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混合介護の現状と今後の展望


制作:吉田 匡和(介護ライター)

混合介護の現状と今後の展望

11月10日に小池百合子東京都知事が都内の介護施設を視察した際、「混合介護を都内で解禁するよう国に働きかける」と特区として実施したい考えを明らかにしました。それ以前にも公正取引委員会が、「介護分野に関する調査報告書」を発表し、混合介護の利用促進と弾力化を提言。全国老人福祉施設協議会がこれを批判し、自民党議員まで巻き込む大騒動になりました。そこで改めて混合介護とは何か。介護業界はどう変わるのかを詳しく説明していきます。

混合介護とは?


「混合介護」は、介護保険で受けられるサービスと保険外の有料サービスを一緒に使うことです。現行の介護保険制度でも混合介護は認められていますが、厚生労働省は「介護保険内のサービスと保険外のサービスは、それぞれのサービスを明確にして提供すること」と見解を示しており、それが混合介護の浸透しない要因といわれています。

◇混合介護で利便性アップ

訪問介護を例に説明すると、現状の制度でホームヘルパーが介護保険の身体介護を行った後に保険外の家事援助を行う場合、「サービスを明確にする」ために、一旦事業所に戻り、再度訪問して家事援助を行うか、別のヘルパーが家事援助をするかを強いられます。これでは利用者にとっても、事業所にとっても効率が悪く利便性が低いですね。

混合介護が認められれば、身体介護(介護保険)の後に、家事援助(保険外)を行うことが認められるため、スムーズに業務が遂行できるのです。

◇混合介護で収益アップ

介護保険では、国によってサービス内容や報酬額が定められているため、自由に新しいサービスを作り出したり、価格を設定することができません。入所事業では60%、通所事業では70%、訪問事業では80%以上が適正な運営のラインと人件費比率が高いうえに、利用者数によって職員定員も決められるため、ほとんど人員削減も行えません。つまり「市場開放で競争の原理を働かせる」といわれながらも、そうはならない現状があるのです。

介護事業に自由競争の原理を持ち込むためには、他と異なる付加価値を持ったサービスと、それに見合った対価が必要です。混合介護では介護報酬はそのままに、施設独自のサービスを組み合わせることができるのです。しかも料金設定は自由。付加価値が認められたり、利用率の高いサービスが多く利用されれば、その分が増益になります。

事業収入がアップすれば、これまで課題とされていた介護従事者の収入もアップ。また、スキルの高いヘルパーに対して保険外で「指名料」を設定することも可能なため、その分を歩合にすれば、賃上げとモチベーションアップが期待できるというわけです。

≪混合介護の料金モデル 利用者1割負担の例(訪問介護)≫

サービス内容 事業所収益 利用者負担
身体介護(介護報酬) 4,000円 400円
家事援助(独自サービス) 3,000円 3,000円
指名料(独自サービス) 500円 500円
合計 7,500円 3,900円

組み合わせ次第では多彩なサービスができるので、利用者の選択肢も広がります。まさに混合介護は介護業界の切り札といえるでしょう。

混合介護への反対意見


利用者にも事業所にも有益に感じる混合介護ですが、反対意見も寄せられています。まず当事者である特養などで構成する「全国老人福祉施設協議会(全国老祉協)」が、高齢者福祉の公平性と、社会福祉法人の公共性を主張して反対しています。

つまりメリットだけでなく、「低所得な人は、混合介護の料金が払えず、介護サービスに格差が生じる」ことや、「認知症などにより理解力が低下した高齢者に、不必要なサービスを押し付ける事業所が出るのでは」と懸念しているわけです。

しかし、現在のシステムが利用しにくく、事業所の増収につながらないことは確かです。混合介護については、内容や料金を精査する、すべてのサービスに独自サービスを内包するのではなく、オプショナルとするなどの工夫で、不公平感は軽減できるでしょうし、モラルのない業者による法外なサービスや抱え込みについても、最初から何らかの方策を練ることで、抑制できるのではないかと思います。

今後の展望


政府の「規制改革推進会議」で一部のサービスに限定して導入する案が浮上しています。11月30日に開かれた、医療・介護のワーキンググループとのヒアリングでは、混合介護に賛同する声があがっているようです。内閣府は今後、厚生労働省への意見書に盛り込めるか調整する予定です。混合介護については、ネガティブに考えずに、「どうすれば実現できるか」を考える時が来ているといえるでしょうね。

■著者■ 
吉田 匡和
介護ライター
福祉業界では20年のキャリアを誇り、福祉系専門学校教職員、老人保健施設相談支援員、特別養護老人ホーム・デイサービスセンター生活相談員、特別養護老人ホーム事務長として勤務。退職後はフリーライターとなり、WEBを中心に活動している。社会福祉士、介護支援専門員、福祉住環境コーディネーターの資格を保有。

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