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介護ロボットの導入による雇用への影響


制作:吉田 匡和(介護ライター)

介護ロボットの導入による雇用への影響

人材不足、介護者の負担の軽減などから、介護ロボットの現場への導入が必要とされながらも、「価格の問題」「機能の問題」「使いこなせない」「メンタル的な拒否」など、様々な障壁により、スムーズに導入されていないのが現状です。しかし電動ベッドや離床センサーなどが一般化したように、介護ロボットの普及によってそれらの問題は解消していくでしょう。ここでは、本来の目的である「介護ロボット」を導入することで、介護福祉の雇用にどう影響を与えるかに着目していきたいと思います。

介護ロボットの導入意向調査


介護ロボットを導入するにあたり、「介護は人が行うもの」「介護に効率化はそぐわない」などの否定的な意見を聞くことがあります。果たしてそれは多数の意見でしょうか。平成27年に総務省が行ったアンケート調査をもとに検証してみましょう。

◇介護用ロボット(介護する側として)の利用意向

介護用ロボット(介護する側として)の利用意向 年代別利用意向

アンケートによると、「介護ロボットを利用したい14.1%」「利用を検討してもいい49.0%」で、肯定的な回答が68.1%を占めました。年齢構成を見ると、肯定派は日頃から機械に馴染んでいる若い年代ではなく、高齢者が多いことが分かります。

◇介護用ロボット(介護される側として)の利用意向

介護用ロボット(介護される側として)の利用意向 年代別利用意向

出典:
http://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/h27/html/nc241350.html

要介護者側の回答は、「介護ロボットを利用したい15.1%」「利用を検討してもいい48.2%」で、肯定的な回答が63.3%を占めました。介護する側とされる側を比較してもほとんど乖離は見られません。年齢構成においても、年齢が高い方が肯定的な意見が多いことが分かります。

介護ロボットを肯定的にとらえている理由


高齢者が介護ロボットを肯定的にとらえている理由を、有料老人ホーム・高齢者住宅を運営するオリックス・リビング(東京都港区)の調査結果からひも解くことができます。11月11日の「いい介護の日」の発表によると、介護ロボットによる身体介護については、「推奨されていれば受けてもよい」( 69.0%)、「積極的に受けたい」(9.4%)となり、約8 割(78.4%)が介護ロボットについて肯定的な結果になっています。

介護ロボットに肯定的な理由としては、「ロボットは気を使わないから」(52.7%)、「本当は人の手が良いが気を使うから」(26.5%)となり、人から介護を受けることへの心理的負担が伺えます。
出典:http://www.orixliving.jp/company/pdf/pressinfo_151104.pdf

介護ロボットの使用は、介護者の負担ばかりがクローズアップされがちですが、このように人の手を煩わせたくない、デリケートな部分を見られたくないなど、ロボットだからこそ気兼ねなく受けられる介護があり、双方にニーズがあるといえます。

介護福祉の雇用状況


政府は2020年までに介護職員を25万人増員したい考えですが、この数値が達成できると考えている人はいないでしょう。少子高齢化によって生産人口が減少。介護職の供給先である養成校も定員割れが続き、軒並み閉鎖が続いています。

厚生労働省は、2017年4月から勤続年数や年齢、資格に応じて自動的に賃金が上がる定期昇給制度などを導入した事業所を対象に、職員の平均給与が月額1万円相当上昇する介護報酬を加算する方針を決定しました。

介護の仕事が若い人に敬遠される理由を「労働条件が給与に合わないから」と考える人が多いですが、それだけが理由ではありません。若い人たちは、アパレルであれば好きな服に囲まれていたい、美容師であればいつか自分のサロンを持ちたいなど、夢や将来を見据えています。介護には、そうした要素が少ないことも敬遠される要因です。わずか1万円程度増えたところで希望者が増えることは考えにくいことです。

介護ロボットを活用して60歳以上を雇用


そこで提案したいのが、今後増加する60歳以上の雇用です。世の中は、多額の年金で悠々自適なリタイヤ生活をしている人ばかりではありません。身体が元気でも年齢的な問題から就労できず、細々と生活している人もいます。そうした方々に介護の仕事を請け負ってもらうのです。

もちろん若い人に比べて体力的な衰えは否めませんが、それを補うのが介護ロボットです。高齢者の社会進出にもなりますし、ロボットを開発する側も「比較的高齢な人が利用する」という対象が定まり、機能や操作性についても的を絞ることができるはずです。

介護ロボットの普及は、介護者の負担を軽減するだけでなく、高齢者の社会進出という新しい雇用を生み、その技術を海外に輸出することで国益をもたらす基幹産業にも発展する可能性を秘めています。現段階では夢物語のように聞こえるかもしれませんが、かつては夢の道具だった家電が一般家庭に普及しているように、生活の中に介護ロボットがあることが普通に感じる時が来るでしょう。

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■著者■ 
吉田 匡和
介護ライター
福祉業界では20年のキャリアを誇り、福祉系専門学校教職員、老人保健施設相談支援員、特別養護老人ホーム・デイサービスセンター生活相談員、特別養護老人ホーム事務長として勤務。退職後はフリーライターとなり、WEBを中心に活動している。社会福祉士、介護支援専門員、福祉住環境コーディネーターの資格を保有。

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