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地域包括ケアを目指す訪問介護事業者の情報システム戦略


制作:経営会議ドットコム 編集グループ

地域包括ケアを目指す訪問介護事業者の情報システム戦略

日本政策金融公庫総合研究所がおこなった「訪問・通所介護事業者の経営実態調査」(平成28年1月)によると、訪問介護事業のうち赤字企業の割合が47.6%、とりわけ小規模企業は、その比率が半数を超えています。

さらに深刻なのは介護職員や登録ヘルパーの充足度。実に72.1%の訪問介護事業者が「人が足りていない」と回答しています。

これら訪問介護事業の経営実態から課題を抽出し、安定経営で成長を続けるための情報システム戦略の在り方について検討しました。

介護職員や登録ヘルパーの定着化


介護分野の有効求人倍率は、依然として高い水準で推移しています。
にもかかわらず、常勤職員の16.8%が1年以内に離職、21.8%が1年以内に採用されたスタッフであり、これは全産業平均の12.4%、12.6%を大きく上回ります。

採用で苦戦するのは需給バランスもあり避けられない問題です。したがって採用した人が辞めない組織作りが求められます。

介護職員や登録ヘルパーの定着率を上げるには、コミュニケーションが重要です。
定着率の高い多くの介護事業所では、面談やアンケートなど、介護職員や登録ヘルパーの要望や悩み事を聞く機会を具体的に設けていますが、介護の質を高めるためのチーム内の情報共有も定着率向上に寄与します。

情報共有システムによる利用者情報と関係者の想いの共有


働きやすい、定着率の高い職場の実現には、事業所全体のホスピタリティを高めることだと考えます。

ホスピタリティとは、自分中心ではなく相手を想い、相手の喜びを考え行動することであり、スタッフと利用者、あるいはスタッフ同士が良好な関係を築く上で重要なエッセンスです。

ホスピタリティを高める環境作り・土台作りは、『患者の情報を共有する』『スタッフの想いを共有する』ことが基本となし、その実現に『情報共有システム』が貢献します。

情報共有システムは、FacebookなどのSNSのような感覚で、事業所内のヘルパーや管理者に限らず、自治体や医師・看護師、他社介護事業者、さらには患者、その家族まで含めた連絡・連携をリアルタイムで行うことが求められます。

フェイスシートの情報や、介護ヘルパーが日々訪問される中でのバイタル情報や食事記録をアップしたり、掲示板機能やメッセージ機能でご家族や看護師とやり取りしたり、カメラ機能やビデオ機能を使って画像・映像情報を共有したりするイメージです。

患者とその家族に寄り添い、介護の質を高めることは、介護スタッフの定着化、人の問題解決にも貢献します。

経営の合理化、生産性の向上


訪問介護事業の経営拡大、成長を可能とする事の1つに、サテライト化があります。
本体事業所とは別に、職員管理の一元的な運用や本体事業所とサテライト間で相互支援体制が確保されているなどの一定の要件を満たせば、待機や道具の保管、着替え等を行うサテライト事業所を本体事業所に含めて指定することができます。

しかし、事業所が増えるに従い、訪問介護計画の作成や訪問介護職員の勤務調整、本体事業スタッフと訪問ヘルパー間の連絡、勤怠や請求データの集約などに手間やミスが増えます。サテライトにより事業を拡大していくと共に、業務システムによる省力化を進め、生産性を高めることは必須です。

本社(本部)管理による経営支援システム


平成26年介護事業経営実態調査(厚生労働省)によると、サービス提供1回当たりの給与・管理経費は、通常規模型事業所(8,527円)と比べ、小規模型事業所(8,946円)は約5%高いです。特に管理人件費は企業規模が大きくなるほど効率化が進んでいます。

これまで人手を介していた仕事を、省力化、IT化して人件費や採用コストなど管理的経費を削減し、生産性を高めていくことは、サテライトにより経営拡大を目指す介護事業所で必須になってくることと思います。

BIツールによる経営の意思決定支援


新規出店の際、本部で各事業所の経営情報を統制・集中管理できていれば、このエリアに、この規模の事業所を作れば、売上はこれくらい、人件費・採用費や管理経費まで月々のコストはこれくらいと、簡単に損益シミュレーションができますし、経営層がスピーディーに意思決定できます。

介護システムが、保険請求のために業務の計画や実績を管理するのは当たり前のこと。
そこから一歩先に進んで、本社(本部)で集中管理される売上等の情報を統計分析し、今後の経営戦略に活かす経営支援が、情報システムに求められます。

地域連携(地域包括ケアシステム)


厚生労働省は医療・介護・予防・住まい・生活支援が、おおむね30分圏内の住み慣れた地域で包括的に確保される体制(地域包括ケアシステム)の構築を目指し、高齢者個々の抱える課題にあわせて「介護・リハビリテーション」「医療・看護」「保健・予防」が、有機的に連携した専門職により、一体的に提供される姿を描いています。

地域連携(地域包括ケアシステム)に、訪問介護事業者がいかに主体的にかかわるか、そこは大きな課題です。

情報共有システムによる地域連携


地域包括ケアシステムの具現化に向けた取り組みのひとつとして、東京大学高齢社会総合研究機構(IOG)と千葉県柏市は、在宅医療の推進体制の整備のための、多職種連携モデル事業(通称:柏モデル)を進めています。

高齢化が進んだ柏市の団地に於いて、医療や介護、多職種が連携して在宅生活を支えています。
この実験モデルは、ゆくゆく日本全体のスタンダードモデルとして展開されていくでしょう。
この柏市の多職種連携を可能にしているのは、裏側で支える情報共有システムです。
2018年、2020年の医療・介護報酬制度の改定に向け、地域の他法人、多職種と連携できるシステム構築は、介護事業者において必須となってくるでしょう。
地域連携に向けての準備を今から始めることは、訪問介護事業者が生き残る上での大きなアドバンテージとなります。

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