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エヌ・ビー・ラボ社の誤算 年商約33億円企業が倒産した理由を検証!


制作:吉田 匡和(介護ライター)

サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)の運営と、介護・医療事業における各種コンサルティングを手がけていた「株式会社エヌ・ビー・ラボ」が、2017年3月29日に東京地裁より破産手続き開始決定を受けたニュースは、多くの介護事業者を震撼させました。同社が破産に至った経緯を検証しました。

株式会社エヌ・ビー・ラボとは


エヌ・ビー・ラボ社は、2006年11月に神奈川県藤沢市で、介護事業再生会社としてスタートしました。2008年9月には本社を横浜市に移転、研究開発事業(ビジネスモデルの構築)、コンサルティング事業(経営支援・育成)、オペレーティング事業(運営代行)の3つを柱とし、ローコストで経営できる小規模の高齢者住宅オリジナルコンテンツ「エルスリー」を主力とし、関東から沖縄まで約60施設を展開。社員数787人、2015年9月期の年収入高が約33億円を達成するなど、成功を収めていました。

低価格がウリのビジネススタイル


主力商品である「エルスリー」の紹介には、「エヌ・ビー・ラボ社のノウハウを受けることにより、低価格・低投資で運用できる高齢者の為の終の棲家の新しい形です」と謳われています。ここで気になるのが「低価格」というワードです。「入居費用も経営費用も低価格」と書かれ、一見どちらにもWIN-WINに感じますが、低い入居費から利益を出すためには、食事の内容や人件費など、削減される項目はおのずと決まります。もちろんそれがサービスの質の低下や職員の士気の低下になることは、いうまでもありません。

事業所数増加の落とし穴


エルスリーの主要コンテンツは、住宅型有料老人ホームもしくはサービス付き高齢者向け住宅(サ高住)でした。いずれも高齢者の受け皿として注目されていますが、サービス付き高齢者住宅(サ高住)については、新規参入がしやすいため、2011年12月の112戸から、2017年4月には217,775戸まで増加するなど、爆発的に建設されています。

高齢化が進んでいるとはいえ、サ高住の増加はそれを凌駕していますし、介護職員は不足したまま。事業所が増えるほど、この2つを確保するのは難しくなります。急激な事業展開により人材確保が追いつかず職場環境が悪化、採用コストの増大や既存の人材を引き留めるための人件費が増加するなど、人件費が圧迫したことで大幅な赤字となり、債務超過に転落していきました。

不正と信用失墜そして破産


エヌ・ビー・ラボ社のほころびは、介護保険の指定取り消しという大きな事件となって広がります。埼玉県狭山市で経営していた「訪問介護事業所ひまわり埼玉西部」において2015年2月から11月までの10ヵ月間、職員の業務の引き継ぎをサービス提供時間に含めたり、入浴介助サービスを提供した職員数を水増ししたりするなどして介護報酬を不正に請求し受領していたことや、同一建物の利用者に対する介護報酬を減算せず請求した事実が発覚。総額6,969,246円を不正受給したとして2016年8月29日付で、介護保険施設の指定が取り消されました。

これにより、エヌ・ビー・ラボ社のコンテンツの一つである、他事業者へのコンサルティング事業などの信用は著しく低下。資金調達が困難なことや、いくつかの事業所を凍結しても再開のめどが立たないことにより、経営していた114の施設を全て複数他社に引き継ぎ、債権者約1000名に対し、約13億9700万円の負債を残して破産手続きを行う結果となりました。

多角的に事業を進めるためには


帝国データバンクの調査によると、2016年度の介護事業所の倒産件数は108件と調査史上最も多く、2015年度の介護保険指定取り消しも、227件と最多を記録しています。事業者の中には、事業所数を増やすことが経営を安定させるための方策と思われている方もいるようですが、サービスの質の向上と職員の確保を同時に行わなくては、あっという間に事業は立ち行かなくなります。エヌ・ビー・ラボ社の教訓を生かして、経営にあたってください。

■著者■ 
吉田 匡和
介護ライター
福祉業界では20年のキャリアを誇り、福祉系専門学校教職員、老人保健施設相談支援員、特別養護老人ホーム・デイサービスセンター生活相談員、特別養護老人ホーム事務長として勤務。退職後はフリーライターとなり、WEBを中心に活動している。社会福祉士、介護支援専門員、福祉住環境コーディネーターの資格を保有。
HP:http://buleorca.jugem.jp/

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