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介護業界の未来が失われる! 元教員が伝える介護福祉士養成校の実態


制作:吉田 匡和(フリーライター)

介護業界の未来が失われる! 元教員が伝える介護福祉士養成校の実態

介護に携わっている方なら、2025年問題または2042年問題を耳にしたことがない人はいないでしょう。高齢者人口がピークにもかかわらず働く世代が少ないという未曽有の時代が刻一刻と近づいています。国は子育て支援の対策や介護スタッフの育成に力を入れているものの、思ったような結果が出ていないのが現状です。介護福祉士の育成には専門学校などの養成校が欠かせませんが、ここ数年学生数は激減。介護の学科を廃止する学校も増えています。

介護福祉士養成校の栄枯盛衰


厚生労働省や日本介護福祉士養成施設協会のデータによると、介護福祉士養成校は2008年の434校を頂点に減少傾向にあります。札幌を例にすると、介護系専門学校のピークは1996年(平成8年)頃で、介護福祉学科を有する養成校が市内だけで8校もありました。当時はまだ措置制度の時代。バブル崩壊の影響から回復が遅れていた北海道において介護は「安定企業」として見直され、高い人気を誇りました。

当時筆者は札幌から100㎞以上離れた僻地の介護施設で生活相談員として勤務していましたが、たった2人の介護職員の募集に多くの人が応募するなど、今では考えられない状況でした。養成校の中には100名ほどの募集に多くの入学希望者が押し寄せ、入学試験を行っていたほどです。

2006(平成17)年に、定員割れのため郊外の養成校が介護福祉科を廃止。その後、2008 (平成20) 年頃から中心部の養成校でも定員割れが始まります。各養成校はオープンキャンパスの回数を増やしたり、高校に出向いて出張授業を行うなど広報活動を強化するものの歯止めがかからず、介護福学科を廃止したり介護福祉士実務者研修の通信科に特化するなど縮小が図られ、現在全日制の介護学科を開講しているのは、5校まで減っています。

介護離れとコメディカル人気


短期間に介護福祉士養成校が栄枯盛衰を辿った理由をまとめてみました。

・介護や福祉と言う仕事が不景気のために、安定した職業としてクローズアップ。
・介護保険制度の導入により、新しいビジネスモデルとして人気上昇。
・競争の原理導入により安定神話が崩れ、薄給で重労働のイメージが定着。
・保護者や高校の教員が、子供たちがイメージの悪い介護職に就くことを敬遠。
・労働条件の悪化や人手不足による過酷な労働が報道され、職業的な魅力が薄れる

筆者は2007年から2015年まで、札幌市内の専門学校に勤務していましたが、2009年から学生数が減少していくのを肌で感じていました。100名の募集に対して入学した学生は6割程度。高校を卒業したばかりの新卒者は少なく、ハローワークを通した介護福祉士養成事業の職業訓練生の比率が大半を占めました。定員割れを少なく見せるために募集人数を100名から60名に変更したものの減少は止まらず。頼みの綱だった訓練生すら減少し、2015年からは2クラスあった教室を1クラスにするなど縮小の一途を辿っています。

私立学校は慈善事業ではありません。利益が出ない学科は廃止して、学生が集まりそうな学科を創設します。現在注目されているのは看護師、歯科衛生士、理学療法士、作業療法士などのコメディカル分野です。札幌市ではここ数年の間に、コメディカル系の学科の開設が目立ちますし、専門学校を持つ2つの学校法人が、それぞれ看護大学を設立しました。これまでなら福祉・介護分野を目指した人材は、そちらに流出していると言えるでしょう。

それでも介護福祉士を目指す人たち


このような状況の中で、介護福祉士養成校に入学する人とは、どのような人なのでしょうか。志望理由をまとめてみました。

1. 「人の役に立つ仕事がしたい」と言う理由で志望。
2. 高齢者を自分の祖父母に照らし合わせて「孝行したい」と言う気持ちで志望。
3. コメディカル系の学校に不合格になり、類似した職業として志望。
4. 学生自身が心身に問題を抱えているため、「人にやさしく接する福祉(介護)なら、仕事をするうえで職員も自分に優しく接してくれるだろう」と考えて志望。
5. 介護や福祉の社会的意義を十分に理解し、高い志を持って志望。

入学してから考え方も変わってきますので、「最初の志望動機が素晴らしい人が優秀な学生」と言うわけではありません。介護への取り組みや考え方は、介護施設で長期間行う「介護実習」によって大きく成長を遂げる、または見切りをつけることが多いようです。

介護実習が将来を左右する


2年制の養成校を例にすると、1年、2年に1回ずつ5週間の介護実習を行います。初めて直面する介護現場や人間関係に戸惑い、挫折し、実習の途中または終了後に退学を申し出る学生は少なくありません。学生指導は養成校の業務ですが、実習中は施設での指導が多いため、学生と指導者間のコミュニケーションがとても大切になります。

指導者の中には学生に対して必要以上に厳しかったり、厄介者扱いをする人もいると聞きます。介護施設と養成校がWin-Winな関係になるためには「実習生は貴重な介護の人材」と言う意識で関わり、育てていくことが不可欠と言えるでしょう。

学校側から云えば儲からない介護などやる必要がなく、他の学科に転換すればよいこと。介護福祉士養成校の減少で一番困るのは、介護施設であり入居者なのです。学校がいくら頑張っても就職先に魅力がなくては学生が集まりません。今後の若い人が介護を学ぶかどうかは、介護施設にかかっていると言えるでしょう。

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■著者■ 
吉田 匡和
フリーライター
福祉業界では20年のキャリアを誇り、福祉系専門学校教職員、老人保健施設相談支援員、特別養護老人ホーム・デイサービスセンター生活相談員、特別養護老人ホーム事務長として勤務。退職後はフリーライターとなり、WEBを中心に活動している。社会福祉士、介護支援専門員、福祉住環境コーディネーターの資格を保有。

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