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検証!介護業界は成長産業といわれながらなぜ倒産するのか?


制作:吉田 匡和(フリーライター)

検証!介護事業は成長産業といわれながらなぜ倒産するのか

2000年の介護保険法施行以降、異業種からの介護事業へ参入が増加しています。まるでコンビニでも開店するように、フランチャイズを利用して未経験者でも開業できることも後押ししています。様々な業種が介護事業に参入することは、市場の活性化と競争の原理によるサービスの向上を生み、利用者にメリットをもたらすと考えられています。また先細りする日本の産業の中で、介護事業は唯一ともいえる成長産業として位置づけられています。

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しかし老人福祉・介護事業の倒産件数は年々増加。2016年1~9月の集計では、すでに前年度累計を抜き去り、前年同期比35.0%増の累計77件、9月時点で2000年の調査開始の以降、倒産件数最多を記録しました。倒産した企業は、負債5,000万円未満の小・零細規模が全体の68.8%、設立5年以内が46.7%を占め、「開業間もない小規模事業所が潰れやすい」ということが浮き彫りになっています。「介護事業は成長企業」といわれながら、なぜ倒産するのか。その理由を探ってみました。

介護事業所倒産の法則


倒産件数を発表した東京商工リサーチによると、もっとも倒産件数が多かったのは「通所・短期入所介護」と「訪問介護」で、倒産件数はどちらも32件、倒産原因は販売不振が51件、事業上の失敗が10件、設備投資過大が5件でした。また本業不振のため異業種からの参入失敗(6件)や過小資本でのFC加盟(3件)など、事前準備や事業計画が甘い小・零細規模の業者が想定通りに業績を上げられず経営に行き詰ったケースが多いようです。倒産理由は、それぞれが独立したものではなく、下記のように関連していると考えられます。

① 本業の業績が伸び悩んでいる
② 介護事業の成長を見込んでノウハウがないまま参入する
③ 同じような事業所が近隣に開業する
④ 利用者の奪い合いが始まる
⑤ 介護施設の経営のノウハウがなく打開できない
⑥ 初期投資を回収できない、運転資金が底をつく
⑦ 倒産

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事業消滅型の破産が75件、再建型の民事再生法はゼロという結果となっています。介護事業に一か八かの勝負をかけたのか、一攫千金を狙ったものの、稼げないとわかり手を引いたのか。いずれにしてもこれらの結果から、見通しの甘い経営がなされていたことが分かります。

すでに要介護高齢者の奪い合いは始まっている


物を置いておけば必ず売れるという時代ではないように、介護施設を開設したからといって勝手に人が集まるわけではありません。ある新規の施設の話ですが、オープンして半年以上経過しても、デイサービスやショートステイの稼働率が上がらない事業所がありました。

法人本部は別の県にあるため、施設を建設するにあたって地域の状況をしっかりとリサーチしているとは言えませんでしたが、これまでの実績から「よいサービスを行えば集客は見込める」という英断により開業しました。しかしそのエリアにはすでに50件ものデイサービスがあり、近隣を含めて介護事業は飽和状態だったため集客は難航、生活相談員に営業をさせるも、限界を感じて次々と退職してしまいました。

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介護現場もオープン当初はゴタゴタとします。それに嫌気をさした介護職員の退職も続出。施設長は異業種から参入した人だったため、現場に丸投げするばかりで統制が取れず空中分解のような状態に陥りました。これでは「よいサービス」などは見込めるはずがなく、職員の士気の低下と人手不足から、利用いただくごとに評判を落とすという悪循環に陥りました。

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入所系のサービスは安定していると思われがちですが、2015年4月1日より特別養護老人ホームの入所要件が介護度3以上になってから待機者が減り、定員割れになる施設が出てきました。地方では自然死などによる高齢者の減少により利用者確保が難しいなど、一部の地域では要介護高齢者の奪い合いが始まっています。こうした事実をよく理解せずに介護事業に参入しても、立ち行かなくなるのは火を見るよりも明らかでしょう。

本当に成長産業なのか


「ニーズがある」ことと「働き手が確保できる」ことは別問題です。高齢者が増加する以上、高齢者関連サービスのニーズが途絶えることはありませんが、低賃金で重労働な介護の仕事を選ぶ人が増えるとは思えません。また賃金アップを図ろうにも、主たる収入源である介護報酬は削減の一途を辿っています。

厚生労働省の2014年の統計によると、福祉施設の介護員の平均月給は21万9700円となっていますが、地方では月給13万円~16万円程度の求人がたくさんあります。これでは介護の働き手がいないのは当然です。この問題を解決しない限り介護事業の成長は見込めないでしょう。

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まとめ


介護事業を成長させるためには労働力の確保と財源面の充実が不可欠ですが、現段階でそのハードルを越えるのは難しく、今後もある程度淘汰されるまで倒産が続くと思われます。ただし、国が後押ししている介護機器(ロボット)の開発や、介護技術の輸出などは成長の余地があると思います。今後は内需に向けた取り組みだけでなく、グローバルな発展も必要なのではないでしょうか。

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■著者■ 
吉田 匡和
フリーライター
福祉業界では20年のキャリアを誇り、福祉系専門学校教職員、老人保健施設相談支援員、特別養護老人ホーム・デイサービスセンター生活相談員、特別養護老人ホーム事務長として勤務。退職後はフリーライターとなり、WEBを中心に活動している。社会福祉士、介護支援専門員、福祉住環境コーディネーターの資格を保有。

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