」について、以前から入居者の尊厳がなされていない、ケアが画一的など批判を受けていました。昨今では、これらを改善するために、「ユニットケア」が推進されています。

ユニットケアでは、個室化が図られるとともに、10人程度をひとつのグループ(ユニット)として少人数を介護します。介護職員を固定することで、入居者との関係性を築き、安心して生活してもらうと共に、介護職員もまた同じ利用者をケアすることで、個々に応じた細かなケアを実践できるという理念が掲げられています。

掲げた理念に向かって邁進しなくてはならないのですが、それには適切なシステムの構築が不可欠です。下記は、筆者が管理職として勤務した当時の実情です。立て直しを引き受けましたが、志半ばで去ることになったため、適切なアドバイスには至りませんが、反面教師にでもしていただければ幸いです。

配置基準の矛盾


従来型もユニット型も、職員の配置基準は入居者3人に対して、看護・介護職員1人と変わりありません(ただし日中は各ユニットに看護・介護職員を1名以上配置)。実際には、休日や交代勤務の関係で、1ユニットに平均1~2人程度の勤務となります。

人が多ければよい仕事ができるわけではありませんが、少なければ少ないなりの仕事しかできないのも事実です。少人数でケアするため、食事や排せつ、入浴などの介護を優先させることにより、環境美化がおろそかになり、ユニットから異臭が立ち込める始末。すぐに清掃のパートを採用しました。

「配置基準を順守してよいケアを求める」というのは無理があります。また、他のユニットとの協力体制を築こうにも、ユニットごとに人員が配置されているため、職員間のコミュニケーションが取りにくい構造であることが課題です。

夜勤体制の課題


夜勤は、たった1人の職員が2ユニット(20人)をケアしなくてはなりません。この基準を作った人は、介護の大変さなど考えてもいなかったのでしょう。毎日静かな夜ばかりとは限らず、不眠・不休で対応しても予測できない事故が発生することがあります。従来型は複数勤務のため、職員同士が協力し合うことができますが、ユニット型は助けのないワンオペ状態です。

外食産業において深夜のワンオペ業務が問題視されましたが、命を預かっている介護現場において、こうした状況が続いていることが、問題視されていないことが問題なのではないでしょうか。

<ポイント>

固定化しすぎて「隣のユニットには関心がない」「状況が分からない」という状態を作らないために、3~半年くらいのスパンでローテーションさせ、お互いのユニットについて問題提起させて、協力体制を構築。管理者は現場の意見をもとに、「どこにパートを導入するか」など、職場環境の改善について、具体策を示す必要があるでしょう。

ユニットケアは職員教育が難しい


よいケアを行うためには教育や協同が必要になります。従来型であれば、ベテランから新人まで同じフロアで業務を行うため、OJT(上司や先輩が、部下や後輩に対し具体的な仕事を与えることで、必要な知識・技術・技能・態度などを習得すること)が容易にできますが、少数制のユニット型ではOJTが難しく、本人の力量に任せることになりかねません。

筆者が勤務していた施設では、原因も当事者も不明なケガが多発していました。特に入居者が随時入れ替わるショートスティにおいての事故が多かったように思えます。原因の一つは「入居者の状態把握がしにくいため、行動予測がつかないこと」、もう一つは「スキルの低い職員の介護」によるものだと推測しています。

職員が一人で勤務している時間帯は、まったくのブラックボックス、ユニット内で何が行われているかわからない密室状態です。楽しさや辛さを共有する仲間もいない、「ひとりぼっち」の状態が続きます。もし転倒させてしまったり、ストレスで虐待行動があったとしても、黙っていれば気づかれることはありません。

ユニットケアには、介護職員の精神状態を追い込む、密室性による虐待を招く要素が含まれているのです。実際にショートスティからは、そうした苦情も多く寄せられ、原因を探ると一人の職員に辿り着きました。その職員の性格的な問題もありますが、最初から適切な指導がなされていなかったことが、原因の一つではないかと分析しています。

<ポイント>

ユニットケアは「性善説」に基づいて行われるものではない。ユニット以外での教育をしっかりと行い、業務が適切に行われているか管理することは、労使・入居者にとって大切なことです。

まとめ


ユニットケアについてネガティブな部分を紹介しました。危機管理を行うためには「大丈夫だろう」ではなく「大丈夫だろうか」と、ネガティブな状況を想定することが大切です。理念は理念として大切ですが、現状と照らし合わせて乖離していないか、確認しながらユニットケアを推進してください。

■著者■ 
吉田 匡和
介護ライター
福祉業界では20年のキャリアを誇り、福祉系専門学校教職員、老人保健施設相談支援員、特別養護老人ホーム・デイサービスセンター生活相談員、特別養護老人ホーム事務長として勤務。退職後はフリーライターとなり、WEBを中心に活動している。社会福祉士、介護支援専門員、福祉住環境コーディネーターの資格を保有。
HP:http://buleorca.jugem.jp/

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